23話 最高の誕生日⑤
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少し時間がたった頃、サンドライトは九尾に寄り掛り寝ていた。
精神的に疲れてたのだろう。
ブラの奴が我に話して来たのじゃ。
「主はこの世の中に絶望して、死にたがって居るのだ」
「主は心が折れて死にたいのだが、自殺だと母親が悲しむから、
全力で我らに挑み殺されるつもりだったのだ」
我は、話を聞いて驚いたのじゃ。
これ程の力を持つものが、人間ごときに心を壊されそうになっているとは許せぬのじゃ。
ブラの奴が、主殿から聞いた、冒険者として活動した2年間の話、そしてつい最近の出来事、そして今日、主殿に起きた出来事を話したのじゃ・・・。
何と言う話じゃ。人間共とはそこまでする生き物なのじゃな。
許せんのじゃ。ここまで邪気の無い主殿の心を傷つけるとは許せんのじゃ。
ブラの奴も頷いていたのじゃ。
ブラの奴から、主殿の人となりを聞いたのじゃ。
ブラの奴は我が唯一心を許せる友じゃから全て信じられたのじゃ。
少し経ち、主殿が目を覚ましたのじゃ。
「ご主人様、ぼくは使獣ですが、ご主人様の友ですよ」
「主殿、うちも使獣だけど、主殿の友なの」
儂達がそう話すと主が泣いた。大声で泣いた。
凄く嬉しそうな顔をして、主は儂たちを両腕で抱え泣いていた。
儂も九尾も泣いていた。もちろん血の涙ではなく普通の涙を流して。
其れから、色々主と話をした。小さい頃から冒険者になる迄の話、儂や九尾の今までの話など。
話をしてる途中から主の笑い声がたびたび聞こえてきた。
「ところで、ご主人様、腕に付けてるバングルの紋章は西大陸の大国セルベスの物ですよね?」
「でも、頭に付けてるカチューシャの紋章は西大陸の大国サルザールのものですよね?」
「サルザールとセルベスは200年以上前から敵国同士なのに、ご主人様は敵対してる2大大国の品をどうして一緒に付けてるの?」
儂は主と会ってずっと気になっていたのだ。
中央大陸と西大陸は随分と離れてて、主の付けてるバングルも、カチューシャも、儂から見ても立派な品で、しかも昔から対立してる大国の両方の紋章の品を持っていて、しかも一緒に身に着けてるのが不思議だったのだ。
「これね、パパがセルベス元第2王子で、ママがサルザール元第一王女だったて」
「パパとママは西大陸に居ても2人は結婚できないから、中央大陸に駆け落ちして平民になったんだって」
儂と九尾は二人で大笑いした。
主も主なら、親も親だった。常識外れ一家だった。
僕は今まで誰にも言った事の無い、パパ、ママの秘密をブラちゃん、九ちゃんには素直に話せた。
元のパーティーメンバーの誰にも話したことはない。
今朝あんな事が有ったのに、人間不信になる直前位心が痛んだのに、この二人は心が許せた。
今は死なないでもう一度、人生を楽しめれるかもという気持ちになり始めてる。
二人に会って殺してもらおうと思ったのに、今では生きたいとさえ思ってる。
なんだかおかしくなってきちゃた。
「ふふふ」
思わず笑ったらブラちゃん、九ちゃんも笑ってた。
主の顔に笑みが戻り、儂も、九尾も自分の事の様に嬉しくなった。
「ところで、九ちゃん、素敵な名前だね」
儂が嬉しそうに言う。
「ブラちゃんの名前には敵わないなの」
我は言い返したのじゃ。
ブラちゃん、九ちゃん、2人の額の横に怒りマークが見える気がした。
僕は慌てたけど、こんなに楽しい日はここ最近無ったから、すごく楽しくなっていた。
二人共僕を本当に心配してくれてるのが伝わってきた。
なんかママ、パパと一緒に居たときみたいだ。
何だろう、この安心感。
「僕、生きてていいのかな?」
つい、僕は声に出してしまった。
「ご主人様は死んではダメな人だよ」
「うん、主殿に死なれたら、うちは悲しくなるなの」
「ブラちゃん、九ちゃん」
僕は、ブラちゃん、九ちゃんに出会えて本当に良かったと思う。
状況はどうあれ、精神的に極限に追い込まれた三人。
一人は死にたいと精神的に追い込まれ、二人は生きたいと精神的に追い込まれた。
三人は此処まで精神的に追い込まれた事は一度も無かった。
極限近くに追い込まれた三人、極限近くを見た三人
三人には言葉では言えない何かで繋がっていた。
この後、ブラちゃん、九ちゃん、二人共僕と一緒に旅をすると言ってくれた。
使獣だから僕が死ぬ迄一緒らしい。なんか嬉しく思った。
「ぼくは今、ご主人様の使獣になってよかったと思ってるよ」
「うちも、主殿の使獣になって良かったと思ってるなの」
二人共ありがとう。
懐中時計を見たらまだ25日の午後3時だった。
今日の朝は人生最悪の誕生日だと思ったけど、今日はもしかして最高の誕生日かもしれない。
「主殿、その金色の丸いのは何になの?」
九ちゃんが、懐中時計が気になったらしい。
「ママから貰った、懐中時計と言って時間が正確にわかるものだよ」
九ちゃんも、ブラちゃんも、こんな小さい時計は初めて見たらしい。
九ちゃんブラちゃんの話だと、大きい物は何ヶ所か、教会や大きい街の広場で見た事が有るだけだという。
朝から気持ちに余裕がなくて忘れてたけど、ロザリアのギルド長に呼ばれてるのを思い出した。
その事を二人に話すと、また何か不愉快なことが起きると言われたが、
「二人が仲間になってくれたおかげで、僕は気持ちを強く持てた。」
「たとえ不愉快なことが待ち受けてても、二人が僕を信じてくれてるなら怖くない」
二人とも頷いてくれた。
「ご主人様ぼくの背中に乗って」
儂がそう言うと主が背中に乗った。
九尾も背中に乗った。
「おい!九!お前迄乗れとは言ってないよ」
儂が怒ると
「ブラのケチ!女性をいたわってなの、乗ったって減るもんじゃないなの」
九尾の奴は降りる気がないらしい。
主も、笑顔でもふもふだと喜んで九の奴にしがみついてるので良しとするか。
こうして儂は背中に主と九を乗せてトゥバイス山脈にある、フオックスネスト山頂からグルバリア王国の首都ロザリアに向けて飛び立った。
フオックスネスト山から飛び立って間もなく、僕の頭に【テレパシー】でセシリアの声が頭の中に聞こえた。
『アレクごめんなさい・・・アレクごめんなさい・・・アレクごめんなさい・・・・』
弱弱しい、セシリアの声が聞こえた。
『セシリアどうしたの?』
僕は心配になりセシリアに確認の言葉を伝えた。
『・アレクごめんなさい・・アレクごめんなさい・アレクごめんなさい・アレクごめんなさい』
『セシリアどうしたの?』
『アレクごめんなさい・・・アレクごめんなさい・・・アレクごめんなさい・・・・』
『セシリアどうしたの?』
何度僕が言葉を送っても会話が成り立たない。
僕は嫌な予感しかしなかった。
直ぐにブラちゃん、九ちゃんに【テレパシー】で今あったことを伝えた。
『何でそこまで心配するなの?主殿を追い込んだ一味なの』
『セシリアは直接は助けてはくれなかったけど、一度も僕を非難したり悪口を言わなかった、最後迄僕を名前で呼んでくれていた仲間なんだ』
『ご主人様は優しすぎるけど嫌いじゃないよ』
『主殿が仲間と言うなら様子だけは見に行かないと駄目なの』
【索偵】でセシリアの位置を確認したら、まだウルフネスト山に居た。
あの出来事から未だ7時間位しかたっていないから当然か。
僕と九ちゃんを乗せた、ブラちゃんはウルフネスト山に向かった。
『主殿、ウルフネスト山頂にワイバーンの群れが沢山向かってるなの』
『ご主人様、ワイバーンが、あの山頂近くに餌が沢山あると仲間を呼んでいるよ』
『ブラちゃん、九ちゃん僕は先に【エアー】で飛行していく!』
『ご主人様分かった!ぼくは、ワイバーン共を蹴散らしておくよ』
『うちも、【フライ】で追いかけるなの、ブラの奴が追い払えなかった雑魚を追い払うなの』
『二人ともお願いするね』
『セシリア!今君を助けに行くからね!』
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