69話 再会
69話 再会
朝起きてみると、そこはまるでキャンプ場のように森の開けている所に、多数のテントが建っていたのだ。避難民と思われる人達は、全員が強力して食事の用意をしていた。
「皆、こんな状況なのに活気があるね」
「そうじゃのぅ、…じゃが、これも長く続くとそうは行かなくなるから、早めに解決する必要があるぞ」
2人は昨日助けてくれた人の所に、お礼をする為に歩きながら周囲の様子を見ていた。
「ここじゃな」
そうして2人は目的地に着いた。
「おや?そちらのお嬢さんはもう大丈夫なのかい?」
マオだけではなく、大輝も一緒にいる事に気が付き心配をしてくれてた。
「昨日はありがとうございました。少し魔法を使い過ぎて、気を失ってしまいました。一晩ゆっくり寝れましたので、もう大丈夫です」
「それにしても君はまだ若いのに、凄い剣を持っているね。もしかして冒険者かい?」
その質問には回答に困る。確かにエルディアでは、冒険者として登録していたがここではまだ登録をしていないのだ。
「まだ、冒険者の登録はしていませんが、冒険者にはなろうとしています。僕達はここでワンスさんとミミにお世話になった事があるので、少しでも助けになればと思いやってきました。……でも、逆に迷惑を掛けてしまいましたが…」
助けに来て助けられたので、大輝は申し訳なくて大きな事が言えなくなっていた。
「その気持ちだけでも嬉しいよ。それに、今回の騒ぎで僕達は森の中に避難しているから、モンスターの危険に絶えず侵されている。冒険者を目指しているなら、それなりに戦えるのだろう?今から村の若者とここら辺のフィールドボス、大猪の討伐に行くから強力してほしい」
「大猪がフィールドボスって事は、ここは西の森の中なんですね?」
「ああ、流石に来た事があるだけはあるね。そう、僕達がいるのは西の森の中さ」
西の森に出現するモンスターは、角ウサギがメインで東の森よりは危険な場所ではあるが、大人が複数人いれば何とかなるレベルの森である。
「大猪と言えばあれか、この村を出た時に倒したやつじゃったな?」
「そうだね。流石フィールドボス、一定時間経つと復活するみたいだね。…分かりました。僕達も一緒に行きます。」
大輝達が強力してくれると聞き、少しでも戦力が欲しかったので喜んでいるようだ。
「ああ、言い忘れていた。俺の名は<トント>だ。大猪は図体が大きいから正面には立つなよ。奴の突進は強力だからな」
「あ!?自己紹介がまだでしたね。僕が大輝で、こっちがマオです。よろしくお願いします」
「それでは行くか」
そう言って外で待っていた村の若者と一緒に、大猪の住処に向かっていった。
「あそこが大猪の住処だ。回り込んで仕留めるぞ」
そして、二手に分かれて攻めようとした所でトラブルが起こった。
村での騒ぎで気が立っていた大猪は、まだ索敵範囲より遠い位置にいる大輝達に気が付き、突進を仕掛けて来たのだ。
「不味い!?もう奴が気が付いた!散開しろ!」
トントが慌てて周りに指示を出すが、既に手遅れなのは誰の目にも明らかだった。
「ここは僕が抑える!」
そう言って大輝は1人前に出た。
「馬鹿か!?正面に立つな!」
トントは怒鳴ったが、全員が避けれない以上は誰かが前に出て、攻撃して進路を変えさせるか、囮になって進路を変えさせるかの方法しかないのは理解していたのだ。
そして大猪と大輝が接触した時、トントは信じられないものを見たのだ。
「……そんな事が出来るのか…そんな小さい体で………いったいお前達は何者なんだ?」
大輝は大猪の突進を正面から片手で受け止めていたのだ。
「せっかく復活した所を悪いけど、また倒させてもらうよ」
そのままオメガを抜き、正面から真っ二つにしてしまった。
もちろん、レアドロップの牙を斬る事も忘れてはいない。
「これでしまいじゃな。これで、この辺りは安全になったじゃろう?次はミミのいる所にでも行ってみるかのぅ。トントよ、村長のワンスは何処に避難しておるのじゃ?」
マオは普通にトントに質問したが、トントを含め大猪を討伐に来ていた者は全員聞こえてはいなかった。
「こら、トントよ!質問に答えんか!」
トントが大輝の方を見て呆けているので、マオは背中を叩いて正気に戻した。
「え!?な、何か言ったかい?」
「じゃからこの辺りはもう安全じゃろう。じゃから村長のワンスの所に行きたいから、場所を教えてくれと言ったのじゃ」
「あ、ああ。ごめんごめん。あまりに凄いものを見たから驚いてしまっていた。それで村長の位置だったね。村長は東の森に避難しているからそっちに向かうといいよ。でも村は危険だから、北の森を抜けるルートが一番安全だと思うよ」
ようやく完全復活をしたトントは、マオの質問に答える事が出来た。
「それで、君達は本当に冒険者見習いなのかい?正直、ノームの兵士より断然強いと思うよ」
ファスト村には昔、兵士が訓練の為に訪れた事があったようで、兵士の力を知っているようだった。
「確かに見習いだよ。でも、冒険者の資格がないだけで、冒険もしていたしモンスターとも数多く戦ってきたから、ほどほどの実力はあるよ」
大猪の下から帰って来た大輝が、トントの問いに答えてあげた。
「…レベルは幾つぐらいなんだい?」
「今のでレベルが上がったから、僕はレベル15になった所だね」
今の戦闘の後、頭の中でファンファーレが鳴っていたので、レベルが上がったのが分かったのだ。
「15!?おいおい、たかだかレベル15で大猪の突進を片手で止められる訳がないだろう。本当はいくつなんだ?」
「ほんとですよ」
そう言って大輝はレベルを見せる為に、カードを出してトントに見せた。
もちろんHPやMPは、そのまま見せるのが不味いのでオメガに頼み、闇の魔法<ブラックミスト>で黒い霧を使い、数字などを誤魔化しているのだ。
「…確かにレベル15だ。…いったい何をすればあんな事が出来るんだ?」
トントは事実に納得する事が出来ずに戸惑っていた。
「トントよ、昨日の恩は返せたと思うがどうじゃ?」
「…あ、ああ。十分だ。元々寝床を用意しただけだし、それでフィールドボスを倒してくれたんだから文句はない」
「なら、大輝よ。妾達は村長の所に向かうとするかのぅ」
大輝は頷き、東の森へ向かって行った。
まるで何事もなかったように歩いて行く2人の後ろ姿を、トント達は黙って見ているしか出来なかった。
北の森を抜け、東の森へ大輝達はやって来た。その途中で戦闘になると思っていたが、モンスターには実力の差が分かっているのか、近づいても来なかったのだ。
「さてと、東の森に来たのは良いけど、どこに避難しているのかな?」
軽く森の中を見回しても姿は見えない。
「…避難をするなら水と食料の確保が必要じゃから、その辺りで心当たりはないのか?」
「水か……東の森を抜けた所に川があるから、もしかしたらそこに避難しているかもしれない」
マオに言われて大輝は自分がこの村に来た時の事を思い出し、自分が流れ着いた川に当たりをつけた。
森を抜け川沿いに着いた時、川上で騒ぎが起きているような音が聞こえてきた。
「何やら川上が騒がしいぞ!少し急いだ方が良さそうじゃ!」
「何か嫌な予感がする。走って行こう!」
マオにも騒ぎが聞こえたようで、2人は同時に走りだした。
大輝達が避難所らしい場所に着いた時、そこには赤いスライムが暴れていたのだ。
村人も戦ってはいたが、不意を突かれたのか連携は取れていなく、ただ非戦闘員を守ろうとガムシャラに突っ込んで行っては遣られてを繰り返しているようだ。
大輝達がレッドスライムの目の前に来た時、今まさにミミが攻撃される瞬間だった。
「!?。<ダウンバースト>!」
咄嗟に風の魔法でレッドスライムを、上からの突風で叩き潰す。
「ミミ、大丈夫!」
大輝はレッドスライムとミミの間に入り声を掛けた。
「は、はい!大丈夫です」
ミミは戸惑いながらも何とか返事を返してくれた。
その次の瞬間、マオが手にした細剣でレッドスライムを細切れにして倒してしまった。




