決着
しばらくお休みします。
再開は再来週の土曜日と思います!
真子にとっては、生物で視界が遮られるのは、まさに最大の目隠しだった。
透視しようとすれば、気味の悪い、動く解剖図が視界一杯に広がってしまう。
毎日のように透視はしているので、かなり慣れてはいるのだが、可愛い動物の内臓などは予想外にエグい。
真子の視界一杯に群れて飛ぶスズメを、真子はパチパチと弾き飛ばしながら二人の少女に向かっていた。
透過すれば良かったのだが、それでは前が見えない中、ハマユとレイナちゃん、二人の少女も透過してしまうかもしれない。
その時、ドスン、とスズメの群れの背後から少し汚れた白の巨大アヒルが、突然、真子の顔面にぶつかってきた。
アヒルは、真子が予想していたよりも、ずっと重く、硬かった。
真子の感知は、殆ど視力の感知であるため、こういう場合は目隠し状態にならざるを得なかった。
不意に顔面に特大パンチを貰った真子は、大きくよろめいた。
威力は殴られるほどではなかったが、面積が広かったため、鼻にぶつかり、目の前が白くなった。
真子は倒れそうになり、瞬間、影の手を目の前の瓦礫に伸ばした。
「真子!」
美鳥の蝶が真子の髪についていて、美鳥の声を伝えた。
「今、フラワーカーが到着して、小百合さんが教えてくれたわ。
鳥の体温は40度あるんですって!」
「え、40度ですか?」
人間なら高熱で死にかけるような体温だ。
「だから鳥類は空が飛べるのよ。
それで、判ったわ。
敵の本体は、やはり目の前にいたのよ!」
「えっ?」
だが、真子は何度も探したはずだ。
「これは、さすがに擬態でも、ちょっと昆虫もしないレベルの擬態の使い手だったの。
カラス、スズメ、ニワトリ、フクロウ、カモメ、アヒル、猛禽類のトンビ、タカに、自分の体を完璧にバラバラにして擬態していたのよ。
体温で探って、初めて36度の奴らがいるのが判ったわ!」
体をバラバラにして、8種類の鳥にそれぞれ変身させ、そして変身した鳥を操っていたのか!
1万の鳥の中に、8羽の鳥に変身した影繰りがいたのでは、さすがに判らない。
だが、真子の周りは、すぐに鳥だらけになってしまった。
スズメ、カラス、にわとり、アヒル、カモメ…!
これでは、仮に透視したにしろ、とても2人を見つけられない。
「真子。
誘導するわ」
美鳥が影の蝶で、真子を誘導してくれた。
「左、30度、前進して!」
美鳥が誘導してくれるのなら通り過ぎる恐れはない。
真子は透過を使い、用心深く歩き出した。
無数の鳥が、真子の目を遮るように飛び回っていた。
足にも、ニワトリやアヒルが歩き回っている。
「そこで右、90度よ!」
真子が直角に曲がって3メートルほど進むと、影を纏って、小さくすくんだ体の大きな女子と、なる程勇気君たちと同じスーツの少女がいた。
真子は影の手を大きくして二人を包むと、
「美鳥さん!
敵はどこですか?」
「そっちは心配ないみたいよ」
へ? と驚く真子の前で、
「ヌーヌー!」
巨大なベージュ色の、漫画のクマさんのような怪物が現れると、真子の周りの全ての鳥が、空中に浮かんだ。
元々飛んでいた鳥たちは、羽ばたくが、その場でくるくる回るだけになってしまった。
「任せたぜ、アイチ!」
あいよ! と叫ぶと、坊主頭の青年が、瓦礫の上をスケボーで疾走してきた。
到底、スケボーはおろか4WDのジープでも走行可能とは思えなかったが、どうやらスケボーごと影を纏っているらしい。
真子は、唖然と青年を見送った。
青年は、なんとスケボーのまま、瓦礫の山を登っていく。
ほぼ垂直の崖面を30メートル近く登ると…。
そこに奇妙なものが浮かんでいた。
体の一部が繋がった、スズメ、カラス、鳩、ニワトリ、アヒル、フクロウ、カモメ、そして猛禽類だ。
影能力なので骨格とかは全く無視し、それらは細い足や羽根の一部でか細く繋がっていた。
その、鳥が繋がった大蛇のような生き物に、アイチはパーに開いた手を突き立てた!
ゲフッ!
鳥が、どうも人間の、女の声で呻いた。
と、同時に女が纏っていた影が解けて、小柄な女が空中に回転いていた。
黒皮のスカートに網タイツ、赤いジーンズの上着と布ブーツの、たぶん綺麗めの女のようだが、ロングヘアーが空中にメデューサのように広がって、怪物めいた外観になっていた。




