類似
誠の影の手の射程は、今や2キロなので、充分男たちを攻撃することも出来る。
が、影の手は、力は凄いのだが、パンチを撃っても大したことは無いのだ。
瞬発力と言うものが、影の手には欠けていた。
なので攻撃法は、誠が影の手を使って奴らに一瞬で接近するか、それとも一方の敵を近くに引き寄せるか、ぐらいだ。
一気にカブトの地雷埋設地帯に1人の敵を引きずり込めば、その人間はしばらく戦闘不能だし、おそらく回復不可能のダメージを受けるだろう。
誠がカブトに話すと、
「そっか。
今は、奴らが歩いてきたときのために地面に平行に地雷を埋めちゃったから、三分時間をくれ、そうだな…」
カブトは周囲を見回し、
「あの池の真ん中に島があるな、あの辺に地雷原を作るから、そこにデカイ方を引っ張って来てくれ。
それなら、死の地雷地帯を作り上げられる」
言うなり、カブトは凄い精神集中状態に自分を追い込んだ。
これは、予想以上に出来るパートナーらしかった。
「川上君は、どんな呟きも見逃さないでね。
何か、自分の影について打ち合わせ的に会話をするかもしれないから」
「判ったッス!」
川上の犬耳が、より、ピンと立った。
誠側は、ほぼ作戦は決まった。
敵の一人を地雷原に引きずり込み、後は3対1で、有利に戦かうのだ。
ただし…。
相手も影繰りであることを忘れてはいけない。
影繰りに対して、絶対的な必勝パターンはない。
影には無限のバリエーションがあるので、地雷原にしろ、空中に浮ける相手には効果は薄い。
それ以外にも、誠のような透過使いには、地雷が意味をなさない事もある。
火に耐性のある敵、と言うのもありがちだった。
そもそもカブトとレディが盛大な兄弟喧嘩が出来るのも、互いに火の耐性があるためだ。
この2人は、少々の火傷などは数分で治ってしまうのだ。
水の耐性、とか毒の耐性、電気の耐性、などは良く知られていたが、中には死の耐性を持っているのではないか、と言われる影繰りもいるらしい。
不死である。
不死と言われる影繰りは三人いて、それぞれsクラスの影繰りだった。
相手を殺した、と実感した時ほど、人は無防備を晒すものだ。
そこに必殺の一撃を放てれば、なるほど強い。
それ以外にも、不死の相手に迂闊にトラップなどを構成した場合、逆襲され不死の影繰り一人で千人を皆殺し、等と言う漫画的な伝説も、実際に聞こえてきていた。
誠たちに向かってくる2人は、相変わらず、影能力を発動しなかった。
「もしかしら、影繰りじゃないんじゃあ…」
川上は言うが、言下にカブトは、
「いや、絶対に影繰りだ。
しかもかなりの実力者だ。
2人で内調を落とそうとは、マッドドクターでも考えなかったからな」
確かに…。
あの時はカブト、レディの兄弟に、ナイト、ドールマスター、それに地形を作り替えてしまうという井口、高屋が戦った相手がいた上に、蒼井聡もいた。
後から聞くとゾッとするメンバーだが、誠たちが敵を分断させたので、最悪の戦いは免れる事ができた。
しかし、もしマットドクターの組織の一員だとしたら、ここに2人で乗り込む理由は何だろう?
無論、本部の防犯カメラ映像を傍受していて、青山救出部隊が既に出ていたことを確認していたとして、本部には最低でも永田と吉岡先生はいる。
それほど簡単に落ちると考えるのも不自然だった。
別動隊がいるのか、あるいは、思惑が別にあるのか?
マットドクターの体?
あるいは、ムーンライト号に設置されていた爆弾か?
誠が考えを巡らせている、そのとき…。
小柄な男が、不意に消えた!
「消えた?」
驚く誠に、川上は、
「違うっす!
奴は、自分で地面の中に、潜ったすよ!」
僕に似た能力か!
誠の皮膚に、嫌な痺れが走った。




