51話 サンドライトとロザリアセベス2世
サンドライトとブラーセルが宰相の馬車に乗り込み王宮に向かった。
門から王宮迄2キロ以上離れてるらしく、遥か遠くに王宮が見える。
宰相は改めて衛兵達の態度を謝罪してきたが、サンドライトは逆にこちらこそ衛兵達に申し訳ないことをしたと謝った。
宰相に今回の訪問の理由を告げその後雑談をしてるうちに馬車は王宮の玄関先に到着した。
王宮の玄関口を通ると、豪華で立派な玄関広間が目の前に広がっている。
玄関広間の両際には使用人達が30人程と衛兵30人程待機している。
サンドライトが緊張していると、1人の男性が目の前に来て両足を揃え片手を胸に当て一礼をし、貴賓室に案内された。
貴賓室の扉を男性がノックし、中から返事が有り、「アレクサンドライト様、国王様が中でお待ちです」と言われ、扉を開けられ中に招かれた。
玄関広間も豪華絢爛だったが、貴賓室は更に立派でサンドライトは思わずため息を付いた。
「流石中央大陸を収めた王宮の貴賓室だ、広くしかも豪華で全てが凄すぎる」
サンドライトは改めて、自分がとんでもない方と会っていると実感した。
「アレクサンドライト殿ようこそ、ロザリア宮殿へ」
貴賓室の扉が閉められるとロザリアセベス2世が両手を広げ向かい入れてくれた。
国王とサンドライト、ブラーセルはお互い挨拶を交わし席に付いた。
国王はブラーセルが聖獣のブラックドラゴンと知り、改めて自分の気を察知する力は衰えてないなと嬉しく思った。
サンドライトは此処に来た理由を話した。
国王は黙って話を聞いている。
サンドライトは、ガリズバリー辺境伯に大変良くしてもらった事、思いもよらない高待遇で開拓地の運営を任された事、辺境伯の期待に答えるよう頑張る事、貴族は字を読めるが、平民も字が読めるようにしたい、皮紙より安い紙を作る事、本等も書き写しでなく、印刷という技術で沢山同じ本を作る事、甘くてほろ苦い菓子や、甘くてしばらくなめていられる菓子を作る等、今後の計画を話した。
現在ランズベルク国首都ズレイのケリー商会を通して、サンドライトの故郷リーゼで母親の工房で作った固形石鹸を販売しているが、石鹸工房の基盤がしっかり整い量産が可能になり、ケリー商会が辺境伯に本境地を移し終わる頃、2年前後を目処にランズベルク国の主力産業にしたいと話し、リーゼの石鹸工房をそのまま拡張し、サガン国では固形石鹸は製造せず、他の産業を発展させたい事を話した。
「あの固形石鹸は南大陸から来たものではないのか?」
「はい、固形石鹸を作り出しているのが母の工房だと知られたら面倒なことになりそうでしたので、南大陸から交易した商品という事にしてもらってます」
「そうか、しかしアレクサンドライト殿は凄いな、先程の計画内容と言い博識すぎるな」
国王は余りのサンドライトの知識の広さに驚いていた。
そして辺境伯から頂いた、交易許可証と束縛介入不許可免状をロザリアセベス2世国王からもいだだけなか相談した。
国王の表情は優しく、サンドライトの話をうなずきながら聞き、希望の書状を出すと約束した。
その後お茶を飲みながら話をした。
「アレク殿とよんでいいかな?」
「お好きなように呼んでいただいて結構ですが、殿ではなく君で結構です、陛下」
「本音で尋ねるが、何故グルバリア国内では無く、ランズベルク国やサガン国にアレク君は商業、産業の拠点を築こうとしてるのか気になるのだが?」
「もちろん、私とアレク君だけの話だから、不敬とか言わないので正直に話して欲しい」
「閣下、無礼な発言をお許しください、確かにグルバリア国内は中央大陸で一番発展しております」
「グルバリア連邦王国を繋ぐ石畳道路、関所廃止と商業、産業発展に力を入れてらっしゃることは理解してます」
「しかし、急激に人が集まったためなのか、街が不衛生になっております」
「このまま放置しておられたらいずれ、グルバリア国内の街は疫病が蔓延してしまうのではないかと考えています」
「こう言っては失礼ですが、グルバリア国内より他国の民の方が働き場所がなく、戦争未亡人、戦争孤児、戦争で怪我をして働けなく貧困にあえいでいるように思いました」
「僕は少しでも、飢える民を減らしたいと考えた時、グルバリア国以外の同盟国、属国を発展させたほうがグルバリア連邦王国のためになると考えました」
「うむ、耳が痛いがアレク君の申すとおりだが、不衛生となんだろうか?」
「はい、衛生とは、健康を守る、病気を予防するために清潔にするという事で、不衛生とは、不潔と言う意味です」
「グルバリア国内は急激な人口増で街は清潔な状態ではないです」
「清潔でないと体に害をなす目に見えない悪いものが増え、それが健康を害したり疫病が発生する原因になります」
「例えば、排泄物等は街に置き場を何箇所か作り、それを毎日回収して街から外れた森に穴を掘り埋めるとか、街の中に下水という排泄物を街の外まで流す水路を作るとか対策方法は有ります」
「排泄物は土に混ぜることに寄って、作物の栄養になりますから、回収した排泄物は匂いが薄くなったものを畑の土に混ぜることで、作物の収穫量も増えます」
「ほお?清潔にしたら病気になりづらいとか、排泄物が作物の栄養になるとか初耳だが何処でその話を?」
「清潔にしたら病気になりづらいのは、僕が故郷の田舎で育ったために気がついた事です」
「故郷では、ロザリアの街のような鼻につく匂いや喉が痛くはならく、目も刺激を感じはしなかったのです」
「故郷ではロザリアの民のように咳き込んでいるもの、匂いで具合の悪くなるものはいませんでした」
「陛下は固形石鹸を知っていらっしゃいましたが、使われたことは有りますか?」
「うむ、あれは良いものだな、風呂に浸かった時や体や髪を洗うのに使うと、さっぱりして匂いも取れて気持ちがいい」
「陛下、まさにその通りです、清潔になるという事は気持ちのいいことなのです」
「不快な匂いも不衛生だからで、清潔にしていたら不快な匂い、喉の痛みも無くなります」
「排泄物は、故郷で畑の側に穴を掘り排泄物を土と混ぜていたら、その側の植物の成長が良く、試しに翌年に排泄物を埋めた土を畑の土に混ぜたら、作物の収穫量が増え、翌年も翌年も収穫量は有りました」
「なるほど、アレク君の話は納得がいくな・・・衛生か・・・街を清潔にする・・・うむ」
サンドライトは、前世の記憶とは言えないので、実際、両親を納得させるために故郷で実験した内容を話した。
真実が3割あればその嘘は本当になると言われるが、まさに今国王はサンドライトの話を信じた。
「アレク君はそれだけの知識があれば、国を作りたい、国を支配したい、国を治めたいとは考えていないのかな?」
「僕は、敢えて国を統治したいとかは考えたことは有りませんし、その様な事は僕には無理です」
「陛下の前で言葉は悪いですが、人を支配するというのが性格的に無理なんです」
「だからこそ僕は、陛下を尊敬しております」
「アレク君褒めてくれてありがとう」
その後も茶を飲むながら談笑はしばらく続いた。
これから国王と合う時は、王宮玄関側に転移して良いと言われ、一応念の為、ロザリアセベス2世国王の書状を貰い、玄関前でこの書状を衛兵に見せる事にした。
国王は久々に為になる会話が出来たと心から喜んでいた。
王宮玄関広間迄サンドライトを見送り国王は書斎に行き少し考えていた。
アレク君は凄すぎるな、あの少年なら直ぐに国を作れるだろうに、だが彼は支配欲がない。
しかも、彼の話は私の側近の私利私欲にまみれた話より参考になった。
下水、排水、排泄物の処理早速検討しないとな。
出来れば、清潔な、いや、衛生的な街を作り民を健康にしなくてはな。
そして出来れば、アレク君がこの国でも産業を発展させてくれるような街づくりをしなくてはな。
国王が書斎で考えていたその頃、王宮の門の前では、サンドライトに絡んでいた4人が、止めに入った上司2人に、いかに身の程知らずな行為をしたか説教されていた。
戦場で武勲を上げた上司2人が、あの少年と初老の男性の気に心底怯え恐怖したのかを説明されて、4人は今更ながら命拾いして良かったと心から思った。
サンドライトとブラーセルはセシリア、ランゼム、キューレリーの待つ辺境伯開拓地の途中の森に転移した。
月間300位以内に1度は入ってみたいので、もし宜しよろしければ評価して頂けるとうれしいです。




