133新宿西口へ
F1カーが分裂した強化パーツが、勇気と合体した。
ほぼ120センチだった勇気の身長が、足のパーツにより135センチになって、頭部に遮光器土偶のようなヘルメットがついた。
手にも、肘から先に大きなアームがついて、パンチの射程が20センチほど伸びた。
「突撃だ!」
勇気は叫び、大柄な中学生に突っ込んでいった。
ケケ、と小さな嘲笑で喉を鳴らして、中学生が上から勇気を殴りに行く。
勇気は、身を低くして地面を滑った。
足のパーツが、ローラースケートのように微かに地上を浮いて、地表を滑ったのだ。
瞬間、勇気は加速した。
大柄な中学生のパンチを搔い潜り、中学生の下腹に、勇気のパンチが突き刺さった。
アームもパワーを増長していた。
ジェット的な何かを噴出しながら、中学生のボディを抉ったのだ。
中学生は、跳ね飛ぶように弾けた。
そこに、義郎が襲い掛かった。
義郎はパワーシャベルのようなマシンを身に纏い、両手が重機のように機械化されていた。
足は、勇気のブーツに近いものが覆っている。
義郎は、鋼鉄の両腕で、宙に跳んだ中学生を地面に叩きつけた。
さらに2人は攻撃を加える気だったが、さすがに大人が止めた。
中学生は、既に失神していた。
樹怜悧とレイナが合体する間、愛理ちゃんがミラクルアンブレラで2人を守った。
樹怜悧の電車は、他と違う形に変形した。
バサリ、と翼を広げて、樹怜悧の背中に貼り付いたのだ。
勇気や義郎ほど巨大ではないアームとブーツが、電車の後ろ部分が分かれて手と足を覆った。
空中に樹怜悧が飛び立つと、女は広い範囲を射撃せずにはいられなくなった。
一方、レイナは救急車に乗り込む形になった。
が、救急車の前半分が上にスライドし、巨大な銃座に変わっていた。
樹怜悧は空中から巨大コンパスのチョーク部分を連射し、機銃のように使っていたが、それに気を取られた少女が空を見上げた瞬間、レイナは銃座から、巨大注射を発射していた。
樹怜悧に銃を向けた少女の背中に、巨大注射は突き刺さり、何らかの薬物? を彼女に撃ち込んだ。
ギャッ、と叫んだ少女は、そのまま昏倒した。
倒れた二人を街路樹に縛り付けているうちに、誠と、小柄な少年を背負ったユリコが帰ってきた。
「目が覚めないのか…」
レディは興味津々に小柄な少年を見つめた。
見る間に若返るのではないか、という期待だった。
さすがに、他のメンバーは、そこまでレディが倒錯した願望を胸に秘めているとは思いもよらず、あのヤギョウの少年を探すが、いつの間にか彼は姿を消していた。
「明治神宮の外周を歩くこともできるが、SNSで呟かれると面倒だしな。
むしろ、今や非常警戒中だろうから甲州街道を抜けて新宿に出るか」
渡辺龍は提案した。
自衛隊は、影繰りなら避けるのは容易いし、SNSで呟かれても、警戒中の新宿に足を踏み入れる一般の影繰りは少ないだろう、という目論見だった。
無人の代々木駅前を通って、線路と平行に走る道沿いに新宿へ向かう。
小田急線の踏切があるが、今は列車そのものが止まっていた。
イーストサイドの南側の下を通る道を歩いて、誠たちは無人の甲州街道をゆっくり渡り、新宿西口へ入っていった。
自衛官の姿は見えなかったが、他の人間の姿も見えない。
飲食店なども、休業の張り紙が貼ってあったり、シャッターが閉じたりしていた。
「甲州街道を進めばオペラシティですよね?」
西口に入り込もうとする渡辺龍に、誠が首を傾げた。
「もっと盛大に警戒してくれると助かったんだがな。
誰もいない、となると広い甲州街道を堂々と歩くのは不用心だろう。
路地を選んで、日蔭を進もうぜ」
渡辺龍が教えた。
確かに、これだけの集団が歩くのは、甲州街道は広すぎる。
ラーメン屋の横の路地を曲がり、誠たちはオペラシティのある初台に向かった。
「少し何か食べとけば良かったなぁ…」
カブトはぼやいた。
飲み物は自販機で不自由しないが、昼から何も食べていない誠たちは、かなり空腹だった。
「ま、悪い事だが、コンビニに入らせてもらって、腹ごしらえをしようか」
渡辺龍の言葉に異存を唱える者はいなかった。
影をまとい、ちゃんとレジは自分たちで通して、誠たちはコンビニで腹を満たした。
「このラーメン、マジで旨いよな!」
コンビニラーメンは大盛況だった。
誠も、温かいとんこつラーメンを食べて、ずいぶんホッと心が和んだ。
「一度、レジをやってみたかったんだ!」
勇気は、レジのバーコード読み取り機を手に取って喜んでいた。
「囁かないわね」
美鳥は、スマホの充電をしながらSNSを警戒していた。
「ま、それが良いことだとは限らないわよ」
と、小百合がカップ麺を啜りながら言った。
「発信者が近くにいるから、特に発信する必要がない、とも考えられるわ」
全員が視線を交わした。




