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シャドウダンス3魔弾の射手  作者: 緑青ゆーせー
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144/220

142オペラシティ

オペラシティは、新国立劇場に隣接する高層ビルであり、劇場を利用する人たちにも親しまれるカフェやレストランもそろえた豪華なビルだ。


誠は、仲間と離れてスマホを使った。

本来ならば、地下から脱出した時点で電話をしなければいけなかったが、その時には、まだここまで辿り着けるとも、オペラシティに行くことを諦めざるを得なくなるとも、判断がつかなかった。


死ぬ確率の方が高かったのだ。

もし、最後の電話で変な事を言ったら、釈明も出来ない事になる。


スカイウォーカーを倒せたので、やっとここに到着できた。


高層ビル特有の、広々とした前庭を歩きながら、誠は電話をかけた。


まだSNSを発信していた敵グループとは対決しておらず、どんな仕組みで誠の動きを追っているのか、まるで判らなかったので注意はしなければならない。


ビルの内部に入ると、大きな吹き抜けのあるユッタリとした空間が広がっていた。

新宿から一駅あるだけで、中に人も、全くいない訳ではない。

ただ当たり前だが、コンサートは中止だった。


スマホは呼び出しを始めるが、静香は出ない。


誠は、広いホールの中を走った。


SNSの敵は、誠の現在地が判る。


つまり、静香にも危険はある。


だから敵より先に、静香を見つけなければマズかった。


ホール中央部は広い吹き抜けだ。

奥にコンビニがあり、それは営業中のようだった。


誠は、吹き抜け部分を迂回して、建物の奥に走る。

ビルの奥に何かがあるのは見えていた。


吹き抜けを横切って、ビルの奥に走ろう、としていた誠は、背後から、


「誠君…?」


と静香の声を聴いた。


振り返ると、ドレススカートに白いブラウスをあわせてドレスアップした静香が、


「誠君。

来てくれたんだ…」


面長の静香の目が、潤んでいる。


「待っていたんだ?

てっきり、もう帰ったもんかと…」


だって…、と静香はハンカチで目をふき、


「誠君は、きっと心配して、ここに来るって思って…」


誠も、なんとなく静香は待っている気がしていた。


とはいえ、これは感動の出会い、とは決して言えなかった。


敵には、誠の位置がバレており、当然、静香も等しい危険を伴う事になる。


「静香ちゃん、家に送るよ…」


ゆっくりする訳にもいかなかったが、こんなに誠を待っていてくれた静香を、安全に自宅に送る責任が誠にはあった。


「何か大変な事があったみたいだね?

どうしたの?」


「うん。

新宿でテロが起こったんだよ。

新宿通りは、地下まで含めて、巨大な穴に飲み込まれてしまったんだ」


誠は簡単に説明した。

自分がその穴の底から這いあがってここまで来た、とは、さすがに言えない。


「テロ?

いったい誰がそんな事を?」


興味を示す静かに、誠は微笑し、


「それはまだ判らないよ。

犯人は、もしかしたらこっちに来るのかもしれないんだ。

だから、早く地元に帰る必要があるんだ」


静香に歩み寄る誠だが、その静香の細い首に…。


見かけない無いかが、一瞬動いた。


虫か…。


いや、虫だとしたら、相当な巨大種だ。

首に停まられて、静香が気がつかない訳は無い。


影だ。


誠は、影の体を出した。


「うっ…」


静香の背中に、黒い何かが貼り付いていた。

ベッタリとヒトデのように四方に広がった姿。


それが、ゆっくりと這う様子から、誠は影の正体をやっとつかんだ。


タコだ…。


タコが、八本の足を延ばし、静香の体を動いている。


影繰りではない静香には、それに全く気がつけないらしい。


マズい…。


敵は僕に気がついていて、そして静香に標的を定めたのだ。


誠にとって、一番困る攻撃だった。


人質に取られたことに気づいていない人質だ。


静香に言っても、意味が解らないだろう。


そして…。


人に貼り付く、という形状から、おそらく、この影は、貼り付いた人間に何か良からぬことをする能力があるハズだ。

そして、ワザと誠に、その姿を見せたのだ。


誠は唸った。


敵の位置を発見しなければ戦う事すらかなわなかったが、しかし…。


このオペラシティは、地下から3階まで続く、巨大な吹き抜けがあるビルだった。


射程が中距離程度だとしても、地下から三階まで、敵が潜める可能性がある。

しかも、もし目の前のコンビニの中にいたとしても、どうやって誠はそれを判断したらいいのだろう?


「誠君?」


静香は、誠の微かな表情の変化に気がついたらしい。


敵を倒すためにも、静香に不信感を抱かれてはいけなかった。


「あ、ごめん、ここは危険だと思うから、つい気が散ってしまって。

さ、早く帰ろう」


敵が誠と同程度の射程、中距離だとすると、会話を聞かれる恐れもある。

自宅が高円寺だなどと知られるのはマズかった。


「でも、電車も止まっているの」


確かに、新宿駅と繋がる京王線は停まっているだろう。


おそらく、外の甲州街道の様子から見ても、タクシーを拾うのも無理のようだ。


山手通りを早稲田通りまで歩けば地下鉄東西線があるが、確実に動いているという保証は無く、また、その過程数十分を、のんびり静香を無事なままで歩かせてくれる保証はどこにもなかった。


ここは、まだ判りやすい場所だ。

およそ、地下1階から地上3階までを見ればいい。


誠は、何とかここで敵と決着をつける必要があるようだった。






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