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シャドウダンス3魔弾の射手  作者: 緑青ゆーせー
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112/220

110顔泥棒

真子たちは、瓦礫を迂回して兵士たちに近づく。


「どうやら対物ライフルで武装している模様よ」


美鳥が囁く。


「どういうことだ?」


ユリコが真子に聞いた。


「つまり影繰りが影をまとっていても、骨折などのダメージを負う、という事です。

おそらく、対影繰り用の訓練を受けている兵士です」


そんなんあるのかよ…、とユリコは驚いたが、小百合は、


「接近すれば勝機はあるかしら?」


と聞く。


「おそらく、スタンガンなどを装備しているでしょう。

戦うなら、積極的に影を使い、短期間で制圧する必要があります」


と真子は教えた。


影繰りは戦場において圧倒的な優位を現在も誇っていたが、軍も研究を怠ったりはしていなかった。


射撃は大口径の対物ライフルなら、影をまとっていてもかなりの衝撃を受け、個人差はあるがうまくすれば骨折を負わせることも可能だ。

接近戦では、下手に戦わずスタンガンの使用に徹する、あとは薬物の使用などが推奨されており、必ず複数のチームで一人の影繰りと当たることを徹底していた。


「まー、強いバリアがあっても、一定レベル以上のパワーがあれば怪我は負う、電気は効く、呼吸はしている、そんなデータは集めてるわけよ」


「怖いねぇ。

で、どうする内調さん?」


と、美鳥の説明に渡辺龍が問う。。

おそらく彼らは、ある程度、対影繰り用兵士のことも知っていたように、真子は感じた。


「どうもこうも、樹怜悧がいるんだから、なんとか扉をこじ開けにゃあ駄目だろ!」


ユリコは肩を怒らす。


真子は、ハァ、と溜め息をつき、


「皆さん、今まで隠して来ましたが、僕が小田切誠です…」


透過を使い、兵を避けて敵地に侵入しない限り、とても小学生メンバーまで加わったこのチームで勝利は掴みようがなかった。


が…。


「馬鹿かお前?

俺が、男と女の匂いを嗅ぎ間違うと思うのか!」


と、ユリコがシラケた視線を真子に向けた。

つまらないジョークと思ってるようだ。


えっ?


真子は、驚く。

美鳥はふぅむ、と誠の周りに蝶を飛ばして、


「誠、あんたホントに真子ちゃんになってるわよ」


言うと、誠に断り無く、スカートをめくってパンツをずり降ろした。


「な、何をするんです!」


悲鳴を上げる誠と、後ろで、


「男子は見ないの!」


と騒ぐハマユ。


ユリコと美鳥、小百合は誠の下半身をガン見して、


「女、しかも、こりゃ全然子供だねぇ…」


ええっ! と慌てる誠だが、美鳥は、


「あんたも見ちゃ駄目よ、だいたい、この感じ、あんた全然、女子に触れたことすら無いでしょ!」


「ありますよ!」


静香ちゃんなら、少し触れたことぐらいはある。

それ以上は確かに、全く無いが…。


「そんな風に僕を騙して…」


と誠は勘ぐるが、美鳥は問題の部分に、指先で触れた。


「え、なにこれ?」


さすがに、誠の身体機関では感じようのない感触を、誠は今、確かに感じた。


「まー、本人は納得できないでしょうから、手でだけ、触っても良いわ。

真子ちゃんは嫌かもしれないけど、身体は誠なんだから仕方ないでしょう」


言うと、誠の手を持ち、足からもう片足へ、手を動かした。


「あ…、あれ…、ない…」


誠は愕然とした。


しかるべき位置で、常にある種の存在感を放っているはずの物がなく、つるりとした滑らかな空間があるのみなのだ。


「ど…、どういう事でしょうか…、まさか、影の攻撃…!」


取り乱す誠に、ユリコはウケて。


「そんな影、何の意味あるよ!」


ケラケラ笑った。

が…。


「待て、なにか、変な匂いが…」


ユリコは叫ぶ、と…。


「そこよ」


と美鳥が、誠の目の前を指差した。


そこに、小柄な少女が立っていた。


「…驚いたな、これは…、幽霊なのか…」


小百合は感嘆した。


セーラー服を着ている。

髪は長いが、その顔は、確かに小田真子だった。


「真子じゃねーかよ!

お前、どうしたんだ!」


ユリコが言うと、


「あたし、顔を盗まれたの…」


と、言うとシクシク、泣き出した。


誠たちは茫然と真子を見つめた。


「お嬢ちゃん、もう少し、詳しく話してくれるかな?」


私立探偵の渡辺龍が、そこは仕事柄、マイルドに語りかけた。


「あたし、私立の中学に通って、普通に今年の初めまで生活をしていたの…。

勉強は少し難しかったけど、何とか頑張ってた…。

だけど、塾の帰りに、変な男の子に会ったのよ…」


「男…?」


誠は首を傾げた。


「誠君より背の高い、でも同級ぐらいの子よ。

その子が、地下鉄の扉側に立っていたあたしの背後に立ったの。

綺麗な顔だな、って、あたし、ガラス越しに彼を見ていた。


そしたら、急に彼が背後から…。


「君の顔を、僕にくれないか…、って囁いたの…」


「それ、ある種の痴漢じゃねーか!」


ユリコは怒った。


誠も、なんとなく、そんな感じがした。


「でもあたし…、気がつくと、ビルの屋上にいたの…」


「え、どういうことだよ、なんかされたのか、真子!」


ユリコは聞くが、真子は泣きながら首を振る。


「顔を…、盗まれちゃったのよ…。

それに気がついて、あたし…、ビルから、飛び降りるしかなかったんだ…」


誠は、身体を共有していたために、その時の情景が理解できた。


「真子ちゃんは、まず記憶を取り戻した時、屋上で一人でした。

衣服に乱れはなく、でもユリコさんの言うように、薬物でも嗅がされたのか、と不安にはなったようです。

しかし、薬物の兆候を探ろうと、指を、顔に接触させたとき、絶望的な事実に気が付きました。


真子ちゃんの顔は、盗まれてしまっていたのです…」


「おい、誠、もっとはっきり言えよ。

どういう意味なんだ、そりゃ?」


ユリコは叫んだ。


「無いのよ…」


真子は語った。


「目も、鼻も、口も、何も無いの…。

触った事も無い、剥いた卵のような物の上を、あたしの指はツルツル滑るだけなの…」


時は夕暮れ時であったという。


薄暗くなりつつある、鉛色の空の下で、真子は絶望し、泣き叫びたかったが、口が無いので叫ぶことも出来ず、スマホはどうやら奪われていた。

困惑した真子は、あらゆる可能性を考えたが、しかし、どうしても自分の顔を見る恐怖に耐えられなかった。

やがてビルの角まで歩いて、そして飛び降りたのだという。







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