判明
「好きなんですよ、あの映画。
ガラス一枚隔てた先にはゾンビが死肉を喰らっている、地獄の光景が広がっている。
手前には、清潔で高級品に溢れた一流デパートに恋を語らう男女がいる。
間にあるのは、たった一枚のガラス。
最初から割れることは予見されている。
だから、どんな会話をしていてもハラハラする」
誠は熱く語り出すが、井口は呆れて、
「外のゾンビたちが狙っているのはお前の首だけどな…」
誠は、ん、と考えて、
「それでは、青山さんを誘拐した人たちが狙っているのは何なんでしょう?」
「お前の引き渡しだったりしてな」
レディが笑うが、周りは深刻な顔つきになった。
「永田さん、AI顔認証で例の女が昨日の品川駅にいたことが確認されました」
品川駅の膨大な監視カメラ映像と赤い服の女をAIに精査させた結果、駅爆破の直前にホームにいるのが確認され、また事件直後に駅から黒い車で去っていく様子も確認された。
「つまり彼女の箱は、出し入れ可能、って立証された訳だ」
アクトレスが唸った。
「ここんとこ何年か、侵入経路の判明しない軍事テロが何件か発生してる。
イスラマバード国際空港の爆破テロや、中国は認めていないが上海の軍事施設壊滅など、まるで魔法でも使ったかのような大規模な破壊工作だ。
この女、あんたの首一つを狙うような小物じゃないよ」
「中東のパーティ…」
カブトの言葉に、ぞ、とアクトレスはおぞけた。
「車のナンバーが判明しました」
オペレーターがメイン画面に拡大したナンバープレートを映し出した。
「ナンバーは確認できるが、地名は無理か…」
永田が頭を掻いた。
拡大し過ぎた画面はドット目が粗くなり、漢字を認識できなかった。
「しかし車種とナンバーだけでもある程度は追えるはずだ。
警察に協力を要請しろ!」
アクトレスが叫ぶ。
あの、と誠が発言した。
「電気的に水を装った信号を発生させる、と言いましたよね?」
「それがどうした?」
アクトレスの質問に、
「本物の水は動かないと思うんです。
つまり、一定時間、どこに水の信号があるのかを定点観測をして、移動している水があったら、それこそが青山さんなのではないでしょうか」
「すぐやってみるぜ!」
レディは、指令室に出した23区の地図にペンダントを垂らした。
「誘拐時刻が16:34分だからね。
果たして、まだ動いているのか?」
結果的に四時間近くたってしまっていた。
だがオペレーターたちは必死の捜索を続けている。
東京近郊のオービスの観測状況や防犯カメラ映像、これらはAIシステムが機能するようになって、飛躍的に短期間で精密な情報を収集できるようになっていた。
「黒い車ってタクシーが多いよね」
カブトの言葉に、オペレーターの一人、浅香が、
「そうね。
でもタクシーは実は車種が決まっているから、AIで排除できるわ。
犯人の車はダッチチャージャーだから、追跡はしやすいわ…」
浅香は三面のモニターに無数の防犯カメラ映像を浮かべていたが、画面は少しづつ大きくなる。
絞り込まれているのだ。
「よし5分経ったから、もう一度ダウンジングをやってみるぞ!」
レディは二度目のダウンジングに取り掛かった。
「たけどアメ車なんて、犯人はどういうつもりかしら。
日本じゃめったに走ってないでしょう?」
美鳥に井口が、
「ポルシェより珍しいかもな」
同意する。
「三田だ!
川沿いのビルで反応が確かに動いている!」
レディの言葉に僅かに遅れて、浅香も、
「犯人の車は三田のマンションに入りました」
永田は唸る。
「三田か。
大使館が多くて、やりずらい場所だな」
言うが、美鳥と井口は、
「まぁ、ここからはこっちの仕事だ。
調べて来るよ」
と出て行った。




