50話 サンドライト、ロザリア王宮に向かう
ガリズバリー辺境伯に与えられた開拓地に向かって、サンドライト達は馬車で移動している。
転移はサンドライトが訪れたことの有る場所でないと使えない。
辺境伯と前日話をしたが、此処まで開拓地の条件を飲んでもらえるとは思ってなく、サンドライトは今更だが与えられた好条件に驚いている。
昼頃、馬を休ませてる間に(【ヒール】で肉体的疲労は回復してるが、馬の心的回復のため)グルバリア連邦王国国王ロザリアセベス2世に、開拓地のサンドライトの街に関する他国との交易許可証、束縛介入不可免状を頂けないか願い出るために、ロザリアの迎賓館前にブラーセルを連れて転移した。
ブラーセルとキュウレリーが二人とも付いてきたがったが、今回はキュウレリーとセシリア、ランゼムに馬車での留守番を頼んだ。
攻撃力的に何かあっても、ブラーセル、キュウウレリーどちらか1人居たらセシリア、ランゼム、馬車は安全と考え、サンドライト的に、ブラーセルよりキュウレリーの方が理知的に判断して行動すると考えたからだ。
キューレリーは渋々了承したが転移直前に、
「うちも付いて行きたかったなの!」
と叫んでいたが、サンドライトは聞かなかった事にした。
サンドライトとブラーセルはロザリアセベス2世の住む王宮には行ったことがないため、以前招かれた迎賓館の側に転移し、王宮とは3キロほど離れて居るため、サンドライトは自分とブラーセルに身体強化を唱え走った。
王宮の門の横の衛兵の待機所の中に4人待機しており、門の前に2人の衛兵が立っている。
歩いて王宮の門の前に居る2人の衛兵に国王への謁見を願い出る。
「お前たち、紹介状は持っているのか?」
「いえ紹介状は持っていませんが国王様に、なにか相談があれば何時でも王宮に顔を出すように言われています」
「はははは!俺は何年も前から門番を任されているが、お前のような小僧を見たこともないわ」
「はい、王宮に僕は来たことは有りません。以前お会いした時は私が居た迎賓館に国王様が会いに来られました」
門の前に居た衛兵2人は目の前に立っている2人をまじまじと見る。
一人はまだ成人したばかりの様な、女子みたいな綺麗な顔の背の低い少年で、今まで見たことのない濃紫色の髪、一房だけ銀髪のセミショートで前髪を掻き上げ白金のカチューシャをし、両サイドの髪は降ろしている。
両手には金色の高そうなバングルを嵌めている。
もう一人は、黒髪をオールバックにした背の高い痩せ型の端正な顔つきで礼服を着た執事の様な男だ。
衛兵は一瞬この2人は高貴な者なのかと思ったが、2人だけで護衛もなく、馬車ではなく徒歩で門の前まで歩いてきた。
しかも、中央大陸の覇者である現国王に足を運ばせたと言い出してきて、自分の主を馬鹿にされた様な感情が対応している衛兵に湧き出てきた。
「はははふ、ざけたことを言う小僧だ!お前に逢うために国王様自らが足を運んだというのか!」
「グルバリア連邦王国のロザリアセベス2世国王様が、何故お前ごとき小僧に会いに行くというのだ!」
「国王様は謁見のため王宮に客を呼ばれることはあっても、わざわざ客のために足を運んだ等聞いた事ないわ!」
「お前はそんなに偉いというのか?小僧! 中央大陸の覇者の国王様よりお前の方が偉いと言うのか!」
「国王様を馬鹿にしおって!」
「小僧!お前を不敬罪で拘束する!」
門の前に居た衛兵がサンドライト揉めていると衛兵の控え所に居た4人も飛び出してきた。
飛び出してきた衛兵の内2人は先に居た衛兵の隣に行き、もう2人は4人の衛兵とサンドライト達の間に駆け込み、サンドライト達に背を向け、衛兵達に向かい合う形で止めに入った。
サンドライト達に背を向けた2人の衛兵は焦っている。
「何故目の前の衛兵4人はこの気に気づかないんだ!」
「初老の男は敵意、否、死の宣告を告げる気を放っている!」
「その死を司るような気を放つ者を止めている、少年の気は更に凄すぎる!」
「国王様を凌駕する気を放つ目の前の少年!何故4人は気が付かないんだ!」
衛兵4人を止めている2人の衛兵は心で叫びながら、生きた心地がしなく、体全体に冷や汗をかき震えていた。
止めに入った衛兵2人は半分死を覚悟していた。
背後から感じる死神のような気配とそれを止めようとしている強大な気、2人の衛兵は気持ちが折れそうだった。
2人の衛兵は恐怖で涙を流しながらも、目の前に居る4人の衛兵を止めている。
止めに入った2人の衛兵を見て、サンドライト達を不敬罪で捉えようとした4人の衛兵もまた戸惑っている。
「目の前に居る2人は自分達より階級が上で、剣術も凄い猛者と言われてるのに、何故顔色を青くして間に入ってきたのだ?」
「この2人は戦場でも活躍し昇進した上位階級の者が、何故涙を流し震えながら俺達を止めてるんだ」
「たかが餓鬼1人と爺1人に何故?」
衛兵4人は心でそれぞれ思いながら何が起きてるのか理解できなかった。
その時背後から、馬車が来る音が聞こえる。
王宮の方向から1台の馬車が走ってきた。
よく見ると宰相専用の馬車がこちらに向かって走ってきてる。
宰相専用の馬車がサンドライト達と衛兵達の横に止まり、馬車から宰相が降りてきた。
宰相は驚いていた。
まさか本当にアレクサンドライト殿が居るとは・・・。
「宰相、アレク君と聖獣様1人の気がどんどんこちらに近づいているようだ」
「本当なら儂が迎えに行きたいのだが、国民や他の者の目も有るから迎えに行ってくれ」
「門で衛兵と揉めると大変だから至急動いてくれ」
宰相は国王に言われて直ぐに動いたが半信半疑だった。
国王は気を感じたと言うが、自分は全く感じていない。
目の前ではアレクサンドライト殿と初老の男性、多分この方が聖獣様2人の内のどちらかだろう。
向かい合う様に4人の衛兵が居て、その間に2人の衛兵が4人に向かい合い止めてる状態であった。
宰相の額から汗がこぼれた。
止めに入っているであろう2人は武勲を上げている者だ。
やはりある程度の力有るものは気を感じることが出るるのであろう、気を感じれない自分を少し歯がゆく宰相は思った。
「衛兵達よ!アレクサンドライト殿から離れよ!」
「アレクサンドライト殿!よくぞ参られました、国王様がおまちですぞ」
今はそれどころではない、宰相は直ぐに衛兵達とサンドライトに声を掛けた。
宰相に声を掛けられ、衛兵達は焦った。
何故宰相は目の前の少年が王宮に訪れたことを知ったのか不思議に感じた。
普通は門番が待機所に報告して、その後衛兵が馬で王宮に報告に行き判断を仰ぐのが基本だから。
衛兵達4人は宰相の青くなって焦っている表情を見て、自分達が目の前の少年にとんでもない対応をしていた事に気づき今更ながら焦った。
止めに入っていた2人の衛兵は、助かったと安堵の気持ちになり、その場にへたりこんだ。
サンドライトもまた、ブラーセルが何時爆発するか分からず、落ち着かせるのが精一杯だったので、宰相が訪れて気が楽になった。
「アレクサンドライト殿とそちらの御仁、門兵が至らぬ対応をして誠にすみませぬ」
「それと兵たち、お前達にはアレクサンドライト殿の事は説明しておらなかったから、今回の件は不問に致す」
「アレクサンドライト殿、今回はこの様な対応でよろしいでしょうか」
「宰相様、門を守る衛兵としては当然の対応だと思うので、気にしないでください」
「衛兵の皆様も気にしないでください、今度から通行証か書状を提示出来る物を頂ける様、国王様にお願いいたします」
サンドライトの言葉を聞き、安堵した衛兵6人全員は、膝を付き片手を胸に当てお辞儀しサンドライト達に敬意を評した。
その後サンドライトとブラーセルは宰相の馬車に乗り込み、王宮に向かった。




