90話 ミスリルの盾
90話 ミスリルの盾
暫く黒焦げになったアダマンタートル見つめていた大輝達だったが、他のモンスターと同じく黒い霧となって霧散した事で我に返った。
「このスキルは使えないね……」
「そうじゃのぅ。もう少し制御出来るようにならんと、周りへの被害が凄い事になりそうじゃ…」
僕の呟きの意味を理解したマオは答えてくれた。
そう、50メートルはあったアダマンタートルに黒い稲妻が落ちた後、その威力は消える事なく周囲に飛び散ったのだ。もし周囲に人がいれば、間違いなく余波の餌食になってしまうのだ。
「貴女が人類の敵になった時、貴女を倒すための勇者を探すのは苦労しそうね」
アルファも冗談混じりに言っているが、三割ぐらいは本気でそう考えていたようだ。
「でも<アダマンタイト>を含む、鱗などは消えなかったね。トドメを差す前に剥ぎ取った分はドロップアイテム扱いみたいだね」
戦闘中に切り落としていた甲羅や鱗は、今だ地面にめり込んでいるままだったのだ。
「しかし武具としては強力だろうが、使い物にならないほど重たいぞ?」
マオが心配している通り、アダマンタイトはもちろんだが鱗も結構な重さだったのだ。
「今すぐに何かを作る予定はないけど、最悪は<浮遊石>があるから重量は何とかなるよ。まあとりあえずは甲羅はある程度の大きさに合成して、鱗はそのままマオの魔道書に預かってもらっておくよ」
「そうじゃな、あれにしまっている内は重量は関係がないからのぅ」
そうしてアダマンタイトなどを集め始めると、遠くの方から精霊王ノームがやってきた。
「…お前達は何者なのだ。黒い雷は昔魔王が使っていたのは知っているが、大きさが違い過ぎるし一撃で倒せるほどの威力もなかったはずだ」
精霊王も昔の威力を知っていたようで、今回の威力に驚いているようだった。
「理由は分かりませんが、白炎の方も火力が上がっていたんですよ。…封印された事で何故か威力が上がっているのか、それとも僕達がイレギュラーなのかは分かりませんが、どっちにせよ僕が制御出来るようにならないと周りに被害が出すぎてしまいます」
僕は一先ずお手上げと両手を軽く上に挙げて見せた。
「それより作業を始めるぞ。アダマンタイトを集め終わったら、今度は依頼にあったミスリルの加工も残っておるのじゃからのぅ」
「そうだね。アダマンタイトの合成には結構な量のMPを使うから、早めに作業開始したほうが良さそうだ」
そうしてマオとタマにアダマンタイトを持って来てもらい、合計10個の塊に合成した。
「…魔導書に仕舞えなかったら運ぶのは不可能じゃったな………今度は大岩落としではなく、アダマンタイト落としとして使ってみようかのぅ」
一つ一つのアダマンタイトは1メートル角の正方形なのだが、その重量は大岩などと比べ物にならない重さなのだ。
もし前回と同じ条件で大岩ではなく、アダマンタイトを落としていたら何メートルも地中にめり込んでいただろう。
「…見た目に騙されて、受け止めようとする人が出て来るからやめとこうね…」
そういう話をしながら、散らばっている鱗を集めて魔導書にしまっていった。
「そう言えば何をしにここまで来たのだ?」
散らばっていた鱗を集め終わり休憩をしていた大輝達に精霊王が声を掛けて来た。
「妾達はミスリル鉱石を求めてここまで潜って来たのじゃ」
「見た所お前達に必要性を感じぬが……」
確かに武器は聖剣や魔剣。防具も既にミスリルの服を装備しているので、必要性を感じなかったのだろう。
「実はディーナに動いてもらう為に、ミスリルの盾を100個用意する必要が出来たんですよ。それで大きなミスリルを求めてここまで来たって訳です」
「…確かに今の加工技術で100個もミスリルの盾を作っていたら、何十年も掛かってしまうから交渉の材料にはなる。……じゃがそこまでして何をしてもらうのだ?」
「実は………」
僕は今までの経緯を精霊王に話した。
「…なるほど…我が離れている間にそこまで落ちておったか……お前達の言ったように、ここに籠っていても何も解決にはならぬようだな。………お前達がここを出てノームに行く時、我も着いて行く事にしよう。そして町に住み民の声に耳を傾けて暮らしてみようかと思う」
暫く考えていた精霊王は、新たな決意と共に大輝達を見つめながら宣言した。
「それが良いわ。私も不本意ながら魔王と旅をして、影から人を見る事にしているもの。……正直ショックも大きいわ。何の為に魔王と戦ったのかさへ分からなくなってるのが本音よ。
……でも、私にとってこの旅は必要な事だと確信しているわ」
マオの背中でアルファが本音の話をしてくれた。
「……それは辛い旅になるな。…もしかしたら今まで自分のして来た事に、押し潰されるかもしれんぞ?」
精霊王の言葉の意味はここにいる者達には理解出来た。…精霊王が言いたかったのは、人類の為にと今まで倒してきた魔族の中に、静かに暮らしていた者もいたのではないか。もしそうならタダの殺戮になってしまい、その罪に押し潰されてしまうのではないかと心配していたのだ。
「…それは…覚悟しているわ」
アルファも精霊王の言いたかった事を理解したので、少し自信がなさそうだが覚悟を口にした。
「なに、心配はいらぬぞ。過去の事で押し潰されてしまっても何にもならぬ。償いが必要なら今後の生き方で示せばいい。…そうじゃろ?」
「!?。当り前よ!それにまだ貴女が悪ではないと決まってないわ!」
アルファに倒された張本人のマオにそう言われては落ち込んではいられない。アルファはマオに励まされた事に反抗するように声に力が戻った。
「…なるほど、お前達ならどんなに困難が迫って来ても何とかなりそうだな」
マオとアルファの関係を少し羨ましそうな顔を精霊王はしていた。
「貴方にだってウンディーナとか仲間がいるのでしょう?なら話をして今後の事を相談したり、一緒に旅をしたりすればいいんじゃないかな」
「そうだな…たまには皆で会ったり、旅をするのも楽しそうだな」
「そうじゃぞ。1人では限界があるものじゃからのぅ」
その後もMPが回復するまでの間、さまざまな話をしながら楽しんだ。
「…さあ、そろそろ作業に入るから、マオ達は食料とか探して来てよ。ここなら久々に新鮮な食料が手に入りそうだしね」
「そうじゃな。ノームよ、案内せい!」
そう言ってマオはノームを捕まえた。
「タマも一緒に行きます!絶対に行きます!」
食料探しと聞いてタマは張り切っていた。
「……こんなに気兼ねなく話をされたのは何時振りじゃろうな…」
少し昔を思い出しているようだが、どこか嬉しそうな顔をしていた。そうして三人は森の方へ歩いて行った。
その後、僕はひたすらミスリルの盾を作り続けて3日目、ようやく100個目が完成した。
「……やっと終わったーーーー!!!」
僕は最後に完成したミスリルの盾を横に置き、両手を上に振り上げるようにしたまま地面に寝転んだ。
「お疲れじゃ。…しかし盾だけ100個もあるのも無駄に見えてしまうのぅ…」
ここにいる人数は4人。その4人に対して盾100個が周りに転がっているので、マオだけでなく僕も意味を感じなかったのだ。…もちろんタマは興味ゼロだった。
「そう言えばなんで盾なんだろうね。どうせなら剣とか槍の方が使い手が多そうなのに?」
「そうじゃな…盾は目立たぬが、立派な盾が数多く揃えばそれだけで威圧感はかなりのもんじゃぞ!」
矢も魔法も効かない盾がジワリジワリと攻めて来るのは確かにきつそうだ。
「て事は今回の作戦は降伏狙いなのかな?…でもあの国の人達は自分達は特別だと思っているから、降伏しそうにないんだよね…」
「なら注目を集めた隙に何かを狙う……そんなところかのぅ」
「…なんか嫌な予感がするけど……ま、行けば分かる事だよね。それより今日はMPの回復する為に休んで、明日の朝にヒルダ様の所に行こう」
僕のMPはまだ少し余裕があるが、転移に使うMPを考えると全快にしてから移動した方が良いと判断したのだ。
「まだ余裕があるなら、妾の魔導書もミスリルで強化してくれんだろうか?」
「まだ指定の日まで余裕があるから、装備の強化に時間を掛けるのは良い事だね。さっそく取り掛かるよ」
そうして魔導書を始め、前に装備していた風の篭手をミスリルの腕輪にして、更に水の魔石を使って風と水を切り替えて使えるようにした。そしてマオとタマの分も含めて3人分作った。
そしてそれらの作業と、人がいる所では使い難いスキル<白炎>と<魔黒招雷>の制御訓練を行ない、丸一日を使った後にヒルダの下に転移した。
最近仕事が忙しくて、続きを書く時間が減っています。毎日の投稿を目指していましたが、間隔が開きます。出来るだけ早く投稿をしますので、気長に待っていてください。




