22話 最高の誕生日④
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退屈じゃのう
我は何時もの様に退屈すぎて、うつらうつらしてたのじゃ。
突然凄いプレッシャーが我を襲ってきたのじゃ。
な!なんなのじゃ!なんなのじゃ!この凄ざましいプレッシャーは!なんなのじゃ!
我は慌てこの気を放つ者の方に、我の最大の気を放ったのじゃ!
しかし、我の最大の気を跳ね返して、先程のプレッシャーを何倍にもした、今まで受けた事の無いプレッシャーが襲ってきたのじゃ。
こんな凄い強大なプレッシャーは初めて受けたのじゃ。
我の生涯のライバル、ブラックドラゴンでもこれ程の気は放てないのじゃ。
我はポッキリと心が折れたのじゃ。
どの様な者がこれ程の気を持っているのじゃ!
その者がすぐそこまで来た気配がしたのじゃ。
我は心から怯えた、この九尾が心の底から怯えているのじゃ。
我はもう恐怖の限界じゃった。
気が付いたら、身体が勝手に服従のポーズをしていたのじゃ。
屈辱なのじゃ。この九尾がこの服従のポーズを取るのは屈辱なのじゃ・・・
目の前には年端も行かぬ子供がいたのじゃ。
我のライバル、ブラックドラゴンの奴の背中に乗っていたのじゃ。
ブラックドラゴンの奴は満面の笑みを浮かべてるのじゃ。ぐぬぬぬぬ!
しかし恐ろしい強大な信念を感じるのじゃ。
我の心が叫んでる、震えてる、この者に逆らえば駄目なのじゃと。
「ヒール」
子供がそう唱えたのじゃ。
その途端、我の傷つき、千切れ、捥げた尾が元に戻ったのじゃ。
300年前の戦いで潰された片目も、遥か昔切られた腹の傷や変な方向に折れ曲がった前足が、
しかも、遥か昔から悩まされた、腰痛、関節痛迄治ったのじゃ。
我の体全部が回復したのじゃ。
遥か昔に【ゼタヒール】と言う最高の治癒魔法があるらしいと聞いたことがあるのじゃ。
欠損した部分、腐った部分、身体の殆どを無くしても命さえあれば元に戻せると言われてる、
伝説の治癒魔法。ありえない効果の魔法なのじゃ。
まさにこれは【ゼタヒール】なのじゃ。
我は伝説の魔法を直に使われて驚いたのじゃ。
本当にこの様な魔法が存在したのじゃな。
しかし我の耳には「ヒール」と聞こえたのじゃ。
子供に聞き直したが自分が唱えたのは「ヒール」だと答えたのじゃ。
訳が解らないが、この子供から受けた強大な気を考えると、
ああ、この子供なら、【ヒール】で【ゼタヒール】を発動出来るのかもしれないのじゃ。
この子供は常識外じゃ。この子供には、この世界の常識が通じないのじゃ。
我は呆れた表情でこの子供を見た。
ブラックドラゴンの奴も同じ表情をしておるのじゃ。
我は身体を完全に治してもらったお礼を言ったのじゃ。
「そんな事どうでもいいから、僕と早く全力で戦ってよ!」
突然この子供がとんでもない事を言い放ったのじゃ。
何を抜かしておるのじゃ。無理じゃ。許すのじゃ。おぬしとは戦いたく無いのじゃ。
「おぬし、われの態度を見てわからんかの? 降参しておるのじゃ」
我は恐怖に震える心を押し殺し覚悟を決めて話したのじゃ。
我の心と体は初めての恐怖で震えていたのじゃ。
絶望した表情で突然子供が、我を先程恐怖させた気の更に何十倍の気を放ったのじゃ。
無理じゃ。無理じゃ。無理じゃ。無理じゃ。無理じゃ。無理じゃ。
許すのじゃ。許すのじゃ。許すのじゃ。許すのじゃ。許すのじゃ。
殺さないでれなのじゃ。殺さないでくれなのじゃ。
もうこの子供には逆らえん、敵わん。我のプライドが粉々になった瞬間だったのじゃ。
我は未だこの世界で色々見ていきたのじゃ。死にたくないのじゃ!死にたくないのじゃ!
死にたくないと思う一心で 気が付いたら 小さな体になっていたのじゃ。
我は未だ死にたくないのじゃ。
余りの恐怖で我は人生初めての失禁をしてしまったが、そんな事はどうでもいいのじゃ!
生きたいのじゃ!生きたいのじゃ!生きたいのじゃ!生きたいのじゃ!
生きたい一心で何とか言葉を口にしたのじゃ。
「うち、善良なきゅうびなの」
子供はまだ絶望したような顔をしたままだった。
我はやばいのじゃ。やばいのじゃ。やばいのじゃ。
生きてられる気がしないのじゃ。
「九ちゃん」
子供が我に向かいそう言っのじゃ。
・・・
我の名前が「九ちゃん」に決まった瞬間だったのじゃ。
ブラックドラゴンの奴が、今まで見た事の無い最高の笑顔をしているのじゃ!ぐぬぬぬぬ!
使獣として召し使えらる場合がある。その時、使獣に名前を与えるのじゃ。
名前を与えた時点で契約は完了する。主が与えた名前を含めての契約なのじゃ。
我は泣いた。壮絶に泣いたのじゃ。血の涙が出るくらい泣いたのじゃ。
この子供に使獣として召し使えるのは気にならんのじゃ。
むしろ光栄だと思うのじゃ。
我を遥かに凌ぐ力を持った者じゃから。
われのプライドを初めてズタズタにしたこの者が亡くなる迄、付き合うのも悪くないと思のじゃ。
何せ、長きにわたって生きて来たわれを初めて、屈服させた者なのじゃから。
しかしなのじゃ!
何なのじゃ、その九ちゃんとは何なのじゃ!
もう少し、貫禄とか、品性とか、偉大さが伝わる名前があるじゃろう。
わ・我は・・この者が亡くなる迄、ずううと 九ちゃん なのじゃぁぁぁぁ。
悲しすぎで、我は血の涙を流してしまったのじゃ。
ブラックドラゴンの奴が腹を抱えて転がりながら笑ってるのじゃ!憎いのじゃ!憎いのじゃ!
子供はニコニコして、
「九ちゃん」「九ちゃん」
と言って、我の腹を撫で続けてているのじゃ。
先程迄の絶望した表情とは全然違う、
凄く無邪気な笑顔で我の名前を呼んでいるのじゃ。
突然ブラックドラゴンの奴が、仰向けで転がってきたのじゃ。
子供は我と奴の両方を、「九ちゃん」「ブラちゃん」と無心で腹を撫でいるのじゃ。
少し時間がたった頃、子供はわれに寄り掛り寝てるのじゃ。
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