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シャドウダンス3魔弾の射手  作者: 緑青ゆーせー
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とにかく、今はまだ、敵を断定はできなかった。


この敵は危険すぎる。

必ず殺さなければ、誠も知らないうちに精神をコントロールされるかもしれず、うっかり仲間のところに戻ったら、ゾンビより大きな災厄にもなりかねなかった。


だから、可能なら殺すべきだ。


だが、このタコの影繰りに、もし、思っているようにボディガードが付いているとしたら、誠は二人の影繰りと、静香を守りながら戦わなければならなくなる。


そのためには先制攻撃が効果的だったが、もし間違った人物を攻撃してしまったら、多分、それが誠の隙になる。

その瞬間に、2人の敵に襲い掛かられる羽目になる。


だから、早く敵を断定しなければならなかったが…。


誠の足に、ひたり、と微かな感触があった。


自分の視線は動かさず、影の目でそれを見る。


タコが、誠の足に忍び寄ってきていた。


タコが、どれほどの速度で誠の心を乗っ取るか判らなかったが、あまり時間は無い。


敵はタコの足が誠の足を這う感触を、誠に隠そうともしていなかった。


人質を取っているのだから動けない、と判っているのだ。


すぐにでも敵の正体を知らなければならなかったが…。


このカフェにいる男性は、誠を除けば2人だ。


窓際の老人。


観葉植物の影の、おそらく40前後の男性。


むろん2人は、誠を見もしないが、最も疑わしい、と言わざるを得ない。


また、その裏、という事もありえた。

静香の口から出たのが、男っぽい喋り方、だったから、それだけで敵は男性、と断定していいのか、という疑問だ。


声優など、男の声を当てる女性は多くいる。

宝塚もそうだろう。

それは、一定の発声などで、容易に女性が操る事も出来る技術なのだ。


特に、話の内容は、このタコ使いならば何万回も使っていただろう同じ脅し文句であり、声真似もしやすいはずだ。

だから敵は実は女性でも、それほど意外ではない。


女性の2人連れは、誠たちの隣の席で、賑やかに話している。

今は、旅行をしたい、と盛り上がっていた。

温泉、京都、鯛の刺身、などのワードが賑やかに浮かんでいた。


またカウンターの女性は、ケーキの追加注文をしていた。

とても美味しい、とウェイトレスと話し込んでいる。


話し込みながらタコを操れるのか、は疑問だが、しかしタコの操縦中は全く動けなくなるのだったら、すぐに悟られてしまう。

ある程度日常的な行動はとれる、と見るのが妥当だと思う。


敵の正体を知るには、なにか特別なリアクションを起こし、相手の反応を見るのが近道かもしれないが、しかし、この手は一度しか通用しなかった。


そこで外せば、相手は誠を一気に支配しようとするだろうからだ。


静香を連れて、飛行で逃げる、という道もあったが、これは最後の手段にしたい。

静香に、誠の仕事が露見するし、それは静香が最も危険な目にあう可能性が高いからだ。

内調の事を知っている上に、己の身は守る術がないのだ。


また、敵の力がどれほど強力なのか、が判らない。

誠が精神支配されたらそれまでだが、静香が支配されたとしても、誠には相当なダメージになる。


今、敵が誰か判断できれば…。


誠の足を伝って、タコが登って来る。

膝小僧に、タコの触手が、ゆっくりと登って来た。


「あ、すいませーん!」


突然、静香が声を上げた。


「あ、ハイハイ」


カウンターで女性と話し込んでいたウェイトレスが慌てて、注文を取りに来た。


「あたしはケーキセットで、アプリコットケーキ。

誠君は?」


静香が、楽しげに聞いた。


ああ、と誠は笑い、


「僕はシフォンケーキにするよ」


言いながら、影の手を、背後に突き出していた。


カウンターの女の心臓動脈の一部をカットする。


女が、カウンターの背の高い椅子から、崩れ落ちた。


「おい?」


と、カップルの男性が、女に近づくが、


「し、死んでる!」


「きゅ、救急車を!」


店内は大騒ぎになった。


誠は、足からタコが消えるのを確認し、静香を抱くように店を出て、オペラシティの外に出た。


「人、死んだね…」


静香は茫然としているが、誠は、


「僕らがいてもしょうがないからね」


言って、道に停まっていたタクシーに静香と共に乗り込んだ。


タクシーは、スマホで内調に依頼したものだ。


静香が声を上げた瞬間、タコの動きが完全に止まった。


それで誠は敵の正体を見つけ、単独犯と見切りをつけて一瞬で殺害したのだ。


「意外と多いらしいよ、突然死って。

だけど、あまり、そう言うのを見ない方が良いよ、静香ちゃんは」


誠があいまいに笑う。


タクシーは高円寺に向かって走っていった。


「でも、あんな風に突然死ぬものなのかな」


誠も、自然にそうなるのか判らなかった。

おそらく、自然死と判断されるだろうが、自信は無い。

心筋梗塞とか、そういう感じに診断されることを期待したのだが…。


「誰でもね、死ぬんだよ、どんな人でも…」


誠は、溜息をつくように静香に教えた。

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