戦闘
「何か喋っているね…、何て言っているか判る?」
誠は、驚きながらも聞いた。
待ってください…、と呟き、川上は犬耳を動かしていたが…。
「トランシーバーの声が、防犯カメラに三人の子供を感知した、と言っていて、左側の男が、まぁ、影繰り見習いだろう、生け捕ってやろうぜ、と話しているッス」
確かに、灌木に蹲っていた男たちは、立ち上がっていた。
「内調の防犯カメラを傍受しているのか?
だとしたら、内情がバレバレなんじゃないか?」
誠は言うが、カブトが、
「マッドドクターもしていたよ。
たぶん、同じ組織の連中なんじゃないかな?」
そうなのか…。
「それじゃあ、本部が空になったのを見計らって、あの2人が侵攻してきたのか!」
誠は指令室に電話をかけた。
永田が言う。
「仕方ない。
しばらく、足止めだけでもしといてくれるか。
もし逮捕できれば、それが一番いい。
奴らの組織の事が知りたい」
問答無用で戦いになってしまった…。
誠は茫然としたが、しかし戦いならば、方法を知らない訳でもなかった。
2人の男の、1人は日本人とさして体格の変わらない男だ。
おそらく身長は175センチぐらいなのではないか、と誠は見定めた。
この左の男、に対して、右の男は頭二つ分、長身であり、かつ異様なほど広い肩幅をしていた。
肩幅と両腕の筋肉が凄すぎて、下半身は貧弱に見えるほどだ。
それでも、左の男の腰や足回りと比べれば、遥かに鍛え上げられているのが見て取れる。
二人の男たちは、どうやら影繰りだ。
今や、誠たちを直視し、ゆっくりとこちらに向かって歩いてくる。
「へへへ、早速のバトルだよ川上。
おしっこちびるなよ!」
カブトは、アドレナリンが出ているのか、口調が12月の頃に戻っているようだった。
カブトは、レディと同じ火炎使いだが、その性質は双極とも言えた。
レディが巨大な火力で力押しするタイプなら、カブトはテクニシャンだ。
得意技は、見えない爆弾。
極小の火を爆弾にして、任意の場所に埋め込む。
うっかり爆弾に触れたり、爆弾の射程内に近づいた場合、突然強力な火炎に襲われることになる。
もう一つの武器が、小さな火炎を自分の周囲に浮き上がらせて、攻防一体の武器とする火炎球だ。
今は、火炎球を立て続けに12個、口から吐き出すと、誠たちの前に一列に並べた。
「カブト、地雷も出せる?」
「問題ない。
もう、三十は射程範囲内に埋め込んだよ」
さすがに戦闘慣れしたカブトは仕事が早かった。
隣にいる誠も気づかないうちにカブトは見えない爆弾の敷設を終えていた。
「あいつら、影繰りっすか?」
川上の声が震える。
初戦闘では、それは恐ろしいだろう。
誠の初戦闘の時、終わって家に帰って見て、自分のパンツが汚れていることに初めて気が付いた。
いつの間にか、失禁し、既に乾いていたらしい。
それがいつだったのか、全く覚えていなかった。
「暗闇で俺たちが見えるのは影繰りだ。
この闇は俺たちとあいつらだけの世界だぞ」
カブトが教える。
「お、俺、戦えるでしょうか?」
「君が戦おうとすると、僕らが戦いずらくなる。
君は、後ろで耳を働かせていて。
それで充分助かっているから」
誠は優しく教えたが、カブトは、
「何か聞こえたら、すぐ知らせろよ!」
敵は横に並び、誠たちに向かって歩いてくる。
当たり前だが、まだ影能力は発動させていない。
影繰り同士の戦闘は、初見が一番やりづらい。
相手の能力が判らないと、対応が出来ないのだ。
その相手が、見えない爆弾とか、透過など、目に見えない攻撃だったらなおさらだった。




