74話 ノーム城へ
74話 ノーム城へ
復興作業も順調に進み、村にようやく住める状態まで行く事が出来た。
しかし、まだ水の確保と住まいの確保が終わっただけにすぎなかった。家の中の家具はほとんどなく、食料も避難所に持っていけた分があるだけ。今まで飼っていた家畜の数も半分以下になってしまい、仕事道具などもほとんど失って今後の生活に戻るには、まだまだ問題は山積みなのだ。
「とりあえず、建築素材はもういらないだろうし、家具などはヨサークさん達がやっている。僕達が出来る事はもうあまりないかもね」
家の木材は予備を含めて10軒分はまだある。家具用として、大小さまざまな板を大目に作ってヨサークさんに渡した。畑仕事はもうすぐ冬になるので急いでやる必要がなく、クワなどの道具はある程度の数を造り終えている。
「そうじゃな、妾達が1人1人に要望を聞きに回ると、大事になるのは目に見えて分かる事じゃからのぅ」
マオもいつもやり過ぎてしまう事を自覚しているようだ。
「ご主人様達を見る村人は、いつも驚いていましたしね……」
恐らく僕がクワなどを作って渡した時の事を言っているのだろう。
造ったクワなどは、鉄を使うと驚かれると思い木製にしたのだ。ただ、普通に木を削るだけでは脆いだろうと思い、木を圧縮して硬度を上げた為に既に木のレベルを超える硬さになっていたのだ。
もちろん重量のバランスを考えて先端部だけを硬くしたのが、異常な状態になってしまい驚かれた原因だ。
そうだよな…つなぎ目なしの木で先端だけが、異常に硬くて重くなっている木なんてある訳がないんだし。
「まあ過ぎてしまった事は忘れて、あとでワンスにでもやる事を聞きに行くとするかのぅ」
「そうだね、村の事は村長に聞くのが一番だね。食事が終わったら聞きに行こう」
そう言って大輝達は昼食を食べ終えてからワンスの下へ向かって行った。
「ワンスさん、何か手伝いが必要な問題ってありますか?」
大輝は現場指示をしているワンスに聞いた。
「おお、大輝君か。そうじゃな……細かい物は村人でやった方が良いから、造ってもらう物はないが。…今、直面している問題は食料じゃ。森に食料を集めに行っているが、思ったより数が集まってはおらんのじゃ」
食料問題か…流石に食料はどうしようもないな。
「それで、よければノームまで行って買いだしを頼みたいのじゃ」
「買い物ですか?でもお金はどうします?」
「それは薬草を売ってお金に変える予定じゃ。薬草は避難中に集めていた物があるし、ノームでは2度に渡る敗北で回復薬は品薄のはずじゃから、高く売れると思うのじゃ」
なるほど、確かに今の状況だと売れるだろう。僕の持っているポーションも少し売ってお金を稼いでおくかな。
「分かりました。向かうのは僕達以外は誰が?」
「トントも一緒に行かせよう。お主達は物価に詳しくなさそうじゃしな」
「はは、確かにそうですね。なら出発は明日の朝からで良いですね」
「トントにも話を進めておくから、明日から頼むぞ」
そう言って大輝達は、ワンスの下から離れてどうせ売るならと、自分達も薬草探しをして今後の資金確保の足しにしようとした。
村人の迷惑にならないように少し離れた場所まで薬草を探しに行き、暗くなっても続けた。そのおかげもあり、15本もの薬草を集める事に成功した。
翌朝、トントさんと合流して村を出ようとした時、ノームの方から兵士達が歩いて来たのに気が付き足を止めた。
「なんじゃ?再戦しに来た割には少ない数じゃな?…偵察か?それなら少しは賢い指揮官でも付いたのかもしれんのぅ」
マオは前回の戦いを見て、あまりにも酷かった指揮官の指示を思い出していた。
そう思いながらも道を開けようと横に避けると、兵士の1人が大輝達の方を指差し近づいてきた。
「お前達があの黒い獣を倒した者達だな?」
突然指揮官だと思われる人が前に出てそう言った。どうやら確信があるようなので、嘘を吐いても仕方がないと判断し、
「そうですけど、何か用ですか?」
僕の返答にまだ信じていなかった兵士数名が、ざわめき驚いているようだ。
「単刀直入に言ってノームに来てもらう。お前達が何者かも含めて聞きたい事があるからな」
終始命令口調で言ってくるのが目に付くが、ノームに向かうのは元々の予定だったの了承した。
「着いて行くのはいいですけど、いったい誰が僕達に用があるんです?」
「そんな事をお前等が知る必要はない!黙って着いてくればいいんだ」
高圧的な態度は頭に来たが、ここで暴れるのは村人に迷惑が掛かると思い止める事にした。マオ達もそう思っているようで、拳に力が入っただけで済んでいた。
そして、兵士達と一緒にノームに向かうことになった。
途中で薬草を拾いながら向かう予定だったが、その事を言うとまた怒鳴ってきたので今回は諦めた。
そして何事もなくノームに着く事が出来た。
「ここから先は無関係な者は着いて来るな。用があるのはその2人だけだ」
そう言って大輝とマオを指差した。
「ちょっと待ってください。タマも一緒に戦った仲間ですよ。なんで別れないといけないんですか?」
「うるさい!そんな報告は受けていない。お前等2人が戦っていたのは確認されているが、そんな小さい子供も戦っていたと報告は受けていない」
あー、あの時のタマはまだ人型になっていなかったから、仕方ないのか。
「タマ、すまないがトントさんと一緒に用事を済ませたら、村に先に帰っていてくれ。万が一の時は僕達は転移して村に飛ぶから」
周囲には聞こえないぐらいの小声で話したが、タマにはしっかり聞こえていたようで、小さく頷いてくれてトントさんをつれて離れて行った。
「それじゃあ行きますか」
「ふん!手間を掛けさせやがって、最初から黙って言う事聞いていればいいんだ」
マジでこの人、勘違いをしているんじゃないかな?僕はこの国に従う必要も義務もないのに。
そう思いながらも大輝達は着いて行った。
着いた先はなんと城だった。その正門から堂々と入って行き、階段を登ってどんどん上に向かって行った。
目的の場所は王の前だったのは、流石に予想していなかった。
「お前達があの国の兵士達でも倒せたかった、黒い獣を倒したと言う2人組の少女達だな」
王の言葉に先ほどの兵士の眉が微かに上がったのが見えた。どうやらその辺が面白くなく、大輝達に突っかかってきた理由のようだ。
「はい、そうですけど、それが何か?」
目も伏せず、頭も下げずに言った事に周りが反応する。
「お前達無礼であろう!頭を下げろ!許されるまで発言はするな!」
隣にいた兵士が噛み付くように怒鳴りつけてきた。
「まあよい、許そう。して、おぬし達は何者だ。そして目的はなんだ」
寛大な処置をしてやったと言わんばかりに、王は椅子に座りながら見下した状態で質問してきた。
「……………」
「何を黙っているんだ!王が質問なさっているのだ。さっさと答えんか!」
喋ったら文句を言われ、喋らなくても文句を言われる。いったいどうすれば良いんだよ。
「僕達は旅を続けている者です。あの村へはたまたま立ち寄ったら戦闘に巻き込まれただけです」
「そうか、旅人か。なら今からは余に仕えるがよい。お前達も感謝するがよい」
「は!?嫌ですよ。今は旅を楽しみたいし、次はディーナに向かう予定なんですから」
しまった!つい本音が出ちゃったよ。
「お前達、王が仕えろと言ったら素直に従え!それにディーナだって!あの国と今、どんな関係にあるか知っていての発言か!」
相変わらず怒鳴る事しかしない兵士にうんざりしている。
「え、ディーナって隣の国なんでしょ?まさか戦争でもしようって言うの?」
「あの国はよりにもよって、我が国のあり方が間違っていると言って、奴隷を解放しろ文句を言ってきたのだ。選ばれし我が国の民が奴隷を持つのは当然の権利であろう。それを人は平等だとか訳の分からん事を言って来たから、宣戦布告をしてやったのだ」
この王は頭がおかしいんじゃないか?どう見てもただの人じゃないか。それを特別な存在みたいに言って恥ずかしくないのか?
そう思っていると、周りの人達の額に血管が浮かびあがっているように見える。
「……大輝よ。まったく同感だが、今のは全て声に出ておったぞ」
「え!?ほんと?それで皆怒ったような顔をしているのか…ハハ」
「何を笑っているのだ!それに王がおかしいだと?お前達ここで侮辱罪で成敗してやる」
ついに隣の兵士の我慢の限界に来てしまったようで、腰の剣を抜き始めた。
「まあ、待て。こやつらは仮にもあの獣を倒した者達だ。ここで暴れでもされたらこっちも困るからな。…この2人を例の部屋に連れていけ、もしかしたら考えも変わるかもしれん」
そお王が言い、兵士は剣を抜くのをやめ王に頭を下げた。
「お前達着いて来い!部屋に連れて行ってやる」
そう言って兵士は先行して歩いて行った。向かった先は地下の一室だった。そこにはテーブルと椅子が用意されているだけの、シンプルな構造の部屋だった。
「そこの椅子にでも座って、今後の事をもう一度考えるがいい」
そう言って大輝達に席につくように言われたので、素直に従い席に着いた。
その様子を見ていた兵士が一瞬、唇の角を上げたのに気が付いた。しかしその時には既に手遅れで大輝達は、椅子ごと落とし穴に落とされてしまった。
「ハハハ、愚か者どもめ。王を侮辱するからこんな目にあうんだ!死にたくなかったらさっさと忠誠誓い、奴隷紋を刻むがいい。そうしたら、ここから出してもいいと仰られた。また後で見に着てやるから、それまでに今後の事を考えておくんだな」
その高笑いの後、穴がふさがるように閉まって中は真っ暗闇になっていた。




