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シャドウダンス3魔弾の射手  作者: 緑青ゆーせー
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133/220

131治癒

磁気の、引き合う力か…!


誠は、地面に押し付けられていた。


力はとても強く、誠は指一つ動かすことは出来なかった。


おかしいな…。


誠は思う。


これほどの強い力なら、さっさと使えば、もっと楽に戦えるはずじゃ無かったか?


隣のユリコも、力に逆らおうとしているが、あの超パワーをもってしても磁力の力には勝てないらしい。


少年は、たぶん敢えてこの場所に誘導したのだ。

ここが、彼の力を最大限に発揮できる場所なのだろう。


しかし、なぜ明治神宮なのか?

誠は考えるが、地下を見ると納得した。


この地下には、人口物はなにもなく、地下十メートルには巨大な岩石があった。

この宅地一軒分程もある大岩を、たぶん、あらかじめ磁化していたのだろう。


ただし、ここで言う磁気とは、影繰りを引き、また跳ね返す力のことであり、現実の磁石とは、違う。


いわば影を引き、また弾く、性質を持った影能力の事だ。


ただし、磁気という言葉とのイメージの親和性からか、影繰りが鉄だった場合の磁力とほぼ同じように作用する力だ。

そのようなイメージで、影を作った結果なのだろう。

シンプルだが、決まればとても強い力だ。


小柄な少年は、なんと日本刀を取り出した。


「これは宝物殿にあったここの日本刀だぜ。

これでお前を切断する!」


ギラリ、と太陽の光を反射し、日本刀が銀色に光った。


ヒヒッ、と少年は笑い、


「俺の磁力で鉄の剣を振ったら、どうなると思うよ…。

超電導で剣を振れるんだぜ…、ヒヒッ。

お前らなんて、みじん切りだぜ…」


まずい…。


透過すれば、誠は日本刀ぐらいで切られることはないが、しかし磁力を何とかしない限り、いずれは追い詰められるだろう。

だが磁石を狂わす事が出来るとしたら、電気ぐらいの物だろう…。


と、考えてから、誠は、この力が厳密には磁力では無いことに気がついた。


影の力だ。


影ならば、誠が、もしかしたら治療の能力でなんとかできないものだろうか?


少年はお守り売り場から軽く飛び降り、日本刀を持って、ゆっくりと誠に近づく。

時折、剣を振っているが、確かに…。


斬撃の金属の光りは、ギラリと一瞬きらめくが、太刀筋など見える速度ではない…。


誠は、急いで巨大な石を透過状態にした。


傷ついた身体を、一旦透過状態にすることで、融合させる。

それが、最近誠が身につけた、治癒、の力だった。


縫合する、よりも早く、完全に傷を治す。


同じように、巨大な岩を、全て透過状態にし、しかしその位置から落とさないようにする。


しばらくその状態を維持すると、不意に…。


磁力は消えた。


ハァッ!


叫びと共に、ずっと立ちあがろうとしていたユリコが、飛び上がるように立ち上がった。


「なに!

俺の磁力をどうした!」


少年は驚愕した。


どういう理屈か判らなかったが、誠は岩の治療に成功したのだ。


「こんのクソ餓鬼!

ブチのめしてやる!」


ユリコは、怒り狂って少年に鉄パイプを振るが、少年はユリコの鉄ハイプを磁化していた。


鉄パイプと少年の体は反発しあうので、絶対に触れない、という理屈のようだった。


そして少年は、巧みに地面や周りの森林と、反発、引き合う力を駆使していたので、人間の速度を超えて空気のように軽やかに逃げていく。


事実、彼は己の筋力をほとんど使っていなかった。


物質では、とうてい少年を捉えることは不可能だった。


影ならば触れられるはずだが、少年を掴もうと物質化すると、前もそうだったように指に乗られてしまう。

そしてたぶん、少年が手を触れれば、その物質と少年は磁力、という因果で結ばれてしまうのだ。


物質化して掴むのではなく…。


あの岩を直したように、少年を治癒させてしまえば…。


そうしたら、少なくとも新たに因果を結ぶまでは、少年は磁力を操れないかもしれない…。


磁石がただの鉄になれば、その一瞬でユリコさんなら少年を仕留められる。


誠は、少年を透過した。


だが、少年は、虫を追う燕のような速度で変則的に揺れながら、今は空を飛んでいた。


ずっと透過状態を維持することが、難しかった。


飛ぶか…。


誠も少年と並走すれば、多少は透過しやすくなりそうだ。


影の手を伸ばし、誠は宙に浮かんだ。


無数の影の手を伸ばし、あちこちの木を掴み、滑らかに飛行する。


おおむね、少年と同じ速度で飛行が出来た。


攻撃されると、その瞬間、反発が起こるので加速するが、そうでなければ少年の速度は、誠の飛行とあまり変わらなかった。


驚くべきはユリコで、2メートルの鉄パイプを振り回しながら、誠や少年の速度に追いついてきている。


鉄パイプは、作業現場で足場を組むときに使う、きわめて頑強なものだ。

2メートルであれば、相当の重さがあるハズだ。


「ザケンなクソ餓鬼!」


叫んで、ユリコが振り下ろした鉄骨が少年に触れた時、誠の透過は、少年の磁場を治癒していた。






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