73話 復興作業、一時完了
73話 復興作業、一時完了
ファスト村の復興作業は夜になったので、一時中断され、今は避難所に戻り食事を始めていた。
「大樹君、マオ君、タマ君、君達には世話になりっぱなしじゃな。感謝をしてもしきれない気持ちじゃ」
ワンスさんに勧められて、一緒に食事を取っていたら、いきなり頭を下げてくれた。
「なに、気にする必要はない。急ぐ旅でもないし、消費したのはMPだけじゃから損もない」
「…そう言えば奴隷契約と元の世界に帰るのが目的だったな。もう方法を見付けたのか?」
ワンスさんは旅の目的を思い出したように話掛けてくれた。
「そう言えば、時空移動は可能になったけど、奴隷契約がまだ残っていたね」
「そうじゃな、まるで影響がなかったから忘れておったぞ」
2人は笑いながら思い出し、何事もなかったように話していた。
「奴隷契約が影響がないとは、ずいぶん仲良くなったようじゃな」
「2人の話し方はまるで、お父さんとお母さんみたいだよ」
一緒に食事をしていたミミが2人の自然な様子を見てそう言ってきたのだ。
「ふ、夫婦じゃと!!!……そ、そんな風に見えるのか?」
暗くなっているので分かり難いが、マオは顔を赤くなっているように見えた。
「うん!でも今はお兄ちゃんはお姉ちゃんになっているから……なんだろう?」
ミミも言っていて良く分からなくなっているようだ。
「ミミよ、あまりそのような事を言うものじゃないぞ。それで、今の大輝君達の旅の目的は何になったんだい?」
ワンスさんが軽くミミを叱り、大輝達の目的が無くなっている事に疑問に思った。
「僕達の旅の目的?あれ?そう言えば生活するのに追われて、目的って言われると僕にはあまりないな……マオは目的ってある?力でも取り戻してみる?」
自分が日常に追われて、大きな目標と言うのがない事に気付き首を傾げていた。
「別に元の座に戻ろうとは思わぬし、今はいろんな地を見る旅をしたいのう。もしかしたら、その途中でやりたい事が見つかるかもしれんしのぅ」
マオも同じで旅をするのを楽しみたいようだ。
「ご主人様とマオ様のいる場所が、私の居場所です」
タマは食事の手を止め、2人にハッキリと宣言した。
「そうか、ならこの村からもその内出て行くのじゃな」
少し寂しそうな顔をしてワンスさんは食事を口に入れていた。
「なに、村の復旧には数日掛かるじゃろうから、それまではおるから安心せい」
「……数日で廃墟から復興出来るとは思わなんだがな」
冬越えの心配をしていたのが嘘のような速さで作業が進んでおり、専門の人がいたら存在を否定されてしまうほどだったのだ。
「食事が終わったら明日の分の木材を作りに行く予定だから、明日の朝からまた運搬をお願いします」
「それは助かるが、……我々の村の為にそこまで無理をしないでもいいんじゃぞ?さっきの話からスキルを使って加工しておるのじゃろ。MPも無限ではないのだから、今日は早めに寝ても誰も文句は言わないぞ」
黒い獣との戦闘、その後に復興資材の加工とMPを、大量に使っているのではないかと心配してくれているのだ。
「大丈夫ですよ、僕はMPの伸びが以上に高いから、まだまだ余裕がありますよ」
「妾はもうMPは全快になっているので心配はないぞ」
「2人が倒れたら私が運んであげますから、安心してください」
三人の話から余裕を感じ、ワンスは安心したように納得してくれた。
そして食事を終らせた三人は、森に向かい作業を開始した。
「それにしても、マオの白炎は凄い明るさだね。まるで昼間のようだよ」
夜の作業の為に明りは必要だった為、マオのスキルのレベル上げを兼ねて白炎を使ってもらっているのだ。マオが出している白炎は、使用時間を延ばす為に小さい炎にしていた。しかしその明るさは直視出来ないほどの明るさで、白炎と言ってもハッキリ言って光そのものだったのだ。
「これは大量の魔力を消費してしまうからのぅ。MP自動回復がなければそうそう使ってはおれんスキルなんじゃ」
一回の発動で30ものMPを使うので、普通の人は何度も使えないほどのスキルなのだ。
ただその消費量に相応しい威力で、今出している大きさの炎でも鉄くらいなら蒸発させてしまうほど高温なのだ。
タマは大輝が加工した木材を、仮置き場に運んでいるので自分の狐火を浮かして明るさを確保していた。
そうして3時間くらい経った所で作業をやめて寝る事にした。
翌朝、大輝達が起きた時には食事を用意してくれる人以外は、既に作業に向かっているとの話だった。
昨日加工した木材は、ヨサークさんが教えてくれた加工を全て行っているので、後は運んで組み立てるだけにしていたのだ。
食事を終わらせた大輝達は、復興の様子を見る為に村に向かったのだ。
「おお!もう3軒も新たに形が出来ているではないか!」
「ヨサークさんも村の方に来て内装を作り始めているね。このペースなら明後日ぐらいには、人が住めるまでいきそうだね」
村にあった建物の数は約30軒。造りを全て一緒にしているので、慣れが入ってペースが上がっていたのだ。
「これは三人揃ってこちらに来てどうしました?まだ寝ていても良いぐらいですよ」
僕達が歩いているのに気が付いたトントさんが、手を止めてこっちに来てくれた。
「いえ、進み具合を見に来たんですよ。順調のようですね」
「ああ、君達のおかげで順調だよ。今は井戸の修理も初めているから、それが終わればここに住み込んで復興作業が出来るようになるよ」
そう、トントさんと進行状況を聞いていると、遠くから呼ぶ声が聞こえた。
「トントさん、井戸は駄目かもしれません」
「なに?どういう事だ?」
トントは連絡に来た者に内容を聞いた。
「実は…井戸の途中で崩れている場所が発見されまして。上の方から崩してから、組み立てないと危険で下に溜まってしまった岩をどかせません」
「そんなに酷いか……仕方がない、井戸の修理は後回しにして他を進めよう」
トントさんは残念そうに次の場所を指示した。
「トントさん、大丈夫ですか?」
「すまない、大丈夫だ。まだやる事は大量にあるんだから、手を止めてる暇はないからな。それじゃ、次の場所の様子を見に行かないといけないから、失礼するよ」
そう言ってトントさんはさっきの人の後を追って行った。
「マオ、ちょっと井戸の方を見て来るよ」
「…お主ならそう言うと思っておったよ。別に断る理由もないから向かうとするかのぅ」
マオは言うと分かっていたようで、さっさと井戸の方へ進んで行った。
井戸は確かに中心ぐらいの所で組んでいた岩が崩れ落ちており、何もせずに下まで行くのは危険そうだった。
「井戸の中は誰にも見られないから、さっさと直すよ」
そう言って、大輝は井戸に手を触れて錬金術を使った。岩を組むとまた崩れるといけないので、全ての岩を一つに合成して筒の様な形に加工した。そしてそのまま中に入れるように筒に溝を作り、降りやすいようにした。最後に中に入り、落ちていた岩も筒に合成して綺麗にした。
「これで井戸は使えるようになったかな。あ!、ついでに手動のポンプでも作っておくかな」
そう言って外に出た大輝は井戸にポンプを設置した。
「これはなんじゃ?」
マオはポンプに見覚えがないようで、大輝の設置した物を見て聞いて来た。
「これは手動のポンプだよ。このレバーを上下に動かすと……ほら!下から水を引っ張って来てここから出るんだよ」
「おおー!?凄いではないか!これは水汲みが楽になるのぅ」
マオは凄い勢いで出る水に感動して、次々と水を出していく。その様子を近くにいた子供達も見ていて興味がわき、一緒になって水を出し始めた。
「マオ、そろそろ森に行こうか。このペースなら夕方ぐらいには次が必要になるかも」
「む?そうじゃな、そろそろ向かうとするか」
そう言って森に向かって行った。その後、井戸が直った事とポンプの事で騒がれていたが、森にいた3人が知るのは夕食時だった。
「大輝君、井戸の話と言えば何の事か分かるかな?」
食事をしていた大輝達の下にトントさんが現れた。
「急にどうしたんじゃトントよ?」
「…問題になっていた井戸が直っていたんだ。それもまるで造り直したように綺麗になっていて、しかも仕組みは分からないが便利な道具まで付いていた。子供でも楽に水汲みが出来るような画期的な道具だった。……いったいどうやったんですか?」
トントさんはそう興奮しながら大輝に聞いて来た。
「その事は……」
やり過ぎたかなー。…どうしよう、どう言い訳しよう。
トントの質問にどう答えるか困っていると、
「あの井戸は元々壊れてなどいなかった。それにポンプは拾った物じゃ。それが全て、……それで良いな」
マオはこれ以上この話を続けると、ここを去る。そういう意味を含めた脅しの様な言葉に、トントさんは何も言えなくなってしまった。
「……分かった。理由は分からないがこれ以上、この話はしない。…だが、ありがとう。君達のおかげでこの村は前より住みやすくなるだろう」
そう言って頭を下げてお礼を言ってきた。
「……早く復興が出来ると良いですね」
大輝も納得してくれた事に感謝も含めていた。お礼を言い終えたトントは作業を続ける為に村に戻って行った。
「マオありがとう。助かったよ」
「なに、妾もはしゃいでしまい目を引いてしまったから、他人事ではなかったからのぅ」
大輝のお礼に対して、マオも反省していたようにバツの悪そうな顔をしていた。
そうして復興作業に協力して2日後、村に人が住めるようになった。




