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シャドウダンス3魔弾の射手  作者: 緑青ゆーせー
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球体

黒い球体は見ている間にも増殖を続けており、ゾンビの臭いのする三田方面の空は、すっかり黒ずんで見えていた。


「でも、どうするんですか!

あれの倒し方なんて…」


誠は焦って言った。


「まずは、蝶で可能な限り分析してみるわ…」


美鳥は蝶を飛ばす。

すぐに美鳥の蝶は球体に貼り付いた。


「かなりの硬度があるわね。

そして、重量も一つ一キロほどはあるわ」


硬く、重い球体らしい。

だが、誠は簡単に球体を切断することが出来た。


「おそらく、分裂を使って攻撃を回避しているのだと思うわ」


なるほど…。

分裂することによって、たいがいの攻撃は避けられてしまうのか…。


ヒヒヒ、とユリコは笑って。


「分身魔球って訳か?

いっちょ、打ってやろうじゃないか!

誠、球に近づけ!」


「え、これがどんな攻撃をするのかも分かってないんですよ!」


カカカとユリコは笑い。


「良いじゃねーか。

どのみち、手合わせしなけりゃ強いも弱いも判らんだろ!

俺だけ、球に近づけりゃ、いいよ」


誠は、ちらり、と美鳥を見た。

美鳥は頷く。


防御は美鳥が補うつもりらしい。


誠は、ユリコを乗せた手を、ゆっくり球体に近づける。


ユリコは、野球の右打席のように鉄パイプを構えた。


「もーちっと下だ、そこから右…」


と高さを指示する。

どうも、2メートルを軽く超える鉄パイプで、黒い球体を打ち込むつもりのようだ。


「よーし、ゆっくり近づけろ…」


と、膝でタイミングを取りながら、球体を凝視して。


カン!


フルスイングで球体を弾き飛ばした。


「え、なんで分裂して避けなかったんですか!」


誠は驚くが、フフンとユリコは胸を張り、


「つまりは分裂する二つの球体を同時に打ってやれば良い訳だよ」


と人差し指を振った。


そして。

ユリコの打った球体が、空中で消えた。


「そうか…。

幾ら増殖していても、射程を離れれば消えるんだ!」


驚く誠に、美鳥も、


「という事は、影繰りは思うより近くにいるのね!」


叫び、蝶を大量に発生させた。


射程は、およそ数百メートル、その範囲で無限に影を増やせるのは凄いが、射程外には飛ばせないらしい。


「ケケケ、全球、弾き飛ばしてやんぜ!」


ユリコは鉄パイプを、軽々とスイングし、誠に位置を指示した。


が…。


ピュン。


ユリコの顔の横を、球体が走り抜けた。


「まずいです。

どうやら、これが敵の攻撃、何万の球体が四方八方から攻撃を仕掛けてくるようです!」


誠は、ユリコを自分の方に引き戻そうとするが。


「うろたえんな!

こんなもん、屁でもねーんだよ!」


ユリコは叫ぶと、自分に向かって飛んでくる球体に、鉄パイプを当て始めた。


フルスイングのバッテイングというよりは、バットにあてる、というテクニックだ。

いや、それはむしろ、戦場で槍で弓矢を落としている、という光景の方が的確かもしれなかった。


空中なので、頭上から、また足の下からも球体は飛んでくる。


それを器用に、ユリコは弾き飛ばしていた。


むろん、誠も美鳥も球を防いでいる。


ただ、誠の影の体は、切断は可能になったが、飛んでくるものを落とすようには出来ていない。

力は強いが、盾のようには使えないのだ。


「誠、蝶を持ちなさい!」


それは便利な盾だった。


無数の影の手が、美鳥の蝶を持ち、カンカンと球体を弾いた。

ただし、誠は、球技は得意ではない。

空振りもかなり多かった。


「誠、俺ちゃんを頼れよ!」


「あたしもやってみます」


元々、球技が苦手なのは自分で判っていたので、誠は颯太と真子に球体を防ぐ役を任せた。


誠は、影の手をユリコと美鳥の体の維持や、もう一つ…。


たぶん近くにいるはずの影繰りの発見に集中した。


浜松町から三田にかけての市街地は、ビルばかりが立ち並んでいる。

おそらく影繰りは、そのビルのどこかに潜んでいるはずで、それを探すのなら誠の透視能力は有効なはずだ。


颯太も真子も、誠に比べるとはるかに上手に、球体を弾いている。


誠は、ビルを透視してそれらしい人物を探した。


美鳥は、ほとんどユリコへの球を防ぐのに手いっぱいだった。

誠が探すしかないが、影繰りが見つからない。


周辺数百メートルの全ての建物は見た、と思う。

むろん、避難勧告は出ているとはいえ、ホテルも多く、残っている人も少なからず、いる。


だがこの状況で、それらしい素振りを見せる人物はいなかった。


球はユリコのみでなく、美鳥や誠にも襲い掛かっている。


いつの間にか敵の集団に、誠たちは取り囲まれていた。


皆、持てる能力をフルに使い、球を弾き返しているが、それも無限に続くとは思えない…。


そうか、僕は動いていない…。


と、誠は気がついた。


敵は、明らかに誠たちの方向に数百メートルも動いている。


建物の中にいる、とは射程距離を思うと、考えにくい!


と、なると車か…?


だが、避難勧告の出ている地域であり、殆ど車両は見当たらない。

ただパトカーや自衛隊の車両は何台か…。


そうか、それだったか!


誠は急いで、特殊車両の中を探し始めた。








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