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77話 宿屋にて

77話 宿屋にて


ディーナに入る前にランドヨットをしまってから町に入っていく。


「ここがディーナか…ノームとは違って町中に水路が走っている綺麗な町だね」


町に入ってすぐに見えたのは綺麗な水が流れている水路だった。到る所に橋が掛かって水路沿いに建物が建っていて、道を歩くより水路を通って行った方が早い所さえありそうだった。


「結構な数の船があるのぅ。あ奴らに頼めば宿など紹介してもらえそうじゃな」


船にはなにやら料金が書いている看板がある事から、タクシーみたいな仕事をしている人もいるようだった。


「でもまずは道具屋を探そうか、僕達は今無一文だからね。薬草を売ってお金にしないと今日も野宿になってしまうからね」


そう言って町民に話を聞いて道具屋を見付ける事が出来た。



「すみません。薬草を売りたいんですけど買い取りってやっていますか?」


「はーい!いらっしゃい、只今薬草関係は大歓迎だよ」


店の奥から出て来たのは、ガタイのいい40歳くらいの女性だった。


「ほー、なかなかの体じゃな。並の兵士ぐらいなら一撃でのしてしまいそうじゃ」


「マ、マオ!?女性に対してそれは失礼だよ」


感心したような顔でマオが店主に向かって言ったので、僕は慌てて止めに入った。


「ぷ、ハーハッハッハ。いいねいいね。子供はそれくらい正直じゃないと。…それで薬草を持って来てくれたんだって、どれくらいあるんだい?」


店主は気を悪くするどころか豪快に笑って喜んでいた。なかなか豪快な性格のようだ。


「薬草は15個です。あとポーションも3個ありますから、よければ買い取りをお願いします」


「ほう、その年で薬草15個持ってくるとは、なかなかの実力者のようだね」


感心するように大輝達を見る店主。身の丈に合わない剣を持っている事で、少しは心得はあると分かっていたが、どうやら少しではないと見抜いたようだ。


「薬草の数で実力が分かるのですか?」


「まあね。この辺りの森は結構危険なモンスターが出るからね。1個や2個なら逃げながら何とかなるだろうけど、量を集めるとなると戦闘は避けれないからね。

それにこの薬草は育ってから結構な日数が経っている。と言う事は森の奥深くに入り込まないと取れない物って分かるんだよ」


「薬草に種類があるんですね」


今まで薬草はどれも同じだと思っていた。確かに回復量に多少の違いがあるのは気がついてはいたが、単なる個体差だと思っていたのだ。


「ああ、霊山などに生えている薬草は<霊薬草>と言って、それ単体でもポーション以上の回復量を持っていて、加工した物は<ハイポーション>として別の商品になるんだよ。それで買い取りだけど、薬草1つが50ゼニー、ポーションが120ゼニーで合計1110ゼニーって所だね。どうする?」


「それで構いません。それでここら辺でおススメの安い宿ってどこかにありませんか?」


「なんだ、見慣れない子だと思ってはいたが、その年で旅人だったのかい。宿ならこの裏にある所をススメルよ。一泊1人50ゼニー、食事はつかないけど水浴びが出来る場所があるから、なかなか良いよ」


確かに野宿が続いていたから、体を洗ってから王に話に行った方がいいな。


「ありがとうございました。そこに行く事にします」


「毎度ありー。またのご利用をお待ちしています」


そう言って道具屋を出て裏の宿に回った。


「すみません。子供2名で一泊お願いします」


「はいはい!いらっしゃい!」


奥から出て来たのは道具屋の店主だった。


「あれ?なんでここに?」


「驚いた?ここも私がやっている宿なんだよ。店も裏で繋がっているからね」


「なんじゃ、自分の宿を進めて来たのか…」


少しジト目で店主を見つめるマオ。


「そんな目で見ないでおくれよ。嘘は言っていないよ。ここら辺は宿屋同盟で値段は一律になっているから、一番安いとも言えるしね」


「そう言う事ですか。なら、一泊お願いします」


「毎度あり~」


そうしてお金を払い部屋に案内してもらった。


「水洗いは一階の角の部屋がそうだから遠慮なく使ってね」


そう言って店主は店に戻って行った。


「早速水浴びをしようと思うけど、寒いだろうからちょっと道具を作って来るよ」


今の季節は冬に近づいているのでかなり寒い。そんな中で水浴びなんて、とてもじゃないけど嫌なのだ。


「確かにあただかい方が良いからのぅ。妾はお主の後に向かうとしよう」


見た目は2人共女の子だけど、僕は男なのだ。なので一緒に入るなんて流石に不味いのだ。


そう思いながら水浴び場にきた。

ここは壁に囲まれていて外からは見えないようになっている。そしてそばを流れている川から、水を引いているのでそれを汲んで水浴びをする形だ。


「とりあえずこの部屋を火の魔石で温めて、水を溜めている所にも火の魔石でお湯にする魔道具を作って……沈めると。これでよし!早速体を洗おう」


そう言って服を脱ぎ、あただかくなった部屋とお湯で体を洗い始めた。そして少しした時、


「あれ?先客がいるの?この服は女の子だから入っても構わないね~」


外から女性の声が聞こえたのだ。


「うそ!?今人がいますよー。入ったら不味いですよー!」


「別に女の子同士良いじゃない。入るわよ」


僕の抵抗は空しくスルーされ、裸の女性が入って来たのだ。


「何これ!?あただかい?いったいどうなってるの?」


「ぎゃーーーーー!!!」


まるで隠そうとしていない女性を見て大輝は悲鳴を上げてしまった。


「なんじゃなんじゃ!?大輝よ、どうしたのじゃ?」


そこに悲鳴を聞き付けたマオが登場した。

下を向き、顔を押さえている僕の姿に、なんとなく状況が分かったマオはため息をついていた。


「なになに!?どうして悲鳴を上げるの?私が何かしたの?」


今だ状況が分かっていない裸の女性は、大輝の悲鳴で部屋のあただかさなどの疑問が吹っ飛んでしまい、大輝の心配をしている。


「あー、……すまぬが前を隠してくれぬか。こやつは凄い恥ずかしがり屋なのじゃ」


「え!?そうなの。それは悪い事をしちゃったな」


そういって女性はタオルで前を隠した。


「ほれもう大丈夫だから、体は洗い終わったか?…ならもう出るぞ」


僕が頷いた事を確認したマオは、顔をあげれない僕の手を引いて外まで連れて行ってくれた。


「さて、次は妾が入るからお主は部屋で待っておれ。使用した魔道具は部屋の隅にあったのと水の中の二つじゃな?妾が出る時に回収するから安心せい」


そう言われて僕は頷いた後、部屋に戻っていった。



「さて妾も入るとするかのう」


そう言ってマオも服を脱ぎ、水浴び場に入って行った。


「あ!さっきの子は大丈夫だった?なんか悪い事をしちゃったなって心配していたのよ」


マオが入って来た事に気が付き声を掛けて来た。


「なに、お主に非はないから気にしなくてよい。それより妾も使わせてもらうぞ」


そう言ってお湯が貯まっている場所に、マオも腰をおろし浴び始めた。


「……貴女がこのお湯の事を驚かない所を見ると、この部屋の温度と、お湯にしているのは貴女達が関係しているって事だね?」


マオの態度一つでこの女性にばれてしまった事にマオは少しだが驚いていた。


「…良く分かったのう。そうじゃ、これらの道具は先ほどの連れが作った道具を利用しておるのじゃ。だから妾が出る時、それらも回収するから使うなら今の内じゃぞ」


もうばれているなら隠す必要もないと思い、マオはハッキリと言った。


「え!?作った?こんな便利な物があるなんて知らなかったよ」


「まあ、そうじゃろうな。この世には二つとない技術の塊じゃからな。多分誰も信じんじゃろうが他言無用で頼むぞ」


元々魔石や魔石を利用した技術は異世界エルディアの物だから、この世界にない技術という言葉は嘘ではないのだ。


「……あの~1つ相談があるのですが……」


「なんじゃ?急に改まって?」


突然態度が変わった女性に戸惑いながら聞き返した。


「私はこの宿の女将の娘、<エリーヌ>です。知らないかもしれませんが、この辺りの宿は国の条例で金額は一律。綺麗な宿や、目新しい設備がある宿ばかりに客が集まる状態なんです。

……そしてとくに目新しい物のないうちは客足が遠のいて、恥ずかしい話ですが経営がピンチなのです」


値段が一緒ならサービスが良い方に客が集まるのは当然の事じゃな。


「それで……その…」


肝心な所が言えずにいるエリーヌに、既に何が言いたいのか分かったマオは先に言ってあげた。


「なるほど、この部屋とお湯を作っている魔道具が欲しいと言う訳じゃな。…だがお湯を作るくらい、火をたけば済む事ではないか?」


「…火を焚いてお湯を作る事は出来ないんですよ。これも国の条例なんですが、料理や治療以外に火を焚いてお湯を沸かす事は禁止されているんです。なんでも町の美観が損なわれるからと言う理由で…」


確かにこの町に入った時、綺麗な町じゃなとは思ったが、そういう努力があっての事じゃったか。


「なるほど、だから火を使わないでお湯を作れる魔道具は、喉から手が出るほど欲しいと言う訳じゃな」


「そう言う事なのです。どうですか…お金なら多少は払えます。どうかお願いします」


そう言って頭を下げて頼み込んできた。


「確かに材料費だけを言えば100ぐらいで済む安物じゃが……前も同じような事を言った事があるが、未知の技術を使った物は目に着きやすく危険な目に合うかもしれんぞ?その覚悟はあるのか?」


「100ゼニー?これがたったの100ゼニー???」


エリーヌは材料費の所で驚き、その後の話は聞こえていなかったようだ。


「話を聞かぬか!」


マオのチョップがエリーヌの額にヒットした。


「痛っ…」


「もう一度言うぞ!未知の技術を使った物は目に着き、危険な目にも合いやすいのじゃ!その覚悟はあるのか?」


マオは裸で仁王立ちをしエリーヌの目を見据えた。


「大丈夫です!お母さん結構顔が広いし強いから」


確かに、あの店主なら並の者は怖がって逆らえぬであろうな。


「…分かった。じゃが、これを作ったのは大輝じゃ。妾の一存では決められぬ。それに妾達は明日の朝にはファスト村に帰る予定じゃ。それまでに説得出来なかったらこの話は無しじゃ!それで構わぬな?」


「はい!ありがとうございます。では早速行きましょう、時間が勿体ないです!」


そうして急いで出て行くエリーヌを見送った後、マオは魔道具を回収して部屋に帰ろうとした。


「ぎゃーーー!!!」


二階の方から大輝の悲鳴が聞こえて来た。慌てて脱衣所に向かうとそこにはエリーヌの物と思われる服が置いてあったのだ。


「…あ奴……そのままの格好で部屋に向かったのか…」


マオが呆れながらも服を持ち、大輝の元へ向かって行ったら、そこには裸で迫るエリーヌと布団に入って丸まっている大輝らしい塊があったのだ。


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