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シャドウダンス3魔弾の射手  作者: 緑青ゆーせー
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思惑

黒い霧が、レディの目の前に大きく広がった。


四緑木星の毒か…。


黒い霧はレディの全身を包むように、それ自体が生き物であるかのように、触手を広げるように広がっていく。


レディは霧に包まれながらも、安堵していた。

この手の、判りやすい毒であれば問題無いのだ。

レディは、自分の炎をシールドに使う事も出来たからだ。


レディの足元から立ち上った炎が、メラ、と霧を下から焼いていく。

1秒とかからず、炎は黑い霧を浄化した。


キャスケット帽の少年、伸介は新しいカードをめくっていた。


「へぇ、節制のカードか。

これは割と珍しいね。

つまり、この手の攻撃には簡単に対処ができる、って事だね。

君の能力とぶつかっちゃったか…」


伸介は微笑みを浮かべながら、パ、と右手にカードをマジックのように現す。

タロットカードが空中から出現する状況を見るに、これがコイツの影らしい、とレディは気が付いた。

空中に新しいカードが次々に現れ、戦況を少年に教えているらしい。


攻撃もそれで同時に出来ることを思えば、シンプルだが強い影だ。

なにより、戦いにおいて崩れる元にもなる、迷いというものが、この影には無かった。


レディは今度こそ足を踏み込み、少年の胴体にパンチを撃ち込んだ。


「法王の逆位置、ね。

こういう戦いが得意な訳じゃないけど、僕に本来の影攻撃を隠そうとしているんだね」


少年は、かなり鍛えているレディのボディ打ちを、ただ一歩、横に歩くだけで交わした。

言葉で喋っているより多くの事を、少年はカードから受け取っているらしい。


攻撃が来る。


レディも、ラピスの揺れでそれは判った。


急いで方位を割り出す。


ダウンジングでの方位の算出は、ペンダントヘッドをフリック入力に見立てて、レディは行っている。回り方で方位を決めるのだ。


一白水星。


やはりレディの攻撃を火と見定め、水系の攻撃をセレクトしたらしい。


八方では正面。


少年の手に、タロットカードが、ポン、と浮かんだ。


「愚者。

これはなかなか、興味深い攻撃だね。

何が出るのかな?」


こいつ、カードをただ見ているだけなのか?


カードが、レディの方向に、くるり、とめくられる。


絵が見える、と同時に、巨大な拳が空中に現れ、レディの頭上に落下していった。


レディは、分銅を頭上に浮かばせる。


ガッ、と重い音が響いたが、分銅が拳を防いだ。


攻撃に統一性は無いのか?


レディも、こんな影繰りに出会うのは初めてだった。


相手に与えるダメージの質も、大アルカナのカードによって変わるものらしい。

このタロット自体が、どうやら伸介、と呼ばれる少年の影らしかったが、手合わせをしてみても、まるで相手の出方が判らない。


あの拳が、どう水であったのか、レディの見立て違いだったのかすら不明だ。

火で防ごうとすれば、水として反応したのかもしれない…。


これは思う以上にやりづらいな…。


レディは、相手の少年の強さに気が付いた。


全くの出目勝負ではあるが、レディの攻撃は完璧に避けられてしまうのだ。

それでは、いつか抑えきれない攻撃が来る、という話ではないか…。


「その大きな石が、君の影かい?

まだまだ秘密がありそうだね」


と伸介はクククと笑う。


一気に力を開放し、伸介を丸焼けにしてやった方が簡単だったが、それは避けられたときに痛い目に合う。

おそらく、こっちの出方が判ったら、奴の攻撃の精度もグンと上がってくるだろう。

だが、どの道レディは、小出しにだが、徐々に自分の影をキャスケット帽の少年に見せざるを得なくなっていた。


どうも、相手のペースで戦いが進んでいるよな…。


とレディは戦いの流れを傍観した。


占いを警戒するあまり、逆に占い勝負に持ち込まれてしまったようだ。

結果、相手の影が大アルカナそのものだ、という情報を得るまでに、敵にペースを掴まれてしまったのだ。


だが、レディは負けるわけにはいかなかった。

もっともっと、誠に戦いを経験させて、奴の力を完全に引き出させねばならない。

醜い大人にならないためには、レディにはそれは、絶対必要な力だった。


ちょっと踊らせてみるか…。


レディは、分銅を二つ、空中に浮かばせ、少年に向かって落としていった。















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