ゲーム
誠は至って少ない荷物でも暮らせる人間だった。
本当は地下道関係の本を読みたいと思って、インターネットで取り寄せていたのだが、それは諦めた。
誠の趣味は、あまり理解されないのだ。
親にしてからが、誠は鉄道好きだと思っている。
電車ではなく、地下道が好きなのだ、と言っても理解されない。
ここは内調での誠の立ち位置の問題もあるので、用意されたビジネスホテルのシングルルーム並みの部屋で我慢することにした。
とはいえ、整髪料やシーブリーズなど、日常使うものもある。
アクトレスに言うと、誰かを買いに行かせるという。
仕方なくメモを書いて、預け自室に戻った。
しばらく、覚えたてのカバリヤットの技、鵜撃の練習をした。
鵜撃は、屈んだ姿勢から足を横に上げていく技である。
普通の蹴りでは、160センチの誠が180センチの対戦者の頭に蹴りを撃ち込むのは不可能だ。
足が届かない。
だが、体の柔軟さを重視するカバリヤットでは体重をかけた足の上に、真っ直ぐ腰骨を乗せる。
瘦せた誠の腰骨でも、およそ縦の直径は30センチはある。
この腰骨を直立させ、その上に足を乗せれば、160センチの物でも190センチの高さに1蹴りを撃ち出せることになる。
横から畳んだ足をしならせながら、腰の回転を込めて打ち出される垂直方向の蹴りは、思うよりずっと破壊力がある。
腰の動きは、ブラジリアンキックとか、或いは往年のカンフースター、ブルースリーの特徴的な前蹴りに近い。
日本の空手では足だけを伸ばす前蹴りが一般的だが、ブルースリーは、真正面に腰の回転から爪先をしならせて鋭いパンチのような蹴りを撃ち込んでいた。
映画とはいえ、面白いように敵は吹き飛んでいたが、何もフィクションではない。
誠の蹴りと同じように、腰の長さ分射程の長くなる蹴りは、相手が思うよりも30センチも長く伸びてくるのだ。
これは不意打ちを打たれるし、腰の回転で撃ち出しているため、破壊力も相当にある。
また、誠が覚えたのは側頭部に撃ち込む横のキックだが、足の使い方が上手くなれば、顎を狙って撃ち出したり、踵で撃ち込むバリエーションも増えるという。
小一時間ほど夢中で練習していると、コンコンと誰かがドアをノックした。
ほぼ裸でトレーニングしていたので、慌ててTシャツとハーフパンツを履いて出てみると、レディとカブトがニンマリ笑って立っていた。
「誠が退屈だろうから、ゲームを持ってきたよ」
ニコニコ、カブトが語る。
「え、僕はあんまりゲームは…」
断るいとまもなく二人は部屋に入ると、早速モニターに配線し始めた。
二人の後ろには、何故か川上までついてきていた。
二週刊ほど、ちょっと病院へ旅立ちます。
6月13日から再開予定です。
コロナじゃないよ!




