103鳥
真子は瓦礫を透視した。
確かに、瓦礫の奥に大柄な少女と小学生の女の子が立っていた。
だが、ただ立っているのではない感じだ。
何かに怯えている、ようなのだ。
なんだ…?
敵がいるのか…?
真子は周囲を見回すが、一見ではそれらしき姿は見えなかった。
真子の話に、美鳥は、
「周囲を探るわ。
迂闊に近づいて、彼女たちを余計な危機に陥らせてはいけないわ。
足を止めて」
勇気と義郎にしてみれば、すぐそこに仲間がいるのだ。
会いたかったが、ユリコに止められた。
「ほら、集団行動をとらなきゃダメだろ」
ユリコが二人を抱えて、抑えてくれた。
そのユリコも、ハマユが心配だった。
あいつが怯えるなんて、どんな化物なんだ?
ハマユは、柔道でもレスリングでも全国を目指せるほどの身体能力の持ち主だった。
ユリコも、素手でハマユと戦う気は起こらない。
スピードや小回りなら勝てるかもしれないが、片手で一斗缶を持ち上げる程の腕っぷしなのだ。
しかも強力な影繰りでもある。
ハマユの影は、全てを凍らせる強烈なもので、およそ物質で通用しない敵はいないはずだ。
仮に真子の影の手のような非物質が相手だとしても、本体は影響を受けざるを得ない。
そしてハマユの影の射程距離は30メートルもあるのだ。
子供を守らなければならない、と言ってもレイナちゃんも強力なナンチャラ団のメンバーで、レイナちゃん自身、男勝りのパワーファイターだったとユリコは思う。
「人間の気配は無いようね…」
美鳥が告げた。
「じゃあ、何だって言うんだ?」
ユリコが聞くと、
「もっと小動物の気配が、大量にある…」
美鳥は説明した。
「小動物?」
勇気が首を傾げるが、義郎が、
「ああ。
レイナは鳥が苦手なんだ。
スズメやハトでも駄目なんだぜ!」
「あ、そう言えば、ハマユも昔、軍鶏に殺されかけて、鳥は鶏肉も食べられなかったな…」
「鳥、いました…!
こんな暗闇にどうして群れているのか、カラス、鳩、スズメ、もっと小さなやつとか、飼われていたような派手な鳥もいるようです!」
鳥と言うと井口のような影の鳥を思い浮かべるが、この敵は生きた鳥を自在に操れるようだった。
「鳥嫌いでなくても、生き物を無下に殺したくないし、それが可愛らしいハトやスズメでは、尚更、攻撃しずらいですね…」
真子は言う。
「でも、鳥って強いのかなぁ…」
勇気は首を傾げるが、義郎が、
「俺と樹怜悧は公園でカラスに襲われたんだぜ。
スゲー怖かったよ!」
と語った。
「ああ、奴ら巣があると必死で襲ってくるからな。
俺も実はカラスは苦手だ」
クロコダイルマンまで言い出した。
が、良治は生憎、そんな感傷は持っていなかった。
「俺が撃ち落してやるぜ!」
「まぁ待って。
数が物凄いようだから、下手に刺激すると、向こうには小さな女の子もいるのよ。
本体を叩くのが最も安全よ」
確かにハマユとレイナは、万単位の鳥に囲まれ、すっかり竦んでしまっていた。
鳥嫌いではなくても、万単位の動物に囲まれたら、誰でも恐ろしいだろう。
この数の野生動物を下手に突っついたら、少女たちの安全の保証はとても出来ない。
「ま…真子…、敵の本体を見つけられないの!」
やや冷笑気味に、美鳥が真子に言った。
しかし、真子の視力では、二人以外に人間を見つけられないのだ。
「見当たらないんです。
美鳥さん、なにかヒントはありませんか?」
「鳥しかいないわね…」
真子たちは唸った。
すぐそばに仲間がいるのは判っているが、万単位の鳥に囲まれて手が出せない。
それを操っている者がいるはずだが、至近距離には見当たらないのだ。
「僕が呼んだ漫画で、動物の超能力者がいたよ」
ユリが語った。
「漫画ねぇ」
美鳥は嘆息し、
「現実には、なかなか難しいでしょうね。
鳥に影繰りがいたとしても、どう人間とコミュニケーションを取るのか…」
真子は烏賊人間を見ていた。
そういう、鳥人間がいればいいのだが、改めて探しても、さすがに人間サイズの鳥は見当たらなかった。
大きさで言えば、ダチョウレベルの大型鳥になってしまい、それだととてつもなく目立つはずだ。
「遠くで操っているんでしょうか?」
真子は言うが、良治が、
「射程が長くなるほど、攻撃は単純になる。
そりゃあ、無理と思うぜ」
なるほど、そんな理屈があるとは知らなかった。
真子の周囲に、良治ほどの長距離射程の影繰りはいなかった。
「擬態なのか…?」
真子は再三、周囲を見渡すが、敵は見つからない。
「ゆっくり近づいたら大丈夫なんじゃないか?」
勇気は、すぐにも助けに行きたいようだ。
「敵影繰りの正体が判らないと、危険よ。
人質が3人になるかもしれない」
と、美鳥。
真子たちは、全く動きが取れなかった。




