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シャドウダンス3魔弾の射手  作者: 緑青ゆーせー
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新手

敵が三人ではない場合、この穴の中では真子たちに逃げ場は無い。

そもそもAが人工的に作った空洞だからだ。


ペペに通じる通路まで行けば、と思っていたが、そう考えるようにAが作った餌だ、という場合も考えられる。


と、すると…。


美鳥さんたちや、勇気少年の仲間たちなども、まだ穴の中、という可能性があった。


もし、影繰りを集めるためにこの穴が作られていたなら、美鳥たちも襲われ危機に陥っているかもしれない。

可能ならば、できるだけ仲間を集めAに対抗した方が勝率は高くなる筈だった。


が、今、迂闊に動いて、途端に目の前の3人が襲ってくる、と状況は厳しくなる。

透明人間は福にしか感知できないし、遠距離攻撃の相手は良治にしか判らないからだ。


真子は、烏賊男を攻撃する事は可能だが、それが逆に均衡を崩し、敵の集合を早めては逆効果だった。


なんとか仲間に連絡出来れば良いのだが。


真子が悩んでいると、


(俺、見てきてやろうか?)


颯太が言った。

颯太は、真子の影として振る舞う事も出来るが、元々ただの幽霊なので、射程など気にせず自由に飛び回る事も出来る。


(颯太、透明人間は感知出来ないのか?)


(俺ちゃん、お前を通してのみ、影能力を使える訳よ。

お前から離れたらただの霊だから、影繰りなんて判らんし、透明になってる超能力者なんて判る道理も無いんだよね)


幽霊も万能ではないらしい。


(まー、お前らの見えないものも見えたりはするんだけど、それはこっちの話だから生きてる者には関係ないしなー)


真子も、特に幽霊の日常生活などに興味は無い。


颯太には、周りを見てもらうことにした。

真子の戦闘能力は下がるが、仕方がない。


真子とユリコは、良治に最も近い場所に立っている。

ユリは、数メートル離れて立っており、福とは、十メートル離れていた。


真子は、確かに地中に留まっている烏賊男を確認し、必要ならいつでも落とそうと思っていた。

そもそも地下にいるので、特に誰に見られることもなく透過が使えた。


ただし、それでユリの戦略が狂ってしまったら仕方ないので、今、いたずらに戦闘に介入するのは差し控えた方がいい。


あと、真子に出来るのは、周囲を見て、新手が潜んでいないか確認するぐらいだ…。


真子は周囲に視線を配り、背後、つまり何台もの車を飲み込んだ土壁、から飛び出してくる小さな影を見た。


同時にユリコも気づいたらしかったが、真子の方が近かったので、飛びかかってくる小さな影を迎え撃った。


それは弾丸のように突っ込んでくる、勇気よりは頭一つぐらい大きな、目方はずっと多そうな子供に見えた。


真子は牽制にパンチを放ったが、獣のように俊敏に、子供は真子のパンチを避け、真子のヘソの辺りに強烈なアッパーカットの一撃を放った。


げほっ、と真子は踞る。


よく影が纏えていなかったのか?


真子は踞りながら慌てるが、敵前で足をついてしまったら、もう抵抗のしょうがない。


やられる!


と、真子の全身に恐怖が走ったが、


「こい!

チビ、俺が相手だよ!」


とユリコが前に出てくれた。


しまった…。


ユリコさんは、まだ足が完全じゃないのに…。


と、真子は思うが、ダメージは強力で、真子は立ち上がれない。


ユリコは、うまく前進して、真子を安全圏に置いてくれた。


くそ…、しばらく颯太がいたから、常に影を纏うのがおろそかになっていた。

颯太なしの誠は、まるっきり運動能力の無い、弱い男子だった。

だが、常に影を纒い、全て頭で考えて操れば、人並みな動きもなんとか可能だったのだが、最近は颯太がいてくれたので、すっかり気を抜いていた。


真子は踞りながら、自分の腹部を透視した。


内蔵が炎症を起こしていたが、腸がダメージを受け止めてくれていた。

奥の脾臓などの臓器にはダメージは無いようだった。


腸の炎症を治しながら、真子は、颯太がいないと途端に弱くなる自分を恥じていたが…。


敵は…、一人って事、あるだろうか…。


不意に思っ至った。


増援は、たぶん一人ではない筈だ…。


急いで腹部を癒し、真子はよろめきながら立ち上がった。



視線に飛び込んで来たのは、驚愕の映像だった。


黒い蝶が、辺りを飛び交っていた。


(誠、どうやら他人を支配する影繰りがいるらしいぜ…

お前の大好きな美鳥さんも、それにやられている)


颯太が報告してくれた。


真子はしかし、颯太が戻ったことに、ホッとしていた。


が、颯太はケケッと笑い、


(お前、弱いな~)


見られた…。


暗澹と真子は思った…。

元々、爽太は誠と同じ程度の駄目男子だったが、幽霊になったことで人間時代とは雲泥の差の身の軽さを会得したのだ。


だが、同級生時代、ある意味同格だった相手に、明確な実力差を見られてしまうのは、誠のプライドを大きく傷つけた。


(まー、俺ちゃんがいれば、あんなの訳は無いけどなー)


とかなり嫌みに誠を嘲って、


(お前は、どこかに隠れてる、敵の本体を探してろよ)


言うと、爽太は真子の体を駆使して、美鳥との交戦に移った。


驚くほどスムーズに動く体に、真子は嫉妬と屈辱を感じながらも、敵を探した。


真子には、影の手足の他に、影の体の一部として、影の視力もある。


それを使って、辺りを探す。


だが、見つからない。

透視し、くまなく辺りを探しているのに、敵が見えなかった。


視線を感じた。


上?


土壁の上を見ると、真子の頭上十メートルほどの車の中に、小さな影が見えていた。


えっ、あれは…。


あれはたぶん、誠が本部で捕まえたホムンクルスに間違えなかった。

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