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75話 聖剣アルファ

75話 聖剣アルファ


地下の落とし穴に落とされたが、大輝達は当然のように無傷だった。


「しっかし参ったね。いきなり閉じ込められるとは思ってもみなかったよ…」


そう言いながら落とされた穴を見ていた。


「まったくじゃ。これではディーナの方がまともな人間がいそうじゃ!」


マオも怒っているようで、天井の穴を睨みつけている。


「でもここは何なんだろうね?周りはゴミだらけのようだよ」


周囲を見回してもゴミと埃しかないような場所だ。どうやら今から戦争をするかもしれないディーナに行かせるくらいなら、ここで閉じ込めて始末した方が良いと判断したんだろうな。


「とりあえず、周囲に出口か何かないか調べてみるとするかのう」


そう言って2人は別々にこの空間の様子を調べる事にした。




「こっちには何もなかったよ。マオ、そっちはどう?」


半周回って大輝は合流してきたマオに聞いてみる。


「一カ所、魔力が漏れ出している場所があった。おそらく隠し扉か何かがありそうじゃ」


「なら、そこに開けて進んで見ようか」


その場所に行って、よく見てみると確かに壁の隙間から魔力が漏れ出しているのが分かった。その漏れ出している隙間にオメガを滑らすように通してみると、倒れるように壁が開いた。


「あれ?下に降りる階段があるよ?」


「そう、じゃな。上なら出れると思ったのじゃがな…とりあえず進んで見るとするかのぅ」


そう言って僕達は階段を降りて行った。降り切った先にはまるで神殿のような神聖な感じがある場所だった。その中心には一本の剣が刺さっていた。


「ここは何の部屋だろう?」


「なんか剣が刺さっておるのう。なかなかの剣のようじゃから抜いてみるとするかのぅ」


そしてマオは剣の下へ行って剣を抜き、かがげた。


「おめでとうございまーす!。あなたは勇者としてこの私、聖剣<アルファ>の持ち主として認められました。さあ、共に魔王を討伐する旅に出ましょう!」


「「……………」」


突然の甲高いハイテンションの声が剣から聞こえて、2人共呆気に取られている。


「どうしたんですか?私に選ばれた事で感動して声も出ませんか?いいですよ、もっと私を崇めてもらっても!」


「なんなんだこの剣は?」


僕は今だ固まっているマオの代わりに声を出してしまった。


「あら、早速目の前に魔族がいますね。さあ、最初の獲物です。存分に私を使いなさい!」


「え!?いきなり敵扱い?」


「当たり前です。魔族は全てが悪い者です。私は心優しい人間の味方、ゆえに聖剣!何しろ私は魔王を討った事もある由緒正しき聖剣です。安心して魔族を討ちなさい!」


すっごいテンションだな。それにしても魔王を討った剣が今、元魔王の手にあるのか…下を見た時驚くだろうな。


「さっき選ばれたと言っていたけど、もしかして最初に持った人が契約者で死ぬまで続くって感じですか?」


あーマオはまだ固まっているよ…


「そうよ。この子は私の契約者として登録されました。だからこの子は勇者として、人々の為に魔王と戦わなければなりません。だから貴女も抵抗をしないで逝ってください」


「僕はこれでも人間ですよ。魔族の核を入れられて魔族になってしまっただけだよ。…それに人間は心優しい者ばかりではないし、魔族も悪い者だけではありません!」


「そんな事はありません!人間は全てが心優しいのです。魔族の嘘には騙されません!」


この聖剣に上にいる人間を見せてやりたいよ……。


「さあ、覚悟しなさい!今こそ…」


「えーーーい!!!いつまでも妾に持たせるんじゃない!アルファーーー!!!」


マオはやっと覚醒したようで、聖剣を地面に投げつけた。


「痛い!なんで、なんで勇者が私を投げつけるの?」


表情は分からないが、その声から動揺しているのが良く分かる。それにしても剣が痛いって何だよ…。


「まだ分からぬかアルファ!妾じゃ、お主に倒された魔王じゃ!」


マオはアルファの前に腕を組んで立ち、見下ろしながら叫んだ。


「魔王?赤い髪、釣り上がった目、その喋り方!年齢は低く見えるけど確かに魔王だわ!なんで?なんで魔王が勇者なの???」


「そんな事は知らぬわ!だいたいこの世界に魔族なんてほとんど残っておらぬわ!人間に虐殺され、生き残っておるのは隠れている者か、奴隷とされている者だけじゃ!」


「それは仕方がないわ。魔族は生きていてはいけない存在だもの」


「なら、その目で人間がどういう存在か見てみると良いよ。多分、聖剣の存在すら忘れられているだろうしね」


これ以上ここで問答しても埒が明かないのは明白だ。


「私の存在が忘れられている?そんな訳はないでしょ?ここだってこんなに綺麗にしてくれているじゃないですか!やっぱり魔族は嘘つきよ!」


「マオ、この剣を持って現実を見せてあげよう。そうしないとキリがなさそうだよ」


「そうじゃな、とりあえず上に戻るとするかのう」


そう言ってマオはしぶしぶアルファを持って階段を上がって行った。


「なに?ここはいったいどうなっているの?なんで私の神殿の上にゴミが貯まっているの?」


アルファがこのゴミ捨て場のような所を見て動揺している。


そうしていると落とされた穴から声が聞こえて来た。


「どうだ。そろそろ現実を見る気になったか?このままこのゴミ捨て場で死ぬか、王に忠誠を誓って奴隷になるか、覚悟は決まったか!」


「ゴミ捨て場」


「分かったから、ここから出してください!」


ここは演技をして乗り越えようかな。


「くくく、そう簡単に出すはずがないだろう。お前達みたいな奴は我が王には相応しくはない。このままそこで死んで行くがいい!」


そしてまた穴が塞がる音が聞こえて来た。


「アルファ、これが現実じゃ…」


「……………」


アルファは声も出せずに黙ってしまった。


「まあ、とりあえず村に帰ろうか。あそこの人達はアルファの言っている、心優しい人間がいる所だからね」


流石にこれ以上アルファに人間を絶望視してほしくないしね。


「そうじゃな、流石に妾も今のアルファには同情してしまうからのぅ」


そう言って転移の宝玉を使ってファスト村へ転移した。



そして大輝達はファスト村へ転移に成功した。


そして異変に気が付いた。


「おい、ここにもガキがいるぞ!結構な上玉だ、高く売れるぞ!」


いかにも山賊風の男達が村人を追いかけながら目の前に現れた。


「なんじゃ?何が起こっておるのじゃ?」


そう言いながら大輝達は山賊風の男達を倒した。


「この人達は何が目的でここに来たんですか?」


僕は追いかけられていた村人に事情を聞いた。


「あいつ等は、…あいつ等は国の兵士が連れてきた奴隷達なんだよ。…兵士達が奴隷の不満解消だ、自由にしろって村を襲い始めさせたんだ」


「そんな理由で村を襲わせるなんて……暴れている奴隷は何人ぐらいいるんですか?」


怒りを強引に抑え込み、極力冷静を装った。


「正確な人数は分からないが、30人はいたと思う。武器は持っていなかったからすぐに殺される事はないと思うが……」


「分かった。マオ、二手に分かれて対応しよう!僕はこっちへ、合流はワンスさんの家で!」


「了解じゃ!無理をするでないぞ」


そう言って僕達は別れて行動をし始めた。


騒ぎが起こっている所に奴隷がいるので、居場所を探るのは簡単だった。走り始めてすぐに村人を追いかけている奴隷を見付けた。


「こっちに逃げて来て!」


僕の声に気が付いた村人は走る方向を変えてこっちに来た。今の姿が女の子の為に奴隷達は無警戒で進んできた。


そんな奴隷達をあっさり斬り捨てた。


「大丈夫か?この道を進んだ所にさっき助けた人がいる。合流してワンスさんの家を目指してください」


そう言い残し進んで行く。その後何度か奴隷達と戦闘になったが、何事もなく進んで行った。


「これでほぼ終わりかな?」


「後は騒ぎの元凶だけだな」


「そうだね、マオと合流してこの騒ぎを終わらせよう」


そしてワンスさんの家に向かいマオと合流出来た。


「まお!そっちはどうだった?」


「気が付いた限りは倒して来たが……アルファが相当ショックを受けているようで、何も喋らなくなってのう」


「アルファ…大丈夫?」


僕はマオの背中に背負っているアルファを見て、声を掛けたが返事がない。


「とりあえずアルファの事は後回しじゃ。これから元凶の所にでも行くのじゃろ?」


「ああ、今回の落とし前を着けに行こう。ワンスさん達はここで足りない村人がいないか確認をお願いします」


「分かった。気をつけるのじゃぞ」


そうして大輝達はノームのある北側に向かっていった。



「おや!こんな所にまで逃げて来た子がいるぞ!あいつ等張り切っているようだな」


「こっちに来たなら俺達で遊ぶとするか。おーい!こっちにおいで、俺達と遊ぼうぜ」


北の森に入る前の所に兵士が下品な笑いと共に僕達を呼んでいる。


「まったく……あの国の者は皆、あのようなのばかりなのかのぅ…」


「こんなのばかり見たら、アルファが絶望しても仕方がないかもね…」


そうして僕達は兵士の目の前に向かった。


「おいおい、結構可愛いじゃないか!」


「…どうして奴隷に村を襲わせたのじゃ?」


ニヤニヤする兵士の顔を見てうんざりした顔で、さっさと用事を済ませたいと思ったマオが単刀直入に切り出した。


「お?俺達が奴隷共を向かわせた事を知っているなんて鋭いな」


「まあ、知っているなら話してもいいか。俺達はこの村の様子を見に来る命令を受けたんだが、奴隷達の不満が貯まっていたからな。今のこの村で人がいなくなっても、元々いなかったと報告すれば済む事だからな。ちょうど良かったと言う訳だ」


人を人と見ていない考えを得意げに話す兵士達を見て、呆れてきった顔で僕達は覚悟を決めた。


ノームと戦かっても構わない覚悟を!


2人が顔を上げた後一瞬で決着は着き、残されたのは兵士達の死体だけだった。


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