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シャドウダンス3魔弾の射手  作者: 緑青ゆーせー
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現人神

吉岡医師は、どうやってマッドドクターことリーキー・トールネンを殺害するか、それだけを考えていたのだが。


「面白い。

核融合と水素エンジンは今後の検証を待たねばならないが、その空中に画面が浮かぶ仕組みはどういったものなのかね?

非物質にそのような形態を与えることが容易いとは思えないが」


と、内閣府官僚内山が、リーキー・トールネンの話に喰いついてしまった。


ニマッ、と、まるでスマイルマークのように胡散臭い笑顔を作った、外見は少年の、しかし実年齢は、実に百にも近いという怪物は、気安く内山に話しかけた。


「驚くほどの事は無いんだよ。

大気中には、いつでも水分が含まれている。

水鏡を見たことがあるだろう。

ようは、あれの応用でこの程度のスクリーンは簡単に作れるんだ。

ソニーかパナソニックのエンジニアを呼んでくるか、筑波大の教授を招いてくだされば、すぐに論文にまとめられる。

だが、白人たちは論文を発見した途端に、自分たちも一枚加わろうと鵜の目鷹の目で飛びついてくるだろう。

だから日本の電機会社に製品を発表させる方が良い。

アップル社と同じようにするんだ」


内山は、即座にスマホをかけた。

この、地下の内調本部から通話できる電話は限られている。

おそらくは、内閣府の上司か、あるいは…。


総理大臣、という事も有り得る話だった。


「お話が盛り上がっているところを、失礼しますが、リーキー、あなたはさっき、こう言いましたね?

あなたが若返ったのは、神の領域の話だと?」


吉岡は、とにかく水を差す決意を固め、話に割り込んだ。


リーキー・トールネンは、仮面のような笑顔で頷いた。


「そうだね。

吉岡医師。

あなたは僕を本当に適切に扱ってくれたし、彼、小田切誠についても話しておいた方が良いだろう。


影繰りとしてのマッドドクターは、15歳の時、ある影繰りと殺し合う事になった。

彼女は朝鮮半島に伝わるムーダンと呼ばれるシャーマン、巫女かな、そういう出自の女だった。


このムーダンは蛇の神を自由に操る影繰りで、僕は殆ど殺されかけたが、たまたま腰ホルスターは15の僕には取り扱いにくかったため、胸ホルスターを使っていたため、コルトが僕の心臓を守った。


女、若く見えたが50過ぎだったようだ、影繰りというのは普通人よりは長生きだからね。

彼女は、仕損じたと見るや僕に、ナイフを抜いて飛びかかってきた。

夢中で僕は、そのムーダンの口の中にガバメントを突っ込んだ。


影繰りは、大概の銃弾などは弾いてしまうが、口腔内は、不意打ちであれば、生身と同じに通用する。

当時のコルトガバメントは、40口径の強烈な銃だったからね。

ムーダンは後頭部を割られて、即死したよ。


その時だ。


僕が、神を体内に宿す存在になったのは。


君達は、古代神話、それが古事記でもギリシャ神話でも、また白人に蚕食される以前の南米神話でも、同じような神の構成がある事に不思議と思ったことは無いかい。

おおよそ12神の中心神と、それを取り囲む、日本で言うなら八百万の神々。


その姿は、その古代文明社会の形態や文化によって違訳されてはいるが、元々の構成はとても似ていると思わないかい。


実は、神は今も生きているのさ。

ただ、影繰りの体の中に住み着くものなので、現代では知覚されにくいだけだ。


面白いことに、ムーダンの蛇神は、私の中ではヒュノプスに変化した。

器によって、神の姿は変わるのだ。


だから余計に判りにくいのだね。


おそらく、世界のどこかに太陽神ゼウス、君ら風に言えばアマテラスは今も存在するはずだ。

アポローンもスサノオも存在はしているのだよ、たぶん。


ただ世界が、神を受け入れる社会ではなくなっただけなんだ。

太古の昔ならば、神を宿した、と宣言し、その通りの実力を示せば、彼は神として扱われたことだろう。

影繰りとは、古来そういう存在だったのだよ。


面白いのは、日本では現人神という思想が残っているね。

これは、古代の思想が、異文明に押し潰ぶされることなく現代まで残っていた日本だからこそ現存する、たぶん真実だ。


キリストや仏などは、人間が作り出した都合の良い人工物であり、ただの思想に過ぎないが、古代神は今も存在し続けているのだよ、面白いだろ?」


リーキー・トールネンはニカ、と笑うと、肩を竦める。


「そして、さっきの検査で明らかになったように、僕の体からは神はすっかり抜け落ちている。

PL波の数値がそれを科学的に実証しているね。

小田切誠に、神は乗り移っていったのだ。


神は器によって姿を変えるので、おそらく小田切誠の体内にあるのはヒュノプスではない。

僕がこうして生きているところを見ると、彼の力はたぶん治療に関するもののように思えるね。

先の闘いの中でも、彼は何度か仲間を治療していた。

よい衛生兵がいる小隊は、強い。

彼は本当に優秀な影繰りに育つはずだから、大事に育てるがいいだろう」


言って、リーキー・トールネンは、


「ミスター内田。

よろしければ、大至急、僕の身柄は首相官邸に移した方が良い。

僕が目を覚ましたことは、すぐに世界に感知される。

今、君たちがする事は、大国との戦いに勝つことだ。

アメリカ、中国、EU、ロシア、全てが動き出すぞ」


と語って、フフンと吉岡を見た。

吉岡が、密かにリーキー・トールネンの暗殺を企んだことは、どうやらリーキーも知るところだったようだ。






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