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シャドウダンス3魔弾の射手  作者: 緑青ゆーせー
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37発見

誠には、レディの思惑が全く理解できなかった。


「たとえ見たとして、それが何になるんです?

脳をいじった、なんて判りっこないし、仮に痕跡が見つかったとして、それだけの事で誰かの脳で実験する、なんてマッドドクター以外の誰もしないですよ?」


「別にいっぺんに、そこまで判るとは思っていない。

ただ、どのように若返るものなのか、そう言う事を見たいだけなんだ」


レディは、熱に浮かされたように瞳を輝かせた。


「見たい、ったって…」


誠も困惑し、言葉を投げ捨てた。


防犯カメラもあるのだ、上にバレない筈も無かった。

レディの好奇心を満たすためだけに、誠まで怒られることになってしまう…。


「見れば、満足なんですか?」


「見られるのか!」


レディは興奮した。

誠は、地面を見ている。


誠は自分が落ちる先を見る透視能力を持っている。

ただし、その能力は薄い布だけを透けさせて裸が見られるような便利な能力ではなかった。


トレーニングフロアとは対極の、北に位置する地下に医療練が出来ている。

とはいえ地下構造物は一括りのビルのような構造ではなく、地下を刳り抜いて建設された施設なので、一直線に落ちて行ける、という訳ではない。

ただし、ルートを選んで進めば、ある意味洞窟を進むように医療練に進むことは可能だった。


「結構大変ですよ、作業用スペースを左に30メートル進んでから、二階落ちて、北に50メートル進んで、そこでマッドドクターがどこにいるのか、改めて探さないと、ここからでは場所の特定も出来ません」


「80メートル歩けばいいのか!」


そう言えば簡単そうなのだが…。


誠は溜息をついて、そうです、と頷いた。


「よし、今すぐ行こう!」


レディが盛り上がるので、仕方なく誠は一階下の作業用スペースに落ちた。


普通の感覚で言えば天井裏か床下、と呼ばれる場所だ。

地下スペースでは地下水が出たり、電気工事なども地上の建築物のように手軽には出来ないために、こうしたスペースが広く作られている。


それは12月の事件で井口が壁作りと戦った、まさにその場所だった。

構造壁が左右に走り、電線やケーブルが四方に伸びて、配管パイプも縦横に伸ばされている。


その埃っぽい通路を誠とレディは足早に進んでいく。


なにしろ9時からは、アクトレス教官のレッスンが始まる。

遅刻などしようものなら、どれほど恐ろしい仕打ちがあるものか想像も出来ないので、誠は無遅刻無欠勤で今までやり過ごしている。

今日も例外にするつもりは無かった。


30メートル進むためには2つの壁を突き抜けて、5メートルほどの岩盤を突き抜けなければならなかった。


その先を2階落ちて、また作業通路を50メートル進んでいく。


壁をすり抜け、横に曲がって進んでいく。


地上の構造次第で、地下構造物も建設を制約される。

例えば大型ビルの地下には、岩盤まで届く支柱が撃たれているため、それを破壊して横に広げることは建築法上出来ない。

だから地下施設とはいえ、碁盤の目のように施設は作れないのだ。


道が曲がれば、地下施設も曲がらざるを得ない。

道の地下には、下水や埋設した様々な用途の管が、ある意味地下の道のように続いているから、それを無視して施設は作れない。


そろそろ50メートルを進み、誠は地下を見た。


もう、誠たちは医療棟の中にいる、とは言えた。

そこには大病院並みの医療機械が幾つも作られ、入院している人間も少ないがいる。

病院には持っていけない病人が、内調にはいるのだ。

影の戦いで傷を負った人もそうだし、医師に見せると即通報されてしまう怪我人も多い。


そういった入院練の奥に、しっかりした鍵がかかる練があり、その先がおそらくマッドドクターの居場所だった。


「見えました。

2階下の、あと20メートル先ですね」


レディは興奮して、


「どうだ、若いか?」


誠の透視にはズームアップする能力が最近、付加された。

体内の事を吉岡先生に教わるうちに、おそらく誠のフェロモンが、無理やり影の感知能力を飛躍的に向上させてしまったのだ。

異性の美人ドクターでなければ、そうはならなかったかもしれない。


誠はズームアップする。


「あ、確かに…。

髪は黑いし、皺なんてほとんどないですね。

不思議だなぁ」


「俺も見たいんだ!」


だが作業通路は、全ての場所に通じている訳ではない。


「一旦2階上に登って、倉庫を、病棟の真上まで動いた方がよさそうですね」


誠たちは2階登り、薄暗い倉庫に入った。


作業通路はおおむね蛍光灯は付いている。

暗いと、喜んで入り込む小動物などもいるので、明るさを維持しているのだ。

が、倉庫は人の気配も、明かりも無かった。


だが、影繰りに闇はない。

そこは灰色の、あまり色の無い空間と認識される場合が多い。

闇での色彩の感知能力は人それぞれのようだ。

誠は、けっこう色で地下鉄の路線を見分けたりするので、人より色彩感知能力は高かった。


ごと…。


無人のはずの、広い倉庫に、何か音がした。


「…パーテーションキットはどこだ…」


ずり…。


何がコンクリの床を摺る音がする。


カーブが、なんだって、こうおおいのかな…、このデカブツめ…」


小さなLED光が、闇に踊っている。


「…なんだ、これは…」


レディが囁いた。


「これは…」


誠は唸って言った。


「…どうも、だいぶ変わった影繰りを見つけてしまったようです…」



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