44二人の追跡者
「え、一瞬で? 何秒経ったんすか!」
川上は初体験の誠の飛行に、何故か狼狽えていた。
レディは小型のドレスウォッチをみて、
「3秒ってところかな?
誠は便利な男なんだぞ」
と、何故か自慢げに語った。
「面白かったよ、誠!
もっと飛ぼうよ!」
カブトはノリノリにせがむが、
「駄目だよ。
影繰りには発見されてしまうから、出来るだけ普通に移動した方が安全なんだ」
誠の優等生的な答えに、レディは、
「まぁ、そう言うこった。
ここは大人しく大江戸線で新宿に向かうぞ」
と券売機に向かった。
幸い、すぐに電車は到着し、四人は車両に乗り込んだ。
「見たか?」
貿易センタービルの屋上に不法侵入し、芝離宮方面を見張っていた、新品の箒のような髪型の少女が、不意に興奮した叫んだ。
「あー、バッチシ。
ちょっと待てよ…」
ブレザー姿の小柄な男子高生は、黒いパソコンを軽快に叩いた。
彼の影能力は、ノートPC、これでパソコンで出来る全ての事は、自在に操る事が出来た。
「ピッピ、判った、赤羽橋、地下鉄大江戸線に奴らは乗り込んだんだ!」
「よーし竜吉、舌噛むなよ!」
ピッピと呼ばれた、新品の箒のように針金のような強い直毛が、肩に突き刺さるようにおよそ60度の角度で重力に抵抗して斜めに伸びた髪の少女が、そばかすの浮いた顔にヤンチャな笑顔を破裂させて、竜吉のブレザーの襟首を掴むと、カモシカのように貿易センタービルの外壁を飛び跳ねながら降りて行った。
プリーツスカートが落下傘のように膨らみ、少女の健康に筋肉質な足が躍動する。
ビルの外壁を斜めに走り降り、びょん、と空中に舞い上がると、信号や交通看板の上を跳ねながら、地面に降りることなく、少女は片手で竜吉を引っ張ったまま、地下鉄駅に飛び跳ねていく。
竜吉は、空中で胡坐をかきながら、パチパチとキーボードを叩き続けていた。
「小田切誠は間違いなくいた。
あと、このチビはレディという、かなり強い影繰りだな。
二人は判らん。
歳は近そうだが、どうするんだピッピ、二人とも何人もの影繰りを葬っている強敵だぞ?」
ケヒヒ…、とピッピは、涎を飛ばしながら笑い、
「いーねー、そう言う強い奴を殴り殺したくて、この仕事をしてんだよ!
しかも賞金が5000万だって。
バイクも買えるしダッチオーブンだって買えるんだぜ。
竜吉、どこにキャンプに行きたい?」
無心に影のパソコンを叩いていた竜吉は、えっ、と顔を赤らめ、
「そ、そうだな…、富士山とかが見たいかな…」
と、おずおずと語った。




