↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シャドウダンス3魔弾の射手  作者: 緑青ゆーせー
PR
142/220

140アプリ

誠は、新宿上空を滑空していた。


無数の影の手が重なって、黒い翼を作っている。


まさか、こんな飛行が可能とは思わなかったが、これからは、少しはマシな飛行も出来るようになるだろう。

それはいい。

それは良いのだが…。


問題は、眼下に広がる新宿の街だった。

ここに今、何万とも知れない鼠の群れが集まっていた。

これを何とかしない事には、誠たちに、その先は無い。


しかし、誠は、前よりは流麗に飛行をしているようだったが、この飛行では十人を超える人間は運べない。

今まで通りの影の手を伸ばす飛行なら、運べるのだが、高層ビル街は、それのしにくい場所だった。


「誠…」


真子が呟く。


ん、と視線を上げると、目の前に黄緑の立方体が浮いていた。

現実の物質とは、明らかに違うまるでCGのように見えるキューブだった。


「なんだろう、これ?」


誠も驚いて、声を出した。


影繰りの攻撃のようでもあるが、それにしては、痛くもかゆくもない?


「これは、アプリです」


真子が語っていた。


「え、何言ってるの、小野さん?」


「誠、あなたはスカイウォーカーを倒して、新しい力が生まれたのです。

それがアプリ。

あなたはそれを、ダウンロードするか、どうかを選ぶ事が出来るんです」


確かに影能力はイメージの世界であり、目の前のこれは、とても分かりやすい。

ただし、普通は、どういうアプリか判ってからダウンロードするものだと思うが…。


それはただ、黄緑色の、箱に過ぎなかった。

舌切り雀がお婆さんに2つの箱を選ばせるようなもので、しかも箱は1個だった。


誠は迷った。

まさか、オバケは出てこないだろうが。


「誠。

やる以外、選択肢はねーじゃねーか!」


颯太は言う。


ま、それはそうかもしれなかった。


誠は、黄緑の箱に触れた。


箱が消え、誠の中に何かが入ってきた。


最初は、全く意味が解らない無数の力に、誠は引っ張られているように感じた。


ん。


これは、もしかすると、引力と反発なのか?


「そうです。

これから誠は、マッドドクターと、代々木の少年の使っていた引力と反発力を、自在に使う事が出来ます。

元々、あなたの落ちる力と、これらの力は親和性が高かったのです。

おそらく、違和感なく使う事が出来るでしょう」


「小野さん?

どうして?」


小野真子は薄く笑った。


「私自身が、あなたに取り込まれたとき、アプリになっていたようなの。

OS。

オペレーションシステムよ」


OSとは、ウインドウズのようなものだ。

コンピューターに、単独に直接、プログラムを書き込むのではなく、OSを仲介させて、ダウンロードを簡略化して組み込む方法、それがOSだった。

OSが無い場合、コンピューターにプログラム、ワードを入れても、そのコンピューターは、ただのワープロ機械としてしか機能しないが、OSがあれば、それを使ってSNSへの通信もでき、エクセルやパワーポイントとの互換性も生まれる。


「小野さんが、僕のOS?」


そう言えば、小野真子は、マッドドクターを誠が殺してからいつの間にか入っていた人格だった。

マッドドクターはヒュノプスという神を宿しており、それは誠に流れ込んだのだ、と言われていた。


神は、OSなのか?


誠にはよく判らなかったが。


しかし、少しの滞空時間で、誠は力を理解した。


全ての物質、それは雲でも、光りでもいい。


それには、それぞれ引力があるのだ。


誠は、それに対して引力を肯定するか、否定するか、つまり反発するか選べばいい。


選ばなければ、その力は顕在化されないから、例えば雲と引き合う事を誠が選べば、誠は即座に飛行できる。

また、同じように大地と反発しても飛行できるが、反発はバネのような力であり、タッチの違いを理解しないといけない。


誠は、新宿上空を旋回しながら、磁力の力を理解していった。




「美鳥さん!」


誠はしばらく新宿上空を旋回してから、KDDIビルに降りてきた。


「ネズミを操る影繰りを探せませんか?」


ビルの上空十メートルに、誠は空中に静止しながら、聞いてきた。


「ええ。

見つけているわ。

あんたが勝っても負けても、どっちにしろそいつは殺す予定だったから」


美鳥が笑った。


「だが、面倒なんだぜ小田切誠」


と良治が言った。


「奴は、あのビルの5階に潜んでやがるんだ!」


KDDIビルから通りを挟んで向かいの、雑居ビル。

12階建てのビルの5階に、敵は潜んで鼠を操っていた。

障害物の奥に潜んで、誠たちの周囲をネズミで取り囲んでいたのだ。


「そうですか…」


誠は言うと、一瞬で空高く舞い上がる。


そして、飛び込み選手のように体を捻って一回転させて向きを変えると、そこから急降下に移った。


「おいおい、あいつ、ビルに突っ込むぜ!」


ユリコは叫ぶが。


「大丈夫」


カブトが笑った。


「奴に物質は障害物にならないから」


誠は超高速でビルに透過し、バサリ、と黒い翼を羽ばたかせて、KDDIビルに戻ってきた。


鷹の足のように延ばした影の手に、薄汚い白人男性の死体を抱えていた。




ヒョヒョヒョ、と独特の笑い声をあげて、小柄な老人が腹を抱えて笑ってた。


「どうだい、死んじゃったよスカイウォーカーとマッドマウスが!

愉快じゃないかい?」


「ゾンビマスター、仲間の死に、不謹慎よ」


と窘める赤いドレスの女も、また笑っている。


「彼はいいねぇ、どうだい、彼を仲間にしちゃあ?」


ゾンビマスターが指をパチン、と鳴らすと、奥に立っていた、身体を不気味に傾けたゾンビが、グラスにウイスキーソーダを作り、カクカクした動きで、ゾンビマスターにウイスキーソーダを運んだ。


「駄目よ。

あなたも会議に出ていたでしょう?

彼の暗殺命令を出したのは、魔弾の射手なのよ」


あー、とゾンビマスターは、頭を抱えた。


「魔弾の射手ときたら、普段はゾンビのように無口のくせに、急に言い出したんだったね!」


「そうよ。

そして、魔弾の射手は、決して死なない。

小田切誠にとっては、最悪の敵でしょうね」


京王プラザホテルのロイヤルスイートで、二人は祝杯を挙げると、


「さあ、あたしたちの仕事を始めるのよ」


赤いドレスの女は、ゾンビの作ったウイスキーソーダを旨そうに飲みながら、艶やかに笑った。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。