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79話 侵入開始

79話 侵入開始


「さてと、娘の話だけでは今一良く分からないから、あんた達が帰って来るのを待たせてもらったよ。さてと、とりあえず下に行こうか、エリーヌも呼ぶから待っていておくれ」


部屋の前で腕を組んだ状態で立つ有無を言わせぬ迫力に、2人共素直に頷くしかなかった。


少し待つと首根っこを持たれてエリーヌが連れて来られた。


「さて、エリーヌの話ではあそこを改築したのは、あんた達との話だがそれは間違いないね」


4人が1つのテーブルに付き話が始まった。


「…はい、エリーヌさんに頼まれて僕がやりました」


なにやら怒られている気持ちになり、下を俯きながら答えた。


「あんた達は旅人だって言ってたよね。いったいこんな短時間でどういう魔法を使ったって言うんだい?」


「それは、……えーと…その、秘密です」


言えない。異世界のスキルを使いましたなんて、言えるわけがないのだ。


「なぜ言えないんだい?何かやましい事でもしたって言うのかい?」


「そんな事はないのですが……」


「…大輝よ、やり過ぎたのは妾達の責任でもある訳だし、素直に言うしかないかもしれぬぞ…」


マオも内緒で説得するのは無理と判断したようだ。


「そう、だよね……信じられないかもしれませんが、僕は錬金術ってスキルを持っているんですよ」


僕は覚悟を決めて白状し始めた。


「錬金術?」


女将も聞き覚えのないスキルに首を傾げている。


「はい、物を合成、加工、などを行う事が出来るスキルです。たとえば……この鉄鋼石を……」


そう言って持っていた鉄鉱石を取り出して加工し始めた。


「こうやって加工出来るスキルです」


鉄鉱石は鉄の包丁へと形を変えて見せた。


「な!?そんな事が……」


「なるほど、そうやって改築してくれたんですね。現状の物を使うから凄い安上がりになる便利なスキルですね!」


女将は信じられない物を見たと驚き、エリーヌはサラリと納得していた。


「これを使ったエリーヌさんの要望通りの改築をしました。すみませんでした。すぐにでも元に戻します」


流石にあの状態のエリーヌの言う通りに作業したのは不味かったと思い、元に戻そうと立ち上がると。


「あ!?いや、元に戻す必要はないよ。作業方法が疑問だっただけで教えてくれれば問題はないよ。それどころか感謝しているぐらいだよ。

…娘の言うとおり宿屋経営が厳しかったのは間違いないからね。それをあんな最新施設とも言えるような改築をやってくれたんだからね」


「でしょ!?前に言っていた私の案そのものだもの、ばっちりに決まってるよ!」


そう言って得意げに胸を張るエリーヌに女将の鉄拳が降って来た。


「すぐに調子に乗る!大体あのお湯を作る道具とかシャワーと言ったっけ?あれの細かい所は全部2人にやってもらっているんだろ。そんな穴だらけの案を自信満々に言うんじゃないよ!」


そう怒っている横でエリーヌが「でも~」と涙目で言っているが女将は気にしないでこっちを見た。


「それで動力は何なんだい?まさか何もなしって訳にはいかにだろ?」


「はいそれは使用者の魔力です。魔力って言っても微々たるものですよ。別に攻撃用って訳ではないですから、多分湯船を急に温めるのにMP1って所でしょうか。シャワーの方も一緒ですから、多分普通に使うぐらいならMP1で済むでしょう。

そうは言ってもお湯を温めるのも、部屋を暖めているのも道具から溢れ出る力ですからMPの消費はありません。」


興奮状態のエリーヌにも説明したが、記憶にないと困るので女将にも一から説明した。


「そんなもんで済むのかい……しかしそんな物があるなんて、道具屋をやってて結構経つけど全然聞いた事がなかったよ。本当にいったいどこで手に入れたのやら…」


「…それは秘密です。ダンジョンからでも出たと思ってください」


嘘は言っていない。


「……これ以上は聞いても無理そうだね。だけどありがとね。馬鹿な娘だけどこの施設があれば客が呼べるのは間違いないよ」


「馬鹿は余計でしょ。絶対お客さんがくるのを考えていたんだもの!」


凄いドヤ顔で胸を張っているエリーヌ…あ!女将が振り向いている。


「今度からは自分1人で出来る範囲の事を考えな」


そうして拳が振っていた。……エリーヌは懲りないな…


いろいろあったがどうやら怒られずに済み、部屋に戻る事が出来た。



「さて、そろそろ行こうかな」


「そうじゃな、これ以上遅くなると眠ってしまうかもしれんからのぅ」


そう言って大輝達は宿屋の窓から外に出て行った。




大輝達が向かったのは城だった。今はもう夜なのでもちろん普通は城には入れない。


「やはり城の周りは兵士が見張っておるのう」


「やっぱり予定通り空から行こう」


大輝達の用があるのはディーナの王だ。下っ端の人にファスト村の保護を頼んでも動く事はないし、身元の証明も保証も出来ない2人に王が会ってくれる訳がないのだ。


よって忍び込む事に決めたのだ。


大輝達はオメガのブラックミストを使い闇と同化して、風の魔道具で空高くまで上がって行った。


「どうせ王様の寝室は分からないんだし、一番上から探そっかな」


そうして一番高い所にある窓から潜入した。

王の寝室はどうせ見張りがいるはずだから、それらしい部屋があるまで歩いて探した。もちろんブラックミストで姿は隠している。


大輝達は運が良いのか少し歩いた所でそれらし部屋を見付けた。一際大きく立派な扉、その前に兵士が2人立っている。


「あれかな?」


「まあ、城で見張りが必要な所と言えば、王族関係かその客、宝物庫のどれかじゃろう。そしてこんなに高い所に作るのは王族関係の可能性が一番高いと思うぞ」


「なら兵士の人には悪いけど眠ってもらおうか」


大輝とマオはギリギリまで姿を隠して近づき、一瞬の内に2人を気絶させた。


「時間はない!要件をさっさと済ませるぞ」


僕はマオに頷いて答え、扉を開けて中に入って行った。


「!?。誰だ!こんな夜更けに会う約束はなかったはずだが!」


既にベットに入って横になっていたのだろうか、扉が開く音で慌てて起き上がったようだった。


「夜分すみません。王族の人に話があるのですが、貴女はどういう人でしょうか?」


僕達はまだ姿を見せてはいない。しかし何か確信を持ったのか、安心したように落ち着いて行くのが分かった。


「ふむ、どうやら暗殺者などではないようだな。いかにも私はこの国の女王<ヒルダ>だ。どうした?こっちは名乗ったのに何時まで姿を隠しているつもりだ?」


何を根拠に安全と判断したかは分からないが、頼み事に来て何時までも姿を隠しているのは不味いと思い、姿を出す事にした。


「夜分失礼します。僕は大輝、こっちはマオです。今回頼み事を聞いてもらいたくてここに来たしだいです」


「ほう、まさかお前達のような子供に侵入を許すとはな。兵士達が弛んでいるとしか言いようがなさそうだな」


「それは仕方がないじゃろう。妾達は空から飛んで、姿を消してここまできた。それを想定出来なかった配置では兵士達に罪はないぞ」


マオは自分達のせいで兵士達が罪に問われるのを防ごうとしている。


「なるほど、空からの侵入か。確かにそれは想定していなかった。

……それに姿を消してか。風の魔法では足音は消せても姿は消せない。…どうやらお前達はいろいろ面白そうな秘密がありそうだ」


どうやら大輝達はヒルダに興味をもたれたようだ。


「それで頼み事とは?」


「実はノームの南に徒歩4日の所にファスト村があるのですが、ノームの兵士と奴隷が暴れる事が起こったのです。それでこの国に保護してもらおうと思い、ここに来ました」


大輝は頭を下げてヒルダに頼んだ。


「…確かノームの周辺で巨大なモンスターが暴れていると聞いたが、お前達はここにいて良いのか?」


他国の問題がもう聞こえているのか…流石に耳が早いな。


「それは大丈夫じゃ。妾達が既に倒してからここに向かって来たからのう」


「やはりそうか。どうやら相当の凄腕のようだな。して、その村を保護して我が国にどんなメリットをもたらしてくれるのだ?」


「メリット、見返りか……なにも考えていなかったなー」


「そうじゃな、妾達にはお金も後ろ盾もないからのう」


確かに何も用意していない。タダで兵士達を配置してくれる訳はないよな…


そう悩んでいると、下の方で騒ぎ声が聞こえて来た。


「どうやら別のお客さんが来たようだな。…すまないが外で寝ている2人を部屋の中に隠してくれ」


確かに侵入者が寝ている兵士を見付けたら殺すよな。


そう思ったので素直に話を聞いて兵士を連れ込んだ。



「女王ヒルダ!命を貰いにきたぞ!」


侵入してきた男は5人、扉の外で見張っているのが2人、合計7人の武装した男が侵入者だった。



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