16忘却
マットドクターは、誠のそういう性格をあまり掌握していなかった、とも言える。
誠にとっては、ほぼ同程度に狂人だったとしても、まだアクトレスの方が理解しやすかっだのだ。
誠に言わせればチャチで平明なゲーム特有の音楽が流れ始め、鉄道双六は始まった。
小田切誠に音楽の趣味は無いのだが、母親はなかなかのピアノ弾きで誠も好きな音楽家と聞かれたら辻井伸行と答えることにしている。
大抵、その名を知る小中生は無かったので、話が途切れ、誠は妄想する自由を得られることになった。
ゲームが始まると誠の心の中で松崎颯太が我慢できなくなったらしく、口を挟み始めた。
「誠、仙台を目指すんだ」
皆、東海方面に進む中、誠は一人北に進んだ。
「でも、目標は長野なんじゃないのか?」
どうしようと興味が無いので颯太の言いなりに動かしていたが、疑問は口にした。
「バーカ新幹線が繋がってるんだよ」
ふーん…。
地下鉄のトンネルに興味はあるが、電車に全く興味のない誠は、それで納得した。
「でも、別ルートに進む意味があるの?」
「競ってない分、嫌がらせを受けにくいんだよ」
だがレディは、
「おー、誠は新幹線狙いか!」
と見抜いてきた。
「いつも早めにずんだ餅を抑えることにしているんだ、って言え」
颯太の言う通りに、誠は笑って、
「いつも、早めにずんだ餅を抑えることにしているんだ」
おー、なるほどぅ、とカブトは納得した。
結局、意地悪カードを受けたのは川上で、誠は仙台に近づいたが…。
「あれ、そう言えばシーブリーズを誰かに買いに行かせる、とか言ってたけど、ずいぶん遅いようだけど?」
誠は気が付いた。
「ん、確か青山が言われていたと思うぞ」
レディが言った。
「ん、駅前のマツキヨでしょ?
5分もあれば戻ってこれるよね?
誠、なんか、めったに探せないような物、頼んだの?」
キャッキャとカブトは喜んでいる。
「なに、めったに探せないものって?
シーブリーズとギャツビーだよ。
すぐ判るはずだ」
「忘れてるだけだろ?」
レディは言うが、誠は、
「頼んだことを指令室が忘れてるんじゃないか、って心配しているんだ…。
もしかして、青山さん、誘拐されているんじゃあ…」
え…、とレディ兄弟と川上が視線を合わせた。
誠は、部屋の電話でアクトレスに連絡を取った。




