森の殺し方
ぞろっ、と、ハマユの心に住み着いていた巨大蜘蛛が、現実空間に引きずり出された。
「…みんな、こいつが敵の本体です!」
と、なんとか福の背中で、誠は喋った。
福が、真っ黒い毒霧を吹きつける。
兄の大が、腕をグルグル回しながら頭上に差し上げた。
その拳が、どんどん巨大化していく。
「ギガトンパンチだ!」
大のパンチが、蜘蛛の背中に突き刺さった。
パンチは、地面が揺らぐほどの破壊力だったが。
蜘蛛の薄気味悪い何千もの足が、うねりながら森の四方に広がっていった。
うわっ、とバタフライは、思わず自分の方へ押し寄せる足から、身をかわした。
良治はナイフを撃ち込むが、足は何事も無かったように森に広がる。
ユリは、虫を蜘蛛に撃ち込んだ。
「ヌーヌー!」
渡辺龍は、茶色いモンスターを出し、蜘蛛を空中に浮かばせたが。
「駄目だ。
足の先は射程外へ伸びてしまっている!」
叫ぶが、アイチは、
「なーに、胴体をぶち壊すさ!」
とスケボーで胴体下を突っ走り、蜘蛛の腹部に腕を突き立てた。
無限に伸びた節足は、蛇花火型ドラゴンに囲まれたレディたちの周囲にも走り、節足とドラゴンは一瞬で融合した。
真っ黒なドラゴンの外皮に節足が、カビの胞子のように広がっていく。
節足の節から新たな節足が生まれ、たちまちにドラゴンは全身を蜘蛛の足で鎧われてしまった。
「なんだこいつ!」
恐怖から、レディは節足ドラゴンに分銅を撃ち込んだ。
グシャリ、と節足のドラゴンが潰れた。
と、その中から、無数の小さな蜘蛛が噴き出してきて、レディ兄弟は驚愕の叫びを上げた。
ロボットは果てしないツタとの不毛な戦いを続けていたが。
何回目かの分離を行い、ツタを焼き払おうとしたとき、節足がツタと融合した。
ツタは、瞬時に、ロボットとほぼ同等の大きさを持つ黒いサソリに変形した。
「うわっ、どうしよう!」
パイロット役をやっていた義郎が叫んだが、レイナは。
「ビームで焼けばいいのよ!」
と号令し、ロボットは胸からビームを発射した。
薩摩芋之介を包囲していた、切っても切っても、すぐに増殖する、樹とも草ともつかない奇妙な植物が、不意に黒く変じた。
おそらく節足と融合したのだろうが、その成り行きは芋之介は見ていなかったので知らなかった。
「何だ…?」
呟きながらも芋之介は、黒くなった植物を切った。
と…。
不意に、植物は水に変わり、飛び散った。
どす黒い、生臭い水だ。
水は、芋之介の周囲を取り巻き、どうやら生きているように蠢いていた。
樹上の小百合とユリコの前から、赤毛男の姿が消えた。
「どうした…?」
ユリコは異変を感じるが、蝶が二人に囁いた。
「誠がハマユの心の中に潜んでいた蜘蛛を引き摺り出したのよ。
ただ、蜘蛛が森と融合しようとしているの」
「難儀な…!」
小百合はガムを奥歯で噛み潰すが。
二人の周囲の木々も、不意に黒く変色し、枝葉が触手のようになって2人に襲い掛かった。
合体ロボットのビームで巨大サソリは爆発した。
が、消滅したサソリの奥で、ゆらり、と動き出した巨大な影があった。
樹だ。
巨大な木が、メリメリと音を立てて、ロボットに襲い掛かった。
ハマユは、しばらく悪夢を見ていた気がしていたが、うーん、と唸って起き上がった。
どうやら、目覚めた先も悪夢の続きのようだった。
森全体が黒く染まって、化物のように蠢いていた。
仲間が、みな、苦戦している。
「この蜘蛛、毒が効かないべ!」
福も叫び、兄の大も、
「蹴っても殴っても、まるで砂袋のようーだなぁ!」
と驚いていた。
やれやれ。
みな、森の殺し方を知らないらしい…。
ハマユは柔らかく肩を動かし、体の柔軟を整えてから、
「ココア。
お願い」
パン、とハマユが手を合わせると、青い熊が出現した。
青い熊は、ハマユの意思のままに動く。
大きな青い熊、ココアは、巨大だが柔軟だ。
腰を曲げ、指も何もない両手を、地面に着けた。
「氷点下!」
ハマユの掛け声と共に、地面が凍った。
一瞬で土に霜柱が浮き出し、緑の苔は茶色く変色する。
蠢いていた森は、瞬時に沈黙し、やがて…。
はらり…。
木の葉が、落葉し始めた。
すぐに森の木々が一斉に落葉し始め、唖然としている誠たちの前で、森は、枯れ木の林に変貌していった。
「そ…、そうか…。
ハマユさんは、この影の天敵だったんだ…」
誠は、呟いた。
「やれやれ、だ…」
さすがに嫌な汗をかいた芋之介は、首を鳴らして、地面に座った。




