37話 サンドライト自覚する
ロザリアにある迎賓館の一室で、サンドライトは物思いにふけている。
生前彼は、一流企業で31歳にして異例の課長昇進をしたが、死ぬ直前の48歳まで課長のままだった。
同期で出世頭と目されていたが、45歳を過ぎた頃同期が先に部長に昇進。
鈴木茂は、昔から一つの事に夢中になる性格で、会社員になってからは仕事に生きがいを感じ、仕事に重きを置いたため、彼自身は心から妻を愛していたが、行動で示すことができず、その思いは伝わる事は無かった。
鈴木茂は若い頃から様々なプロジェクトに参加しては、成功をおさめていた。
上司、上役にも恵まれ「鈴木は、環境を整えたら抜群の視野、感覚で物事を整理、発想、構築する能力が抜きん出てる」と言われていた。
環境を整えると言われていたのは、鈴木茂が対人関係で疑うという事を知らないんじゃないかと言う位ピュアな性格で、人を疑う、陥れる、責任をなすりつける、恨む、無責任な嘘をつくという事が出来ない性格だった。
そのため、課長昇進後は、派閥争いに当然巻き込まれ、自分のプロジェクトが利用されたり、掻き回されたりされ、プロジェクトが失敗するときは、責任者が上司でなく自分になっていたり、成功した時は自分が責任者のだったが、いつの間にか別の人間が責任者になっている事が多々あり利用されまくっていた。
しかし降格される事はなく、常に利用され続けていた。
鈴木茂はそれでも、仕事に夢中になれプロジェクトが成功したら、それで満足であった。
出世は出来なくても、会社の役に立てるならそれで良いと。
そして、愛する人が自分の元から去った寂しさを、仕事にしかぶつけれなかった。
鈴木茂に好意を抱いてる上司、上役、部下はそんな性格が好きでもあり、弱点でもあると常日頃「鈴木は周りをもう少し疑い、警戒心を持て」と言われていた。
鈴木茂は別に今まで通りでも、命を奪われるわけじゃないですから、と気にしていなかった。
そして転生後は、両親が愛情を注いでくれ、愛されて育った。
サンドライトは、その愛情を嬉しく思い、受け身のまま流されてしまった。
気がつけば、生前より人に流されやすくなり、自分の考えを主張しない性格になっていた。
そしてサンドライトは今回の事件を考えていた。
自分がもう少し考えを巡らせていたら、漆黒の翼のメンバーはこんな結末にならなかったんじゃないかと。
受け流されるのは楽だが、後悔するのは前世だけにしたいと考え始めた。
両親に狡猾だなと思われず、両親に愛され続けたかった。
自分で考えず、守られてるのが心地よかった。
サンドライトは考えた。
前世では自分の性格でも殺される事はなかったが、この世界では、甘い考え行動対応は死を意味する。
利用され、騙され、捨てられる、殺される、監禁されるのが当たり前の世界だ。
奴隷も当たり前のようにいて、その日飯にありつけない者も居る世界だ。
前世の平和な日本に居る甘い考えは捨てないといけないな・・・。
「ふふふふふ、本当に僕は考え方が幼かったな」
サンドライトは自分が生前48歳の社会人であり、現在は独り立ちした成人だったことを自覚し笑った。
今までは、リーダーがいて、ママがいて言うことを聞けば楽だったけど、今度は僕がリーダーだ。
甘い考えは自重し、責任を持とう。
セシリアも、ランゼムさん、ケリーさんも僕に付いて来てくれると言ってくれている。
ならその仲間達の人生も僕が責任を持たないと。
サンドライトは自分の顔を両手ではたき、皆の居る応接間に向かった。




