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シャドウダンス3魔弾の射手  作者: 緑青ゆーせー
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カブトは、およそ身長180センチぐらいの、細身の男と相対していた。

髪の毛は、その部分だけ見れば女もうらやむようなサラサラのロン毛だ。日本人形のような黒髪である。


顔は、多分キツネと綽名されたことはあるだろう細長い顔で、そこにお洒落な水中眼鏡、ともとれるような、どれだけ動いても決して顔から外れない眼鏡を付けていた。


カブトは、レディよりは身長は高いが170を少し超えたほどの背丈なので、完全に見下ろされているが、ニヤニヤ笑い、


「それ、ド近眼ってこと?」


と聞いた。


「この眼鏡は、度は入っていないんだ。

人に目を見せないための眼鏡だ」


ふーん、とカブトは空返事はしていたが、既に戦闘に集中している。

何処に爆伝を仕掛けるべきか、男の周囲を冷静に分析していた。


「俺の名は草薙恵けいという。

たいていめぐみと呼ばれるがね」


カブトは目を光らせて、


「僕は自己紹介なんてしないよ。

あんた、なんか変なんじゃない…?」


フフフ、とロン毛の男は笑い、


「ちょっと君は住む世界が違うようだな、俺は貿易関係の仕事をしている。

堅気の世界だから、まずは名刺交換から話がスタートする訳さ」


影繰りは、主に諜報機関や軍が欲しがることが多いが、むろんそれだけが世界の全てではない。

世界で貿易をする商人は、大きい組織ほど影繰りを雇いたがる。

それは紛争地域で大きな戦力になるし、そうでなくとも外国人を相手にする商売は危険が付きまとう。

影繰りはそういう商社に高額で雇われることになる。


「そのビジネスマンさんが、何で大江戸線で僕たちに喧嘩売ってるのさ?」


ロン毛、ゴーグルの男は微笑し、


「ビジネスさ…」


言って、カブトのボディに強烈な下からのパンチを撃ち込んだ。


バン、と男の拳が爆発し、カブトはひらりと後ろに下がる。

カブトの周囲に、小さな炎がクルクルと回っていた。


「炎使いか…」


草薙は感嘆したように言う。


「なかなか、そういう自然操作系は珍しいな」


美鳥や井口のように影を何かの姿にしたり、誠の影の手など影に何らかの能力を姿と共に与えるのは、比較的多い影の姿だ。

それに対して、炎を使うとか、水を直接操作する、などの力は珍しく、大抵は強い。


ククク、とカブトは笑い、


「あんたより強いよ」


と当然のように言った。

ふん、と草薙は鼻で笑い、


「そうだろうな。

だが、今は僕が勝つ」


言うと、素早く踏み込み、カブトに怒涛の連打を打ち出した。


それはボクシングファイトに近いパンチの応酬だったが、不意にローキックか、或いは柔道の足払いのような、鋭い蹴りも入っていた。


全ての攻撃は炎に弾かれたが、しかし草薙は飽きることなく、また疲れることなく、カブトの周りをまわるように息つく間もない連打を打ち続けていく。


こいつ!


カブトは、さすがに呆れていた。


連打と言うのは全身運動なのだ。

1分の連打は、一分のダッシュよりも、ずっとキツい。

足だけでなく、全身を凄い速度で動かし続けているのだから。


だが草薙は、もう3分以上は怒涛の連打を続けており、その顔には疲れも見えない。


カブトは体を周回する炎の数を倍にして、足にも炎を周回させた。


体力強化系なのか?


時に、影を何かの姿にするとか、ではなく、純粋に体力を強化するような影繰りも存在する。

ミオも、変なさやはあるものの、体力強化系の影繰りだ。

パンチ一つの破壊力は、強いは強いが、ミオのように桁違い、という訳ではない。

だが、スタミナは既にモンスター級と認定することも出来た。


カブトは全てを弾き返す炎を持っているから、特にうるさくは感じなかったが、パンチの連打に混ざって放たれるローキックがかなりウザい。


足首を狙うので逃げずらいし、そのままひっかけられて転倒を誘うようにも使うらしい。


しかし…。


カブトは疑問を感じた。


ほぼボクシングファイトなのに、相手を転ばして、どうするのか?

寝技も強い、という事なのだろうか。


まぁ、どうでもいいけど…。


地雷は、既に設置し終わったし、この男を殺すには、既に充分な火力を盛ってある。

後は、要するに起爆点を男が踏めばいい…。


男は、カブトの体を周回する火炎を避けて、10センチの身長差を生かして、カブトの頭上に拳を振り下ろした。


クス、とカブトは笑う。


そう来ることは判っていたのだ。


男は、カブトの表情に何かを察したらしかったが、しかし5分の連打をし続けている肉体を、それが影能力とは言え、急には止められない。


男の拳がカブトの頭頂部に触れた瞬間、男の拳から腕、関節、肩と体内に設置された爆弾が連続して起爆した。


男は、誰も乗っていない大江戸線の座席に吹き飛んで、頭を窓に打ち付けた。


ガシャン!


と窓が粉々に割れ、破片が男の顔を血に染めた。


カブトの爆弾は、体内にでも設置可能なのだ。

こういうことを順平兄さんや誠にしなかったのは、壊したくなかったからだ。

だが、草薙などどうなっても構いはしない。


「良い格好だな」


カブトは薄く笑いながら、草薙の前に立った。


草薙は、血だらけになりながら、カブトを見上げ、


「いやぁ、強いな…」


「死人に言われても嬉しくない」


と言いながら、草薙の頭を爆破しようと手を伸ばすが、


草薙は薄く笑って、ゴーグルを、ズリ下げ、眼を見せた。

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