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72話 復旧作業

72話 復旧作業


騒ぎを起こしていた黒い獣を倒した大輝達は、報告の為にワンスさんのいる東の森へ来た。


「大樹君!マオ君!無事じゃったんだな!国の兵士達が勢い良く逃げて来たから、心配になっていたんだ」


ワンスさんは僕達の姿を見付けると、一目散に走って来てくれた。


「大丈夫じゃ!兵士どもが逃げた後、しっかり倒しておいたからのぅ」


マオが胸を張って報告をした。


「黒い獣はもういませんから、安心してください。…でも村の復旧には時間が掛かると思いますけど…」


今後の村の事を考えると、少し憂鬱になりそうだ。


「そうか、お主達がやってくれたか。兵士達は増援を呼ぶと言って城の方へ帰って行ったから、当分はこの避難生活かと思っておったのじゃ。それに比べると村の復旧に掛かれるだけ、前向きに行動が出来ると言うものじゃ」


流石村長、と言うべきか前向きに考えを持っていけているワンスさんを、僕は素直に尊敬した。


「それより、まずは村人に知らせるのが先じゃ。皆、今後の事を心配しているはずじゃからな」


「そうですな、早速皆に知らせに行ってきます」


マオに言われて気が付いたワンスさんは、避難所の中心に向かって歩いていった。


「さて、大輝よ。またお主の出番じゃぞ!村の建物はほとんどが燃え尽きておる。家を建てるのは不自然じゃが、錬金術で木材の加工をしてやるぐらいは大丈夫じゃろう?」


「!。そうだね、今の内に必要そうな木材を作っておこう!」


そう言って、大輝達は森の中に入って行った。



ワンスさんから話を聞いた村人は、用心しながら村へ戻って来た。そして、南の様子を見る組と、西の森に避難している村人に知らせをしに行く組、村で片づけを開始する組とで別れて行動を開始した。


村に戻って来たワンスさん達は、予想していた事とは言え、村の変わり果てた様子に息を飲んだ。


「ここからの復旧にはいったいどれくらいの時間が掛かるのやら……もう少しすると冬も来てしまうというのに…」


やはり弱音を吐く者が出るのは仕方がない事であった。


「じゃが、我々の家はここじゃ。とりあえずは木を切り、住める家を建てていかねばならない」


ワンスさんは今後の大まかな予定を話した。


「…だが木を切る道具は、ほとんど燃え尽きてしまった。今のままだと、家を一軒建てるのに冬が来てしまいますよ」


「…とりあえず使えそうな道具がないか、燃え尽きた家を回って集めてみよう」


そう言って見て回る範囲を村人に振り分け、解散しようとした時大輝達が合流した。


「お!なんじゃ。もう村にまで来ておるではないか。南の様子を見に行ってから来ると思っておったから、もっと時間が掛かると予想してたのじゃがな」


まるで暗さを感じられない声を聞き、今後の事で暗い気持ちになっていた村人達は少しムッとしていた。


「なんじゃ?皆、暗い顔じゃのう。…まあ良い。それより、物を運ぶ人手と置き場が欲しかったのじゃ。ワンスよ、それらの用意を頼む。」


見た目はどこかのお嬢様のような女の子が、村長を呼び捨てにして、更に指示までする様子に村人達は困惑していた。


「ああ、その前に紹介しよう。皆、ここにいる子は黒髪の子が大輝君、赤髪の子はマオ君、…その後ろの子は?」


ああ、タマの事を紹介してなかったっけ。


「この子はタマです」


大輝は簡単だけどタマの事を紹介した。


「タマ?…まあ今は良いとして、この子達があの黒い獣を倒してくれたんだ。見た目は普通の女の子達だが、実力は国の兵士達以上だ」


ワンスさんの話を聞いて、今度は疑いの目を向けられた。


「…村長、いくらなんでもそんな話は信じれないよ。だって、どう見たって実力者には見えないよ」


「そう、だよな。この子達に比べると、俺達の方が強そうに見えてしまう」


当然の反応だった。ワンスさんも説得の仕方に困っているようだったが、西の森の避難民が来て話が変わった。


「お!やっぱり君達が何とかしてくれてのか。話を聞いた時にすぐに君達の事が、頭に浮かんだよ」


声の主は、西の森でのリーダー的存在のトントさんだった。


「ああ、トントさん。お久しぶりです」


その姿を確認して、大輝は頭を下げて挨拶をした。


「それで村長、この騒ぎは何なんですか?」


村人が何やらギスギスしている雰囲気を感じてワンスさんに問いかけた。


「…実は大輝君達の実力を信用されずに困っておるのじゃ」


「ああ、この子達の見た目だけで判断しようとしたら、疑う気持ちも分かりますよ。

……皆、聞いてくれ!皆の気持ちは良く分かる。実力を知らない人には信じられないだろう。だが彼女達は最初、東の森にいたんだ。

そしてそこで、フィールドボスの大猪の突進を片手で受け止め、一撃で仕留めてしまった。これは討伐に向かった我々全員が見ている事実だ。だから村長の言っている事は事実だ、信用してくれ!」


トントの話を聞き、それでも信用しきれない様子だったが、東の森に避難していた者が既に大輝達にあの時のお礼を言っている姿を見て、信じられないが事実のようだ、ぐらいまでは信じてくれたようだ。


「それより、ワンスよ。先ほど言った場所と人手の手配を早く頼むぞ。遅くなると野宿の期間が延びるからのぅ」


マオは最初から村人の事は気にしてはおらず、話が進まない事に苛立ちを覚えていたのだ。


「えーと、それで何を置く場所が必要なんですかな?」


物が分からないと、置く場所の予定も立てれないのでマオに聞き直していた。


「木材じゃ!家を建てるのに必要であろう?森の方で大輝達と用意していたのは良いが、置き場と運搬に困ってのぅ。村の様子を見て判断しようと、ここまで来たと言う訳じゃ」


「木材?もう復旧の方へ手を進めていてくれたんか。…ありがとう、助かります。それでは5人ほどそちらに向かわせますので、指示をお願いします」


大輝達が討伐を終わらせてからここに来るまでの時間は、大体3時間と言った所だった。その短い時間では木を数本切るのが精一杯だと思い、5人と判断したのだ。


「5人?そんな人数で運んでおったら、日が暮れてしますぞ。ここにいる者の半分が運搬、残りは置き場の確保じゃ!トント、お主は運搬の方の指示を、ワンスは置き場の指示を出すのじゃ!」


既に現場の総監督のように、人員配置を指示して行くマオに誰もが話について来れなかった。


「ま、待ってください。まずは木材の量を見たいので全員で向かいます。その後、二手に分かれると言うのはどうですかな?」


既にワンスさんはマオに敬語が入り始めていた。それにマオの話では全然内容が分からなかったのも事実で、村人を見ないで説得するのは不可能と判断したのだ。


「ならそれで行こう。さあ、ついてくるのじゃ」


そう言ってマオは先導して森の方へ向かって行った。



マオの向かった先に着いた村人は、その様子に驚きを隠せずざわついていた。


「これはいったい…何時の間にこんなに木材を用意したんですか……」


そこにあったのは、綺麗に太さ、長さが揃った柱。また、同じく綺麗な板が大量に用意されていたのだ。しかもまるで残材を残してはおらず、この形の木が生えていたと言われても疑えないほどなのだ。

しかし、切ったであろう根は残っているので、ここで加工したのは間違いないのだが、その方法がまったく想像出来なかったのだ。


「さっきお主に報告した後、妾が木を切り、大輝が加工し、タマが並べたのじゃ。ここまで広がると作業がし難くてのぅ」


マオは軽く言ったが、既に10軒分はあろう木材を、数時間で用意するのは普通は不可能なのだ。


「それより早く運搬を始めんか。妾達が加工している所は見せる訳にはいかんから、運搬が終わってから続きをやる。必要な材料があれば早めに言うがよい」


「僕達は家を建てる知識はありませんから、必要な道具や、材料は教えてもらわないと用意出来ませんから」


大輝達が柱と板を用意したのは、ワンスさんの家にお世話になった時に目に入っていたからだった。正直、細かい材料や柱の組み方、屋根の作り方などは知識不足で不可能なのだ。


「……なら、柱を組む為に先端を加工したいんだが、切る道具がほしい。それと、板を柱に固定する為の溝も作らないといけないから、次に柱を作る時にはそうしてほしい」


1人の男が大輝の話を聞き、駄目元で相談を持ちかけてのだ。


「貴方は大工なのですか?」


「俺は<ヨサーク>、一応家を建てたりはした事がある」


「なら、貴方はここで見本を作ってください。加工の道具は……これで何とかなりますか?」


大輝は一度木の陰に隠れて、持ってきた鉄鉱石でノコギリと、ノミ、トンカチを作りヨサークに見せた。


「な!?これは鉄で出来た道具か?いったいどこでこんな物を?」


驚きながらもヨサークは柱を加工し始めた。


「凄い!こんなに簡単に木が切れる!溝が彫れる!なんて凄い道具なんだ、今までの道具がおもちゃのようだ!」


ヨサークは興奮を隠しきれずに次々と加工をしていく。その様子を最初はマオも見ていたが、村人全員がその様子に釘づけになっており、動きが止まっている事に気が付いた。


「ほれ!皆もさっさと動かんか!柱はヨサークと大輝が加工するから、後回しとして板の方を全員で運び始めるのじゃ!柱も出来た物から運搬を開始じゃ!」


マオの声で皆が我に返り、村長とトントの指示の下作業を開始した。実際に板を触った人達はその表面の滑らかさに驚き、何度も撫でて作業が止まってしまう所もあった。

もちろん、その様子に気が付いたマオにお叱りを受けて、すぐに作業を再開する羽目にはなっていた。


「なるほど、そんな風に加工して組み合わせるのか……よし!こんな感じかな?」


早速錬金術で試してみるが、ヨサークさんの様な精度は出なかった。


「これは細かい調整をしてもらう必要があるな……」


そう言っている間にも次々木材は運ばれて行った。スペースが空いた事を確認したマオが、新しい木を切り初めてその作業内容を見た村人は度肝を抜かれた気持ちだったのだ。


マオは根元を細剣で一刀両断して、1人でその木を持ち運んだのだった。木は10メートル以上は余裕であり、普通なら木にマオが抱きついているようにも見えるほど木は太いのだ。


その様子を見ていた人は、村長やトントが言っていた事が事実だったと、心の底から納得したのだった。


そして、日が暮れて来た頃。最初に加工し終わっていた木材の運搬が終了して、村の方では一軒目が形をなしていたのだ。


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