表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シャドウダンス3魔弾の射手  作者: 緑青ゆーせー
PR
118/220

116四谷

「いや、聞きしに勝るって奴だな!」


バタフライが興奮気味に言った。


「なっ、無敵なんだよ日蔭さんは!

こーゆー人がいるから、新宿はヤクザがいようが、ハングレがいようが、正常であり続けられるんだ!」


レディも、自分の手柄のように喜んでいた。


「かっこよかった!」


ハマユが見せないようにしていたはずだが、勇気はしっかりと目に焼き付けていたらしい。


皆が喜ぶ中、誠は、考え込んでいた。


自分の影なら、似たことが出来るのではないか、と頭をよぎったのだ。


正面から戦わなくとも、あんなふうに戦えるんだ…。


今まで教わった戦闘とは全くの別物の、誠にとっては目からウロコの戦いだった。


だが、とにかく今は脱出することが最優先だった。

道の奥に、おそらく死体搬送用の穴が続いていたが、この先の敵の巣窟に小学生までを含むメンバーで足を踏み入れるのは無理だ。


地上に続くらしい横穴を、誠たちは登った。


敵らしい敵には出くわさなかった。


ただ、ネズミなどはいて、何度か足止めは喰った。

小学生は、ネズミの恐怖を生まれて初めて知ったのだ。


やがて岩をくりぬいたようなトンネルは、コンクリートの階段になり、鉄の防火扉を開けると、ビルの地下と思われる階段となって、四谷の雑居ビルに誠たちは出てきた。


数時間ぶりの日光を誠たちは浴び、路地から大通りに光を求めて歩み出した。


が。


そこは、戦場のように、自衛隊が土木作業車やジープをズラリと並べた場所に変わっていた。

誠は、思わず身を隠した。


アイチが、


「たぶん、向こう側が新宿通りだな。

だが、もう穴の方に進むのは無理だ」


あの新宿通りの一帯は大穴が開き、全てが封鎖されて物々しい警戒態勢が敷かれていた。


「子供たちを家に帰さなきゃな」


ユリコは言うが、


「たぶん山手線は停まってんじゃないかな?」


渡辺龍がスマホを見ながら言った。


「そうですね。

おそらく、新宿を起点に持つ地下鉄も殆ど電車が通れる状況ではなく、なおかつ…」


誠は自分の衣服を見た。


泥と瓦礫の中を何時間も戦い続けていたのだ。

真っ黒に汚れていた。


「俺たち、軍や警察に見つかったら結構面倒なことになりそうだな」


レディも、自分のドレスの無残な有様に、普通に男子に戻って語った。


到底、穴から生きて戻ってきました、とも言えない状況だ。

唯一の頼みの綱は、内調に動いてもらう事だったが。


「通話は出来ないわね…」


美鳥が眉をしかめた。


「おそらくAが、自分たちの都合のために電波を封鎖しているのでしょう。

とにかく、どこかで着替えてシャワーだけでも浴びたいところですね…」


おー、とアイチは言い、


「近くに行きつけのスポーツクラブがあるぜ。

スポーツウェアぐらいなら売ってるし」


とにかく、皆、アイチに続いた。


「お前、いつまでその恰好なんだよ?」


良治はクロコダイルマンに言うが、クロコダイルマンは。


「いや、皆を信用してない訳じゃ無いんだが、ちょっと素顔はマズいんだ。

どのみち、人間なら普通に見えるさ」


影の力は一般人には見えない。

ただ、周りより暗く見えるだけだ。

だから目立たず、隠密行動がとれるわけだが、ワニ頭に見えているのは誠たちだけだ。

町を歩くには、それほど問題がある訳ではなかった。


5分ほど路地を曲がっていくと、大きなスポーツクラブになった。

よく広告なども打っている、有名な全国規模のスポーツクラブだった。


「やってないんじゃないか?」


渡辺龍が聞くが、アイチは。


「その方が都合が良いだろ?」


ニィ、と笑って、誠に。


「さあ、透過させてくれよ」


確かに、透過により、閉まっている店内にも誠たちは自由に出入りできる。

電気は点いていないが、影繰りには必要もない。


美鳥が防犯カメラを蝶で潰し、誠たちは売店で着替えを選んで、シャワーに入った。


「冷水シャワーか…」


無念そうにレディは言うが。

いや、とアイチは、


「一々、電気まで落とさないだろ。

消してるだけだ」


と部屋の壁にあるタッチパネルを通電にすると、普通にボイラーが点火した。


汚れた衣服はゴミ袋に入れ、廃棄することにして、誠もスポーツウェアを身につけた。


自販機も動いていたので、一息ついた誠たちは、ロビーで座ってくつろいだ。


「誠、今、4時だぞ」


とレディが教える。


「何です?」


と誠は怪訝な顔をするが、レディは、


「こいつ、今日、彼女がオペラシティで、6時からのコンサートに待ってるんだよ!」


ケラケラと笑って皆に話した。


「いや、しかし、この状態じゃコンサートなんてやらないはずだし…」


誠は言うが、美鳥は、


「馬鹿ね。

その子は既にオペラシティにいたんでしょ。

あなたが行かないでどうするのよ!」


そうだ。

こんな状況だったので、あまり外に出ないように、と言っていたんだった…。


「いや、モテる男はつらいねぇ」


とアイチは笑い、


「だが、新宿が通れない、電車もバスも動かない、とすると、代々木辺りを抜けるか、さもなきゃ大久保辺りに出てみるか…」


「ここから大久保に出るのには、自衛隊がどの辺までいるのか探らなきゃならない。

山手線の高架を抜けて、明治神宮方面に進もうぜ」


なぜか渡辺龍たちも一緒に移動するような話になっていた。


「たぶん、まだ、影繰りたちはここらに集結してるんじゃないか?」


唸るようにクロコダイルマンも言った。





その時、しばらく黙言を通していたSNSが、


「小田切誠は四谷にいる」


と呟いていた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ