66話 リリィの猛特訓
66話 リリィの猛特訓
ダンジョン前で朝が来るのを待ち、日が昇ったタイミングで町へ向かった。
大輝達は昼過ぎに町に着き、まずはリリィの宿に向かった。
「リリィただいま」
食堂に顔を出し、リリィの姿を見付けたので挨拶をした。
「!?。大輝さん、マオちゃん。おかえりなさい。無事に帰って来れたんですね。」
リリィは無事に帰って来れた大輝達を見てホッとした後、満面の笑みで迎えてくれた。
「ところで僕達が出て何日経っているのかな?ダンジョンに潜っていたら時間の経過が分からなくって」
大輝は頭を手で掻きながらリリィに聞いた。
「ああ、日の光が見えないダンジョン内では仕方がないですね。今日で大輝さん達が出て4日目の昼ですね」
「4日か、体内時計もなかなか正確だったようだね」
大輝はマオに笑いながら自慢した。
「それで目当ての物は手に入ったんですか?」
「うむ、第9階層に良い採掘場があってのぅ。そこで必要数揃ったから帰って来たのじゃ」
マオは旅の経緯を気楽にリリィに話した。その事を聞き、リリィは目を見開いて驚いていた。
「きゅ、9階層って、……この短時間で何処まで潜っているんですか………また無茶をしたんですね」
最初は驚いていたリリィだったが、またいつもの事と呆れてしまっていた。
「別に無理はしておらんぞ?9階層までは一直線に向かったからのぅ。…ほれ、これが9階層までの地図じゃ」
そう言って手書きの地図をリリィに渡した。
「……本当に一直線で向かったんですね。下の階層への階段までの道しか描いていませんものね。……どうやって道が分かったんですか?」
地図には横道の絵がまるでなかったの以上、そこは通っていなと言う事になる。初めてのダンジョンでどうやって正確に階段への道が分かったのかが気になったのだ。
「妾と大輝には瘴気が見えるのは知っておるな?ダンジョンの最深部にはボスがいるから、下の階層から瘴気が流れて来ておるのじゃ。それを辿れば迷わず潜る事が可能じゃったと言う訳じゃ」
当たり前のようにマオは言うが、「それが出来るのは限られているんですよ」とリリィは思っていた。
「後、モンスターはフライングキューブ、オーク、グレートアリゲーターが出て来たぞ。まあ、グレートアリゲーターは9階層で一度しか出会わなかったが、ワイバーン以上の強敵じゃったから向かう時は気をつけるのじゃ」
「無理無理無理、無理ですよ!普通の冒険者はオークの相手でも厳しいんですよ!それにトラップだってあったでしょ?地図と情報は大切にしますけど、そんな危険なダンジョンに向かう冒険者はいませんよ」
リリィは勢い良く首を振り、マオに無理と伝えた。
「心配するな、魔力の流れを見えるようになれば、9階層までのトラップは回避できるからのぅ」
「……魔力って…瘴気の次は魔力ですか……相変わらず変な特技を身に付けますね」
リリィは「もう何を聞いても驚きません」っと思い、呆れてしまっていたのだ。
「コツは目に魔力を集める感じじゃ。魔道具に魔力を流すじゃろ?目に魔道具があるイメージで魔力を流し留めるイメージをすれば、その内出来るようになるじゃろう。精進するのじゃぞ」
マオは今後必ず役立つと思い、リリィには是非とも覚えて欲しかったのだ。真剣にコツなどを説明してくれるマオに、リリィも聞き流してはならない事と悟り、一言一句覚えようとしていた。
「それじゃあ、とりあえずは食事をお願い。食べ終わったら僕は魔石の整頓をするから、マオはさっきの続きでリリィの指導で行こうか」
大輝もマオと同じ考えだったようで、マオに魔石を1つ渡しておいた。そしてリリィも大輝達がまだ食事を取っていないことに気付き、急いで用意しに行った。
食事を済ませた大輝達は、予定通り別れて行動し始めた。
シロップの話によると時空転移には最低でも六角星の魔方陣を描く必要があり、なおかつ補助する魔石も必要と聞いている。だが大輝には完成品のイメージは出来ていた。
まず紙や地面などに魔方陣を描くのはやめて、補助する為の魔石が必要との事から、魔石自体に時空転移の魔方陣を描く事で、楽にまとめる事が出来ると考えていた。つまり強力な転移石を作ろうと考えていたのだ。
ベースにクリスタルダンジョンで拾った<魔力貯蔵の魔石>を使い、これに転移の魔石を6つ合成する。魔力貯蔵の魔石を使う事で、転移に必要な魔力を予め貯めておき負担を減らそうと考えたのだ。
しかし魔力貯蔵の魔石と転移の魔石の合成に苦労した。今の錬金術のレベルでも強化のスキルで底上げしないと合成出来なかったのだ。しかも5倍ぐらいの強化でも失敗してしまい、仕方がなく10倍まで底上げしてやっと合成に成功したのだ。
1回の合成でMPは約170近く消費してしまい、それを6回も行なったのでベースを完成させた時にはMPが尽きかけていた。しかたがなく今日の作業は、ここで断念する事になった。
作業が続けられないので食堂に戻り、マオ達の様子を見に行く事にした。大輝が自室に行ってから既に1時間くらい経っていたが、リリィの特訓は続いていた。
「ほれ、また魔力が分散し始めておるぞ!」
「は、はい!」
良く続くな~と思いながら理由を聞いてみると、マオが回復促進でリリィのMPを回復させているらしい。マオ自身はM自動回復のスキルがあるから、事実上MP切れによる特訓終了は来ないという事だ。
その様子を見ていた大輝は、リリィに同情するような顔をして見ていた。
それから更に30分ほど時間が経ったが、一向にやめる気配が見えない事から大輝は水を汲んできて休憩を進めたのだった。
「それでリリィの様子はどうなの?」
「何とか魔力が見える所までにはなったぞ。じゃが色の判別がまだ出来てはおらぬのと、持続時間が短いので今はそれらの特訓中じゃ」
まだ続けるつもりなのかと、額に汗が流れるのを感じながら大輝は思っていた。リリィも慣れない魔力操作の訓練で精神的に疲れているのか、今はテーブルに頭を預けて顔すら上げれないほど疲弊していた。
「…流石にこれ以上は成果が出ないんじゃないかな?MPは回復してもそれを操作する精神の方が限界に来ているように見えるよ」
大輝の言葉にピクリとリリィが反応したように見えたが、とりあえずはスルーしておいた。
「僕も思ったより合成に魔力を使ってしまい、今日はこれ以上作業が出来なくなっているから、無理に今日中に教えないでも大丈夫だしね」
「そうか、そっちはそんなに苦戦しておるか。なら続きは明日にするかのぅ」
もしかしたら明日にでも、転移を行うかもしれないと思い、慌ててリリィに教えようとしていたのだ。そんな理由を知るはずもないリリィは大輝の腕を掴み、
「…ありがとうございます。頭が破裂して死ぬかと思いましたよ」
涙ながらに大輝に感謝していた。
マオの特訓は傷ついたら回復させてまた続きをやらせるという、まさにスパルタとしか言えない内容だったのだ。その辛さは今のリリィを見ているとまさに地獄と言えるものだったようだ。
これが自分に向かない事を祈りながら床に就くのであった。
翌朝、精神力と集中力が回復したリリィは、あっさりと魔力の色を見分けれるようになっていたのだった。マオはこの状態を見て無理をさせるのは良くないな………とは思わず、自分の訓え方に満足しているような顔をして微笑んでいた。
この微笑に大輝が、明日はわが身と冷や汗を掻いている事に気付く事はなかった。
今日は朝から昨日の続きを行った。今度は魔方陣を描く為の材料として、転移の魔石を5つと魔導高石1つを合成した。ベースには転移を行う時に貯めている魔力の使用と転移の補助をするイメージで作り、魔法陣の方は使用者のイメージした場所に転移出来るようにする予定だった。
しかしこの段階でMPは850ほど使用しており、マオに回復促進でMPの回復をしていき、全快近くまで回復するのを待った。
ここまでの魔力は普通の人が持つ事はなく、ここまでして作っている魔石はシロートが見ているだけで分かってしまうほど、禍々しいほどの魔力を放っている状態だった。
そんな魔石を見てオメガが食べたそうな事を言っていたので、今は絶対に手が届かない部屋の隅に置かれる事になっていた。
昼前に大輝の魔力は回復したので最後の仕上げに入った。拳大の大きさのベースと魔方陣用の魔石を六角星の形にして合成していく。しかしここまでの魔石となると10倍の強化でも変化は起きず、20倍でも失敗、30倍まで上げて何とか成功する事が出来た。
しかしここまでの強化となると大量の魔力が、一瞬で失われてしまったので目眩を起こしてしまい、暫くは立つ事すら出来ない状態になってしまった。ここまでの強化は戦闘では使えないなと再確認する事になったのだ。
何はともあれ製作には成功したので、名前があるのか確認しようとカードに収納したら、<時空転移の宝玉>と大層な名前が付いていたのだった。




