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シャドウダンス3魔弾の射手  作者: 緑青ゆーせー
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誠に解せないのは、わざと音の出るヘリコプターで、しかも小さくなって森を抜けてきた点だった。


小さければ、むろん木の間も抜けやすいが、その分、速度も遅くなる。

スピードの出る戦闘ヘリであれば、百メートルの坪庭のようなジャングルなら、実寸大で飛来すれば不意打ちも出来るし、機関砲で攻撃すれば反撃の余地は無いはずだ。


試したのかもしれない…。


そう言ったものを感知する影繰りが、仲間にいるのかどうかを…。


だが、殺せるのに殺さない、というのはどういう事だろう?

戦闘ヘリだって、そう安いものでは無いはずだ。


ん、大きいものを小さくできるのならば、本当は小さいものを大きくも出来るのか?


それなら、玩具の戦闘ヘリを実物大にしたのなら数万円で済むのかもしれないか…。


大きくも小さくもする能力と、箱に入れる能力、それに眠くなる能力。

赤いドレスの女の力は、かなり複雑で凶悪なものらしかった…。


が、なぜ味方で誠たちに食い込んでいるクロコダイルマンを殺させてまで、玩具のヘリで注意を引くような事をしたのだろうか?


僕の息の根を止めるためならば、僕が生き残った時点でかなりな幸運だったが、もし違う目的だったら?


誠が透過持ちなのは、Aは知っているハズで、不意を突いたとしてもそれだけで完全に殺せる、と思う程、隙のある組織では無いはずだった。


小百合の誘拐が目的、とは思えなかったが、小百合を一人にするのは危険だ。

相手は、強制睡眠の能力があるのだ。


「…誰か。

小百合さんを手伝ってください…」


誠が言うと、


「よっしゃ!

俺が小百合は守ってやるか!」


ユリコはへし折った巨木を蹴飛ばし、場所を空けると、元気にジャンプして樹に登っていった。


「ありゃあ、ほとんど漫画だな…」


良治が呆れる。


「忍者みたいだ!」


と、喜ぶユリ。


誠は、福の背中で、まだ腑に落ちない顔で考え込んでいた。




小百合は一気に木の上に飛び上がる。

小百合の髪は、自在に操れるばかりではなく、硬質化することもでき、今は数本の髪を垂直に立てることで、森の上空5メートルに浮いていた。


誠君の言っていた、人の上半身を持った木、というのはあれね…。


小田切誠は、一瞬死んで幽体となり、それを見たのだという。


小百合の父は死んでいた。

小百合にとって、死後に上空から幽体が何かを見ることがあるのか、というのは、だから単なるオカルト的な興味ではない。


父は、母さんと墓参りに来た私を喜んでいるのだろうか…?

それとも既に、ラノベのように転生して勇者とか蜘蛛になっているのか…。


別に、それで小百合の生き方が変わる訳ではないが、しかし死と小百合の距離は、他のユリコやハマユよりも、ずっと近しいものだった。


誠が幽体として見た、と言った上半身が男の木は、確かにあった。


それで小百合の中の何かが変わる訳ではない。

おそらく、母の何かも変わりはしないだろう。

失ったものは、もう既に失っており、霊としてある、と知ったとしても喪失感が無くなる訳ではない。


冷たくなった父の手を小百合は触っており、もう小百合を抱き上げる事も、一緒に綿菓子を買う事も無いのだ、という事実はなにも変わらない。


惜しむらくは父が事故に会った時に、小田切誠が居合わせていたら、素早く傷を治してくれたのかもしれないが、過去に遡るのは、もう誰にでも無理なのだ。


だが、死後に父が小百合を見たであろうことは、もしかしたら事実と証明されたかもしれない。

むろん、それで小百合の行動が変わる事は一切ない。

ただ、いやらしい森野郎をブチ殺すのみだ。


小百合は、髪を針のように硬質化させて、上半身が人間の木に撃ち込んだ。


ズブリ、と髪は男の喉笛を貫通する。


「ま、そうするのは判るよ。

ただ理解していないのは、私は森なのであって、樹ではない事だ」


急速に、小百合が貫いた木は、ただの若枝に変じ、小百合の横に、新たに男が生まれていた。


「そーなのね。

まー、なかなか、手強い奴なようね」


「お褒め頂いて、ありがとう、お嬢さん」


下半身が木のままで、男は深々と礼をして見せた。


「でも下で、あなたを焼いているのはどうするつもりなの?」


全く表情を変えずに、小百合は問い質した。


あはは、と森男は笑い、


「よく、焼き畑で森の何パーセントを失った、とか、愚かな報道屋は言うだろ?

だが、森というのは、火事になることなど織り込み済みで存在しているものなのさ。

焼かれることで土壌は改善され、新たなステージに、森は生まれ変わる」


フフフ、と薄く笑う男を見て、小百合の心のどこかで、警報が鳴っていた。


勇気たちが、危ない…?


盛大にレディたちが砕き、燃やしていく森の地面の下では、既に新しい生物が、眼ざめの時を迎えていた。






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