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82話 同盟

82話 同盟


ヒルダに急かされ、そして何を楽しみにしているかは分かっていたが、とりあえず確認してみる事にした。


「…分かりました。本当は見せたくないのですが、それじゃあ納得しないですよね?」


ヒルダは「当然だ」と言い、予想通り一歩も引く気はないようだ。


「それで種類はどうしますか?両刃の剣、片刃の剣、刀、何でもいいですよ。あと、長さも教えてください」


ヒルダの要望は片刃の剣で、長さは130センチぐらいの物を要望してきた。


「一先ず剣を作りますから、見ていてください」


僕はそのままミスリル鉱石を受け取り、錬金術を使いヒルダの要望通りの剣を作って見せた。


「はい。とりあえず剣を作りましたので確認をお願いします」


しかし、ヒルダはもちろん大臣も受け取ろうとする様子が見えない。まるで時が止まったような状況の2人を見て暫く待つ事にする。



「は!?………どれくらいの時間、茫然としていた?」


ようやく正気を取り戻したヒルダは問いかけてきた。


「だいたい5分ほどかな?」


僕はマオにMPの回復を頼み、その間に余ったミスリルを勝手に取り出して見ていたのだ。


「……なぜ声を掛けてくれなかったのだ?」


ヒルダは少し恥ずかしそうに大輝達を責めた。


「まあ、MPの回復する時間が欲しかったし、ミスリルをじっくり見てみたかったから丁度良かったもので」


まるで悪い事をしたとは思っていない様子に文句が言いたかったが、ヒルダは自分に非があるのでこれ以上何も言えなかったのだ。


「それでは剣の調子を見てください」


言われるままに剣を受け取り、何回か素振りをこなしていた。


「…大丈夫だ。国で作っているのより調子がいいぞ」


ミスリルの加工は非常に困難な為、出来た剣も重心に多少のズレや重さのむらが出てしまうのだ。

しかし、この剣にはそれが全くなく、完璧な出来だったのだ。


「なら、能力の移動を行いますね」


そう言って昨日預けていた刀を受け取り、そのまま魔石の移動を行った。

ちなみに簡単に行っているが、MPは800は使うほどの大仕事だったのだ。


「おお!材質をミスリルにしただけで、魔石の効果が上がっているよ。凄いなミスリル。他の魔道具もミスリル製にしようかな」


出来栄えに一番最初に驚いたのは大輝だった。


「これは満足の一品ですね。どうでしょう、僕達の要望は引き受けてくれますか?」


大輝は出来た剣をヒルダに渡し、ファスト村の保護をしてくれるかと聞いた。


「ああ、約束しよう。この剣ならノームに眠るとされている聖剣にも対抗出来るだろう」


ヒルダは剣から火や水を出しながら口約してくれた。


「ちょっと待ちなさい!黙って聞いていれば私がその剣と同等ですって?この私は世界最強の聖剣アルファ!即席で作った剣には負けないわ!」


今まで黙っていてくれたのに、ヒルダの言葉を聞いた途端、我慢が出来なくなってしまったようだ。


「おいおいアルファ、空気を読めよ。ここは黙って聞き流す所だぞ。……事実を言われたからってむきになって…」


「オメガ!最後の言葉も聞こえているわよ!いいわ、その剣を倒す前に貴方から始末してあげるわ!さあマオ、今こそあの無礼な魔剣を叩きおるのです!」


「上等だ!お前ごとき、返り討ちにしてやる!さあお嬢ちゃん出番だ!」


突然の声にヒルダは驚き、話についていけなくなっていた。


「オメガ、駄目だよ。一応女王の前だよ」


「アルファも黙らんか!元々お主はその程度の存在じゃよ」


マオはアルファを宥めるどころか、火に油を注いだ。


「私をその程度と言うなら、その程度に討たれた貴女はそれ以下の存在よ!」


「何じゃと!あれはお主の力ではない!持っていた勇者の力が凄かっただけじゃ。あの勇者が持てば木の棒でも同じ結果になっておったわ!」


「言うに事掛けて、私が木の棒と同格ですって!?…いいわ見てなさい。今後、貴女ごときが使っても立派な成績を残してあげるわ」


「妾ごときじゃと!」


2人の喧嘩は更にヒートアップしそうになっていたので、僕が仲裁に入って喧嘩を止めた。


「ちょ、ちょっと待て!?誰だ、今の声は誰の声なんだ!?」


突然の複数人の声が響き渡り、周囲の警戒を強めている。


「すみません、紹介が遅くなりました。…魔剣オメガと、聖剣アルファです」


そう言ってオメガとアルファを抜いて見せた。


「俺が魔剣オメガだ。よろしくな」


「私が聖剣アルファよ。…さっきの貴女の発言は認めないから、覚えときなさい」


アルファはいまだに根に持っているようで、ヒルダに向かって敵意を見せていた。


「聖剣アルファだと!?…伝承にあった魔王を討ち、ノームに眠っていると言われる聖剣アルファなのか?」


「確かに私は魔王を倒した聖剣で、ノームに眠っていたけど伝承は知らないわね」


「なら、彼女が今代の勇者なのか?それに勇者が現れたのなら、魔王も復活したと言う事なのか?」


ヒルダは聖剣の持ち主のマオを勇者と思い始めて、魔王の復活も危惧していた。


「妾は勇者などではない。こやつが勝手について来ただけじゃ」


勇者と言われ、あからさまに嫌そうな顔をしたマオが否定した。


「私だって貴女を勇者とは認めないわ。これは事故よ事故」


「えーと、ノームの地下に落とされた時に、偶々アルファを見つけてマオが抜いてしまった事で、持ち主となってしまっただけなんですよ。正直2人は仲が悪いです。まさに水と油の関係ですね」


本当は勇者と魔王の関係と説明した方が分かりやすいけどね。


「なら勇者は現れてなく、魔王も復活をしていないと思っていいんだな?」


「……はい、悪い魔王は復活していません」


「少し間が気になるが、聖剣がノームにないのであればもう恐れる必要はないな。お前達の願いは私、ヒルダの名の下に約束しよう。ただ、兵士達がお前達の言うファスト村に着くまで、恐らく10日以上はかかるであろう。その間はお前達で何とかしてもらう事になるが、何とか持ち堪えてほしい」


「それは大丈夫ですよ。宿も引き払ってきたし、今日にはファスト村に帰る予定でしたから」


平然と言う大輝に、ヒルダは10日掛かる距離を1日か、と内心呆れながら聞いていた。


「…それはそうと、お前達が泊まっていた宿はどこなんだ?」


「?。ノームの方からの入り口から入って、すぐの所にある道具屋の裏の宿です」


ヒルダの質問の意図が見えないが、とりあえず誤魔化す必要が感じられなかったので正直に答えた。


「なるほど、<ノーラ>の宿か」


「ノーラ?」


大輝は聞き覚えのない名前に首を傾げる。


「なんだ女将の名前も知らないのか?確か娘の名前はエリーヌと言ったか。ノーラは男勝りの体格の持ち主、エリーヌはどこか抜けた天才の親子だ」


「あの女将さんノーラって言うんですか。でもエリーヌは知ってますから、その宿に間違いありません。……ヒルダ様はお2人をご存知で?」


「ああ、元々ノーラは私の護衛隊長だったのだ。それを結婚を期にやめて、夫の道具屋と宿屋の仕事をするようになったのだ。エリーヌは小さい時に一度会ったが、信じられないほど先読みが出来る娘だった。

………その娘がいる宿にお前達が泊まったなら、きっと宿の中身が凄い事になっているだろうからな。ぜひ一度見に行かなくてはならないと言うものだ」


ヒルダはまた1つ楽しみが出来たと喜んでいる。


「エリーヌとの接点が分かる前から、宿を聞いてきたのは何故ですか?」


「お前達の事だから、あとで回収すればいいみたいな感じで、非常識な道具を使ったに違いないからな。しかも目立つのを恐れるくせに、間が抜けているから道具がばれて、そのまま置いておく事になってるに違いないからな」


たった数時間の対面でここまで分かるのか……半分は感で言っているだろうけど、内容はほぼ正解なんだよな…


「その沈黙は肯定と受け取っていいようだな。あのエリーヌとお前達との合作か…これは今日にでも行かねば、立ち寄れなくなるな。大臣、昼からの予定をキャンセルしてノーラの宿に向かう。それとファスト村へ向かってもらう兵士の選別も、直ちに行え!」


さっきまで雑談していた顔から一転して、真面目な顔で大臣に指示を出すヒルダだった。


「さて、用事も済んだし僕達はそろそろ行きますね。エリーヌに会ったらよろしく言っておいてください」


そう言ってヒルダ達から離れるように部屋の中央に歩いていった。


「近いうちにまた会う事になるだろが、その時は協力を頼むから覚悟するんだな」


「…お手柔らかに頼みます」


そして大輝達はファスト村に転移して行った。


その後、ヒルダは宣言通りノーラの宿に向かい、お風呂を満喫する事になった。そしてエリーヌは女王も入りに来るほどの施設として大々的に宣伝した事により、改築後わずか一日で満員御礼の日々が始まったのだった。


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