23発見
「耳か…」
このまま格ゲー大会にされても、颯太は良いが誠は楽しくもなんともない。
「じゃあ、ここで何の音がするか、調べてみようよ」
と無難そうな提案をしてみると、2人とも軽く乗ってきた。
川上はムムッと力み、影を纏うと、ピョン、と犬耳が頭に立った。
それだけでカブトはギャハハと床を叩いて笑うが。
「それで、どんな音がする?」
川上の耳が、ピクリと動いた。
「下の方からゴオォォと音がしますね」
「それはスーパーコンピューターの音だろ」
カブトは、後ろ斜めになって手で体重を支え、足をブラブラさせて、言った。
「もっと、何か変わった音はしないの?
助けてくれ~、とか、喋らないなら爪を剥ぐ、とかさ!」
なんで内調に拷問部屋があるんだよ、と誠は思ったが、
「そう。
人の会話とかを盗み聞ければ、内調の秘密が判るかもしれない」
「そうそう。
そういうのだ!」
川上は集中する。
「パチパチ、キーボードをたたく音がするッス。
たぶん指令室ですね。
あ、奪還部隊の誘導をしていますよ。
そこの角を右です…、とか話してます」
司令部は何階も下だったが、川上の耳は、その室内から美鳥たち襲撃班の車を誘導するナビゲーターの声まで拾えるらしい。
「そうそう、その調子。
ナビはいいから、他の音は拾えないかな?」
軽く励ましながら、誠は川上に集中させる。
もう、妄想はあきらめて、仕方がないのでカブトと川上のお守りをすることにした。
彼らがご機嫌ならば、それでいい。
あと、ゲームに巻き込まれるのはうんざりだ…。
「カチカチ、金属音がするッスね。
ここのカー…部品が何とか、とかそんなことを言ってるッス」
「カー? たぶん車の整備だろ、そこはいいよ」
カブトが流した。
「英語が聞こえるッス。
何か話してる感じだ。
直ぐ近くの、外です」
「きっと敵だ!」
カブトは突然、跳ね上がって喜んだ!
「えー、東京モノレールも走っているから観光客じゃないの?」
誠はカブトを抑えようと、言った。
浜松町から羽田へ向かうモノレールが通っているので、外国人がいても、それ自体は珍しくもなんともない。
「海岸側っスよ」
海岸と言うか竹芝桟橋だが、景観的に海を眺められる公園のように整備されているから、まぁ観光客が足を延ばしても不思議ではなかった。
「行ってみようよ誠。
観光客なら、それで良いじゃない!」
カブトはノッてきていた。
しまったな、と誠は悔いた。
ゲームをさせておくのが一番だった。
「え、本部から出られませんよ?」
川上は言うが、カブトはシシシと変な声で笑い、
「誠は、どんな施設もフリーパスで通り抜けられるんだ。
凄いんだぞ!」
困ったことになった…。
誠は悩んだ。
だが…。
まぁ芝離宮をうろうろする程度で、外の風に当たればカブトも納得するのではないか、と考えた。
「ま、退屈しのぎに外に出てみる?」
その程度なら、造作も無かった。
誠は影の手で、カブトと川上をそれぞれ掴み、する、っと頭上に透過していく。真上に向けて影の手を伸ばし、射程の50メートル付近で、手を爆発させる。
爆発、というかそこから無数の影の手が出るだけだ。
レディが前に話していた、射程限界でも、そこで爆発させれば火は十メートルは先まで届く、という話を誠が応用したものだ。
影の手が爆発するように増殖して、そこからまた50メートル伸びられる、という裏技的影のバグが起こる。
それを繰り返すことにより、誠は今や最大1キロ近い影の射程を得ていた。
内調本部の上は芝離宮の庭園だ。
そこの木の根に影の手を捕まらせ、一瞬で誠たち3人は夜の芝離宮に出る。
燈火も消えているため、そこは闇の森のような場所だったが、影繰りには闇を見通す能力がある。
どういう理屈か詳しくは判らないようだが、影繰りは能力を使うとき、存在が影そのものになるので、闇の中も当たり前に見える、という説明がされていた。
影を纏った3人にとっては、それは昼の庭園と何ら変わらなかった。
「どこだ、その外人の声って?」
カブトが声を潜ませる。
すっかり極秘任務中、の役になりきっているようだ。
「向こうっス」
川上が指さした先に、芝離宮の池があり、その先の灌木の影に、2人の男が蹲り、無線的な物でどこかと通信をしている様子だった。
あれ?
まさか本物か?
逆に誠は、驚いていた。




