捕獲
「変わった影繰り?」
レディは、意味が解らず問い返す。
「とても小さい…、30センチぐらいのコビトのような…、多分影です…」
同じように闇は見えても、透視が無いためレディに誠の見ているものは見えない。
だが、声は聞こえる。
「あれが、影の喋る声だって言うのか?」
ボソボソと喋る声は、老人のように掠れているが、声の質は甲高い。
その変な声が、
「おっと、ドライバーはどこに行った。
新しく盗んでこなきゃなんないが?」
誠は、思い出していた。
昨日、確か川上が、車がどうの、という声を聴いていたのだ。
その時は整備班だろうと考えていたが、思えば、その時美鳥たちは既に敵のアジトに向かっていた。
そんなときに整備が動くのは、考えにくい。
時間も遅かったし、多分は退勤していたはずだ。
この影が、いつからここにいるのかは判らないが、昨日以前に侵入し、影の言うデカブツ、つまり電磁波爆弾の解体をしていたらしい…。
誠が話すと、レディは、
「おいおい、って事は影繰りも基地に忍び込んでいるのかよ?」
誠は首を傾げ、
「いや、本体はいないんじゃないのかな?
どうも、本人がいるなら、初めから本人が作業した方がよっぽどい速いような気がしますし…」
この小さな影は、どう考えても器用ではない。
今もよろよろドライバーを探している。
たぶん一晩懸命に働いても、通常の人間の何分の1も仕事ははかどらないのではないか?
だが、だから逆に内調もこの影を発見する事が出来なかった。
その間に、この影は不器用ながらも、少しづつ仕事を積み重ねているようだった。
「で、どうするんだ?」
レディは責めるように言う。
「どうするって、見過ごすわけにもいかないでしょう」
「それじゃあマッドドクターが見られないだろ!
こんなショボイ影、川上でも追いかけさせりゃあ良いじゃないか!」
「しかし、ショボイかどうか、戦ってみないと判りませんよ?
別にマッドドクターは逃げる訳もないでしょう。
今は、アレをまず、潰しましょう!」
誠の言葉に、ム、とレディは口ごもり。
「そうか…」
と、呟くと、無言で分銅を背中から出現させた。
「なら、とっとと戦ろうぜ!」
誠は、影のコビトの下半身を、落とした。
「ななっ!」
コビトは叫んだ。
「よーし、俺様が叩き潰してくれる!」
叫んでレディは巨大な電磁波爆弾の横に走り込んだ。
が…。
「おい、誠、陰は何処だ?
落としちゃったのか?」
誠は走りながら叫んだ。
「上です、その影、落とした瞬間、両手が伸びて、電磁波爆弾の上に飛び乗ったんです!」
ふ、とレディが顔を上げると、巨大な装置の上に、小さな人間型の影、が立ってレディを見下ろしていた。
「ケケッ、お前らのような頓馬な影繰りに、オレはやられないが!」
レディは分銅を打ち出すが、影は爆弾の反対側に飛び降りる。
「誠!
奴は何処に行った?」
レディは爆弾の反対側に回り込もうとするが、爆弾には巨大客船の胴体を3週半するチューブが付いており、反対に回り込むのはかなり大変だった。
「どうやら、爆弾の底に潜り込みましたね」
言って誠は、影の手を透過させて、爆弾の中を探っていく。
「いた!」
ぎゃあ、と奇怪な叫びが上がり、誠が影の手を引き抜くと、
「放すが! 放すが!」
と叫ぶ30センチの醜悪なコビトが、誠の影の手の中にあった。




