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シャドウダンス3魔弾の射手  作者: 緑青ゆーせー
42/220

40若返り

「体だと…。

あんた、マッドドクターはそれをくれた、って言うのかい?」


アクトレスは掠れた声で聴いた。


人間の体が欲しい、とはかなり猟奇な要求だ。

人道的にとても許されることでもない。

が、人体実験を遊びのように考えていたマッドドクターならば、それぐらいは造作もない、と受け入れたのかもしれなかった。


「そうだが。

俺はずっとマッドドクターの体の中で休んでいたが。

だが、今のあれは駄目だぎゃ。

気持ち悪くて入ってられないが!」


自分の体を与えたというのか!

逆に誠たちは、驚いた。


ホムンクルスの言葉に、レディが喰いついた。


「それは、若返っているからか?」


レディの喉が、ゴクリ、と音を立てて唾を飲む。


「そうだが。

なんでだか知らないが、体の中が煩くてゆっくりできないんだぎゃ!」


やっぱり若返っているのか…。


レディは震えるように、ホムンクルスの言葉を噛みしめるが。


「おい、どうしてお前らが、それを知っているんだ?」


永田が驚いた声を出した。


しまった、とレディは顔に狼狽を現すが、


「吉岡先生が教えてくれたんだよ…」


とだけ言って誤魔化した。


「あの爺が若返っているのかい?」


どうやらアクトレスも知らなかったらしい。


永田はケホンと咳をして。


「あー、この話は、これ以上広めないように。

極秘の話だ。

我々がマッドドクターを外部に移せないのは、本当は若返ってしまっているためだ。

何が起こっているのやら誰にも判らない。

本来なら筑波や国立の研究機関に委ねればいいんだろうが、上でも判断を決めかねている。

なにしろ、影繰りの体の事だからな。

普通の医師に理解できる範囲じゃないので、正直、吉岡先生が日本一の権威、と言っても良い。


だから本来はただの諜報機関のこの施設が、今現在は第一級の研究施設な訳だ。

不幸にも、ありとあらゆる医学設備が、影の研究のためもあり、ここには集まってしまっているんでな。

いまは24時間体制で経過を見守っているところだ」


「それですが、相手がマッドドクターである以上、そのまま若返り続ける、と考えるのは無理があるのでは?

多分適齢で目を覚まし、暴れる可能性が高いのではないですか!」


心に思っていたことを、誠も語ってしまった。


「大丈夫だ。

なぜなら彼は完璧な密室に封じられているからだ。

牢に等しい堅牢な個室で、バイタルも身辺の世話も介護ロボットが行っている。

彼が目を覚ましたとしても何も出来はしない」


「なにか脳の手術でそうなっているんじゃないのか?」


レディもつい本音を言った。


「いやぁ、詳しい事は吉岡先生に聞いて欲しいが、マッドドクターの脳は一度、死んだ、といって良いほど誠に粉砕されている。

だが、不思議にも今は再生しているんだよ。

俺の個人的な意見では、外科手術に可能な領域ではない、と思うな。

脳と言うのは雲丹じゃ無いんだからな」


言って、永田は煙草を深々と吸い込んだ。


そう言う影能力なのか?

だとしたら、一体誰の影能力なんだ…?


誠は呻くように思った。


「影能力だとするならば、そういう敵がいるって事でしょうか?」


箱の女や空を飛ぶドックファイト男の他に、任意に人を若返らせる影繰りまでいる、という事だろうか?


「それも、ちょっと考えにくいんだよな。

誠が捕まえた男は、マッドドクターを殺そうとしていたらしいしな。

放って置けば胎児まで戻って死ぬ、というならリスクを冒して殺しに来る必要は無い訳だ」


「でも、あの爺さんの若さは、ちょっと秘密があるようだったよな」


レディは食い下がった。


「いや、影繰りって言うのは寿命は長いものなんだよ。

老人なら百は生きるんじゃないか?

ただ、戦いで死んじまう奴が多いから目立たないだけなんだ」


とアクトレスは語った。


「あの蜘蛛女なってのは50の婆だよ」


誠は蜘蛛女を思い出した。

ミオに半殺しになっていたが、飛行船が着水したために一命をとりとめていた。

凄く美しい、という訳ではなかったが、20代に見えた。


がレディも影繰りが若く見られるぐらいは知っていた。

そうではない、レディは成長を止めたいのだ。


「だが影繰りも時間を逆行はしない。

影繰りがいるのか?」


レディは唸り、


「永田さん、俺たちだって、いつまでもここに籠城って訳じゃないんだろ。

奴らを攻めようぜ」


「川越ナンバーなのは判っている。

車庫証明は偽物だったが、そんなに明後日の場所に居るのは逆に怪しまれる。

今、場所を特定して足取りを調べているところだ。

もうちょっと待ってくれ」


じり、と永田は吸いさしのタバコを灰皿で潰した。


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