111赤いドレスの女
「お前、早まったことしたなぁ…。
きっと何か、顔に塗られた、とかそんな奴だぜ…」
ユリコは言った。
「違うの!」
真子は泣いていた。
「そんなの、確かめたのよ!」
誠も、真子の援護をした。
「確かに、何か塗られたのではないか、と言うのは一番先に思いつくことで、真子ちゃんはあらゆる手段を講じました。
なにより…」
真子はその映像を見てしまっていた。
「そのビルの屋上には採光のためのガラス戸があり、そこで真子ちゃんは有り得ない自分の顔を、一瞬は見ているんです。
その衝撃から、ビルに飛び降りる事になったんです」
「矛盾があるぞ、小田切誠。
なぜ、眼もない顔で自分の姿が見えるんだ」
渡辺龍が問う。
「目はあったんです。
額に一つ。
一眼です…。
真子ちゃんは、その姿を見てしまった…」
しばらく、全員が黙り込んだが、
「それ、影の力…?」
ユリが聞いた。
「おそらくは、としか言えないよ、ユリ。
顔を盗むとはどういう事で、盗まれた顔が、なぜあんな恐ろしい容姿になっているのか、全く判らない。
ただ、外科手術でもないだろうから、おそらく影の力じゃないか、と推察するだけだよ」
「まぁ、そこは真子ちゃんは可哀そうだが、今は子供の救出が先決だ」
クロコダイルマンが話した。
「しかし、小田切誠、なぜお前は小田真子に変身したんだ?
彼女が顔を盗まれており、お前が小田真子に変身する、と言うのは偶然の事なのか?」
誠も息を呑んだ。
「僕はそんな影能力ではありません!」
慌てる誠に、美鳥が誠の能力と、マッドドクターを殺害してから、マッドドクターは若返り、今、誠は小田真子に入れ替わるようになったことを告げた。
「そりゃあ、いったい何が起きたんだ?
その神の力が誠に作用したのか?」
ユリコは混乱している。
「神の力は、Aで3人に受け継がれている、と言ってたよ。
マッドドクター、スカイウォーカー、魔弾の射手。
神の力は、倒したものに受け継がれていくんだよ、神様が乗り移るんだ」
ユリが語った。
「どうしてこうなったのかは判りませんが、誠君に非はありません。
それより、早く樹怜悧君を助けましょう」
「お、また真子に戻ったな。
真子、お前、影繰りだったのか?」
真子は少し悩み、
「影繰りという意識はありませんでした。
でも。
至近距離で、紙などちょっとしたものは、手を触れないでも切ることは生まれつき出来ました。
今、思えば、影の力だったのかも…。
当時は、些細な特技、ぐらいに思っていました。
口笛が上手い、とか足が速い、というような」
特技ってお前…、とユリコは呆れるが。
誠は、透視で扉内部の構造を見ていた。
扉から侵入しようと思えば、当然ながら無数の、影繰りとの戦いを刷り込まれた兵士と正面から戦わなければならなくなる。
だが、岩を透過して侵入できれば、敵を搔き潜って内部に入れる。
とうぜん、樹怜悧を探す時間も出来る。
誠は、真子に体を任せながら敵兵から離れた岩盤まで移動し、真子の力を使った。
こうして、真子が誠と別の人間、と判ってみると、真子の力も理解しやすかった。
透過ではなく、透過を含んだ切断、という力だ。
真子は岩盤を切断し、トンネルを掘った。
誠が、その岩盤を透過で横にスライドすると、そこにトンネルが生まれていた。
「この穴、大丈夫なのか?」
クロコダイルマンが心配するが、
「すぐには問題はありません。
ただしバレないよう、すぐに塞ぎます」
そこは扉の中の施設の、一番端に位置していた。
ちょうど瓦礫が物陰になり、全員、安全に外を眺める事が出来る。
美鳥も蝶を飛ばすが、
「あすこだ!」
ユリコが、すぐに空中を指差した。
扉内部は、扉の大きさの大きな空洞になっていたが、その中央に宙吊りのように小部屋があり、そこに豪華な椅子を置き、あの赤い服の女が座っていた。
彼女の傍らに、樹怜悧は椅子に座ってポカンとしていた。
「酷いことをされた訳では無いようだな…」
ユリコは安心するが、勇気は、
「でも、なんかボーっとしている気がするよ」
確かに、目の前で繰り広げられている、2メートルを超えるダンゴムシが家畜として死体を運び、それを兵士が奥でトラックの荷台に乗せている、というような光景を見ているにしては反応が薄すぎる。
「薬物なのか、影能力なのか調べるには、蝶を近づけないといけないけど、それは危険ね」
当然、赤いドレスの女には美鳥の蝶も見えるだろう。
「女に、ユリの虫を撃ち込んで、一瞬で強奪しようか」
良治は自信満々に言う。
「なんにしろ、早い方が良いです。
僕が影の手を伸ばします!」
良治、ユリと誠の共同戦線が張られることになった。
良治はナイフを作り、ユリの虫を乗せ、すぐに女めがけて飛ばした。
ナイフは、さすがの精度で女に向かって飛んでいくが。
女、が瞬間、小さくなった。
「ち、気づかれていた!」
だが、誠は、樹怜悧を掴んだ。




