趣味
なんなんだ!
誠は、人に理解されない趣味は持っているが、根は至って真面目に出来ている。
特に、今のように、断っているのに親切面で、きっと寂しいに違いない、などと決めつけられて押し掛けられるのは我慢ならない。
なぜなら、過去に両親を始め多くの人間が、そうやって誠の大切な個人の時間を奪って来たからだ。
ゆっくり一人で渋谷地下街のロードマップを頭に描き、更に自分だったらこの路線も引っ張ってくる、などと考えるのに。
それだけで充分に誠は幸せだというのに、周りの奴らと来たら何も理解しようともない。
例えば渋谷と代々木上原と都庁前と方南町が繋がったらどうだろうか。
そこから高円寺、野方と幹七に繋がれば利便精は大きく向上するのではないか。
自宅の最寄り駅高円寺から地下鉄が出る、と考えるだけで誠のテンションは上がっていく。
高円寺はコンパクトな駅なので、二つ先の東中野に大江戸線が乗り入れているみたいに、ほぼ地下駅という事になることだろう。
おそらくJR駅の真向かいに幻の新地下鉄改札があったら乗り替えもスムーズだし楽しそうだ。
地下駅は東京の新しい地下鉄の宿命で、深く地下に潜っていく。
それは誠のような趣味の者には堪らない、一直線の長い長いエスカレーターで幹七沿いまで降りていくのだろう。
そして方南町経由で渋谷に繋がるのだ。
都庁と渋谷という二大ビジネス街を縦断することで出勤通学の導線が全て変わるし、方南町付近はずいぶん栄えることだろう。
タワーマンションぐらいは建っのではないか?
渋谷も、全く性格の違う都市になるはずだ。
オフィスの数が一桁二桁増えて、ただの若者の街では無くなる。
すると、あの地下道はどう変わるのだろうか。
大江戸線等は渋谷を避けるように走っているが、渋谷と六本木は一つ電車で繋がっていれば利便性はずっと高まるのではないか。
渋谷、六本木、麻布等は短い路線でも走っていれば、町のありようも相当に違ってくるはずだ。
大工事をしがちな地下鉄たが、直で繋がると大きな意味を持つような町はかなりある。
渋谷六本木から、例えば三駅のミニ地下鉄でも充分採算も見込める見込めるのではないだろうか。
三駅を繋ぐなら工事も僅かで済み、そういうショートカットを有用に運用できれば大規模な工事をしなくとも東京の地下鉄自体がずいぶん変われるはずだ。
秋葉原も街の規模に比べて電車の乗り入れが少ない。
神田、秋葉原は距離も近いので、誠の思うショートカットする短い地下鉄、には格好の地理条件だ。
上手く神田と秋葉原が繋がれば、あの一帯は渋谷や新宿に近いメガシティになると思うのだ。
神田が新宿西口のようなビジネス街になり、一方の秋葉原は近代的な歓楽街になれる要素を持っている。
すると、亀戸、両国といったレトロな近隣都市だって様変わりするはずだ…。
と誠の夢想は無限に続いたが、レディ兄弟は配線を終えて、
「これやろうぜ!」
と誠もかろうじて知っている鉄道双六ソフトを投入した。
正月に帰省すると、誠も必ず親類とこれをした。
だが誠のクソ真面目な性格は嫌がらせ技にムッとしてしまう。
無論、表面上は止めてよー、などと笑っているのだが、それで楽しんでいると思われたらとんでもない。
誠はしっかり怒っているのだ。
うんざりしながらも誠はコントローラーを持ち、至って楽しげに鉄道双六に興じた。




