102指揮
この辺一帯を一気にせん滅する…。
そんな兵器があるのかどうか真子は知らなかったが、考えてみると腑に落ちる。
烏賊男も動きを止めており、良治に対する長距離攻撃もただ狙っているだけのようだ。
もし、これらが皆、同じ者の指揮による行動ならば、充分、真子たちを引き付けて広域攻撃を企んでいるもの、と思えば納得が出来た。
だが、それがどのような兵器かは判らないが、真子たちが逃げようとすれば、透明人間たちは追えば良いだけだし、発射のタイミングを計れるのも透明人間だけだ。
そうだとしたら、この敵を倒すにはどうしたらいのだろうか…。
美鳥の蝶は、5人の敵の上空に今も飛んでいる。
おおよその位置はつかめているのだ。
真子は、近くの瓦礫に影の手を伸ばし、長めの鉄骨を引き抜いた。
そして、美鳥の蝶の下に放った。
ギャ、という悲鳴が上がったが、まだ透明のままだった。
感触はある。
続けた方が良い、と真子は思った。
違う蝶の場所に、同じように鉄骨を投げた。
これは命中しなかったようで、奥に刺さった。
「俺もやるぜ!」
勇気が三角定規型放電銃を見えない敵に放った。
バン、とこれは敵に命中したらしく、何かが吹き飛んだ。
ユリコは、辺りのコンクリート片を、豪快なフォームで敵に投げつけた。
どす、と鈍い音がして、土煙が上がった。
「へへへ、ユリコさんはピッチャーも経験したこともあんのさ!」
義郎も、半球型のブーメランを投げた。
これが、ギャア、と叫びと共に奥の透明人間に命中すると、5人が一斉に姿を現した。
義郎のブーメランは、まさに兵士の格好をした男の、鉄兜を半分に割って、頭に深々と刺さっていた。
無精髭を生やした、30代か四十代の、大柄な男だったが、そのまま倒木のように倒れた。
5人の前には、目立たぬように艶消し緑に塗装されたデイバックほどの金属の箱が開かれ、互いに配線がなされているようだった。
開かれた箱もあり、それは巨大なノートパソコンのように片側が立っている。
「あれが起動すれば、おそらく周囲一帯には被害が出るはずです!」
真子が言った。
そのノートパソコンの背後の人物は、屈んでいたのか、あるいは開かれたノートパソコンが盾になったのか、まだ無事だった。
まだ若い兵士だ。
彼は必死に機械を操作する。
が、不意に、ぐしゃり、とノートパソコンの上に突っ伏した。
「見えていれば、一撃で仕留められるべ」
福が、呟いた。
「烏賊が逃げたよ!」
ユリは驚いた。
良治も、
「こっちも、不意に敵意が消えたぜ!」
「やはり全員を指揮する人物がいたようです。
彼らは一時撤退しましたが、そのままとは思えません」
「できるだけ、仲間と合流した方が良いわね」
美鳥も言う。
敵は一筋縄ではいかない影繰りを揃えていて、しかも指揮官によって統制を取って行動していた。
「さっき、レディさんの使いが来ていたんですが、ここに呼んできて、と言ってしまいました」
真子が告げる。
「じゃあ、ここにいる方が良いかしら」
美鳥が呟くと、ビルの残骸の上からクロコダイルマンが飛び降りて来て、
「おい、俺も仲間に加えてくれ」
と言ってきた。
「まー、ご覧のように女と子供しかいないから助かるわ」
美鳥が、真子を見ながら言った。
「しかし義郎。
ハマユとはぐれたのはどのぐらい前なんだ?」
ユリコは聞いた。
「そんなに前じゃないよ…」
この状況では、何分前か、等は判らなくて当然だった。空も見えないので、真子も今が何時なのか、予測できないでいた。
「私が捕まったのは、誠と戦う数分前だったわ」
と、なるとハマユたちも、そう遠くにはいないと考えられた。
「美鳥さん、周囲を探せますか?」
「仕方ない、やってみるしかないわね!」
美鳥は、蝶をミサイルの形に固めて、遠くに飛ばすという技を持っていた。
真子たちの背後は土と瓦礫、車の固まった山だったので、3方にミサイルを飛ばす。
と、すぐに、
「向こうに、女の子が子供と一緒に歩いているわ」
ペペの地下道からは離れることになるが、行くしかなかった。
「レディとは、またはぐれちゃうわね」
さしてどうでも良さそうに美鳥は言う。
「いえ、お使いは歩みは遅いけど、きっと僕らを見つけるでしょう。
大丈夫ですよ」
随所に瓦礫の山ができ、異様な臭気が辺り一面に漂っている。
ガソリンの臭いにも、血の匂いにも感じられる、重たい臭気だ。
金属臭とも感じられる。
だが…。
「なぁ、あれだけあった死体が消えてるよね?」
勇気が声を震わせた。
真子たちは、恐ろしい動く死体を見、襲われてもいた。
「くそ!
殺した上に死体まで面白く使いやがって!
殺されても浮かばれないな!」
ユリコが激高した。
「まぁ、今は襲われないだけラッキーだとしか、考えるよりないですね…」
真子は声を潜ませるが、
「女の子たちは、その影よ」
瓦礫が影を作っている。
美鳥は、その奥だと指を差した。




