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76話 ディーナへ

76話 ディーナへ


全ての兵士を倒した後、ワンスさんの家に着いた時には既に暗くなっていた。ワンスさんの話では、村人は全員の無事を確認出来て、怪我をした者も大した事はないとの事だ。


「…こんな事はよくあることなんですか?」


僕はテーブルにワンスさんと対面になるように座り、今までの事を聞いた。


「いや、今までにこんなに大々的な行動を起こして来た事はなかったのじゃ」


ワンスさんも今回の事はショックが大きいようで、何度もため息をつきながら落ち込んでいた。


「恐らくだが、前の戦いで駆り出された、兵士と奴隷の不満が爆発したものだとおもうのじゃ。自分らに関係のない所での戦いで、当事者であるこの村へ矛先が向いたという事だ」


なるほど、自分達のストレスや不満は、この村の者が晴らす責任があると考えた訳か…


「確かにあの国の関係者ならそう考えるよなー」


「そうじゃな、自分達は特別な存在だと思っておるような連中ばかりじゃったからのぅ」


自分達の欲のために勇者召喚を使っているような国だから、他人がどうなろうと関係ないって考えが蔓延しているのだろうな。


「それで今後はどうします。今回の事は兵士がここには来ていないで、通せるかもしれませんが2度3度となると誤魔化しようがありませんからね」


「次に来るかも知れない兵士も同じとは限らんが、同じだった時の対応は考えておかねばならないな」


しかしその方法がと悩むワンスさん達だった。


「いっそディーネの国にでも助けを求めるか?王の話によるとノームとディーネは戦争直前の状態じゃ。ならディーネに保護を頼むのもありかも知れぬぞ?」


「そうだね、ディーネは勇者召喚の多用に反対しているって言ってたし、案外常識的な考えの国かもしれないしね」


そう話していると、今まで沈黙を保っていたアルファが久々に口を開いた。


「…勇者召喚を多用しているってどうゆう事?」


「何じゃ?話をする気になったか。あの国はのう、コロシアムとやらで見世物にする為に勇者召喚を使って奴隷を確保して戦わせておるのじゃ。何を隠そう大輝もその犠牲者じゃ」


久々に喋ったアルファに、嫌々のようにだが顔は少し微笑んでマオが説明をしてあげた。


「そんな…勇者召喚は異世界の人を巻き込む最後の手段だったはずなのに…どうして、どうして人はそんなに変わってしまったの…」


「平和が人を狂わせた。そう言っていた人もいたよ。でも全ての人がそうなっている訳ではないよ。現にここにいる人達は皆で協力して生活をしているしね」


「……………」


アルファはまだ黙って考え込んでしまった。


「聖剣アルファ、人は…いや、魔族も含めた生き物は全員考え方が違うんだ。もちろん力の強弱、特異不得意も違う。そんな中で楽に逃げる者がいるのも昔からの事実だ。受け入れろ。

だから今度は魔王を絶対悪と決め付けて倒すのではなく、人や魔族の中身を見て助けたい者は助けるって事をしてもいいんじゃないか?

幸いこの2人は結構なお人好しだ。箱入りだったお前が世間を学ぶ為にも、一緒に冒険して世界を回るのもありなんじゃないか?」


「……貴方は何者なのです。さっきから剣の癖に偉そうに」


貴女も剣ですけどね、と言いたいの大輝は我慢した。


「俺か?俺はオメガ、魔剣オメガって呼ばれているぜ!よろしくなアルファ」


「魔剣…魔剣の癖に勇者召喚で呼ばれた者の手にあるなんて…」


「お前だって聖剣の癖に魔王を持ち主と認めているじゃないか。お前の見る目が本物なら、魔王だっていい奴はいるって事になるな」


これは痛い、自分の目が節穴か、聖剣が魔王を認めるかの二択になっちゃったよ。


「……いいでしょう。私はこの魔王が良い者だったとは認めません。私が良い者、勇者として監視、教育をしていくのです。私は聖剣、悪を絶ち善を救う剣。私と契約したからには二度と無差別な殺戮は楽しめないと思いなさい!」


「…妾は昔から殺戮をした覚えはないがのう」


アルファが復活したのはいいが、さっきからの剣同士の会話にワンスさん達が全然着いていけてないよ……。


「とりあえず明日の朝から、僕達はディーナに向かって行くよ。もし常識が通じる国で、救援が求めれるのなら保護してもらおう」


「それしか今の所、方法はなさそうじゃな。わしらの村には戦う戦力がまったくないからのう」


ワンスさんも残念そうに承諾してくれた。


「なら、タマはこの村の警護をしてもらうか。予定通りならタマが帰ってくるのは後3日後じゃからな」


「タマは寂しがるかもしれないけど、ここからディーネまではノームから出ている馬車で一週間と言っていたから、ランドヨットを使えば5日で着く事が出来るはずだ。そうなれば早ければ6日後にはこの村に帰ってこれる。ワンスさんもタマが帰って来たらそう伝えてください」


「ちょ、ちょっと待ってくれ。何をどう計算すれば6日で帰ってこれる計算になるのじゃ?大体ノームまででも片道4日は掛かるし、そこからディーナまでも馬車で7日、往復を考えると早くて22日は掛かるんじゃぞ?」


ワンスさんは大輝の良く分からない計算に疑問を覚えたのだ。


「あー、僕達は転移の宝玉ってアイテムを持っていて、一度言った場所には一瞬で移動出来るのですよ。だからノームまでは一瞬でいけます。

そして独自の移動手段を持っていますから、夜通し飛ばせば5日くらいで着くと思います。

そしてディーナでの行動に1日。帰りは転移の宝玉で一瞬なので合計6日と言う訳です」


「転移の宝玉…そんな便利なアイテムが存在しているとは…」


大輝の説明を受けて転移の宝玉に意識が集中しているようだ。


「まあ、元々時空の壁を越える為に作ったアイテムですから、凄く燃費が悪いアイテムになってしまいましたけどね。一回の同世界内の転移でMP500ぐらい使用します」


「500!?そんなに魔力を使ったら一発で精神混濁を起こして、気を失ってしまうんじゃないか?」


「今の僕のMPだと何とか三回は転移が出来ますね」


「三回?MP1500以上!?」


大輝の異常なMPの量にワンスさんは驚き過ぎて、あごが外れそうなくらいまで開けていた。


「そう言う事なので今日はMPの回復に専念して、明日の朝から移動を開始します」



そう言って部屋に帰って寝る準備を始めた。


「ところでアルファの能力って何なの?」


「私の能力?私の能力は魔法を消し去る力と刀身の自動再生。

それに光の魔法を使えるわ。

シャイニングレイ…剣先から光のレーザーを放つ。

ミラージュミスト…光の霧で姿を隠せる。

サークルヒーリング…私の周囲10メートルの味方の怪我を治す事ができる。

あと基本は私が周囲に飛んでいる魔力を吸収して溜め込む事で魔法を使っているけど、なくなったら契約者から貰う事になるわね」


オメガと似ている能力が多いな…でもこんな事を言ったら絶対噛み付かれるよな。


「しかしアルファを持つのは大変じゃな。妾は大輝と違って錬金術が使えんから、普段持っている場所に困るのぅ」


アルファもオメガと似たようなサイズの武器の為、マオには大きいんだ。そんな武器を背中に背負っても抜けない武器になってしまうんだ。


「なら私を抜く時だけ、剣を小さくすればいいわ。刀身の自動再生ってのは刀身の変化みたいな物だから、一瞬だけ小さくするぐらい問題はないわ」


「そう言う事なら妾も背中に背負うとするかのぅ。不本意じゃがよろしく頼むぞアルファ」


「それはこっちのセリフよ。でも魔王も更生させた聖剣となれば私の伝説が更新される事間違いないわ。覚悟しなさいね、マオ」


言葉だけを聞いていると仲が悪いようにしか思えないが、2人の雰囲気は険悪とは程遠いものだった。



翌朝、ワンスさんに挨拶を交わした後、ノームに向かって転移した。


「ここからディーナに向かって飛ばして行くから、周囲への警戒をよろしく!」


そしてランドヨットに乗り込み風を当てて進み始めた。

そこからの旅は順調だった。大輝の風の魔法のレベルが上がっている事もあり、馬車以上のスピードを簡単に出して進んで行ったのだ。

モンスターとの戦闘も何度もあり、途中で車輪が壊れたり、軸が折れたりしたが、その都度一瞬で直してしまったので影響は出なかった。


ノームを出て4日目の夕方、予定より早く大輝達はディーナへとたどり着く事が出来たのだった。


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