65話 転移の魔石採掘 その2
65話 転移の魔石採掘 その2
第4階層。ここは今までと違って異質だった。一部の所で大量のモンスターの気配が集中している場所があり、空気自体も少し重く感じられたのだ。
「このフロアには、なんだか強い魔力が集まっている所があるな」
オメガの言葉に周囲を確認するが、大輝達にはまだ分からなかった。
しかし大輝には、このフロアに転移の魔石があると確信していた。モンスターが1カ所に集まっている場所を、ゲームなんかで言うモンスターハウスだとすれば、そこへ飛ばされる仕掛けがあると言う事になる。
ここが転移のダンジョンと言う事を考えれば、その仕掛けは十中八九、転移の魔石に間違いがないのだ。
「とりあえずその魔力が集まっている場所に向かってみよう」
マオも頷いてくれたので先に進む事にした。
オメガの指示の下、進んでいくと大輝達も魔力が集まっている場所が分かった。
「これは今までとは魔力の質が違うのぅ」
今までの魔力の色はその属性に近い色、火は赤、水は青、風は緑、土は黄と見えていた。しかし今見えている色は白く輝いているように見えたのだ。
「これは当たりかもしれないね」
そう言って慎重にその場を掘ってみると1つの魔石が出て来た。カードに一度しまい、名前を確認してみると<転移の魔石>と出ていた。見る限り前に拾った転移の小石とは違い、強い魔力を感じる事が出来、これなら1つで転移させる事も可能だと思えるほどであった。
「これが転移の魔石か。これを後幾つか見付けないといけないのは骨が折れそうだ」
この魔石から感じる魔力は、大輝が作っている上位の魔石以上の力を感じる事から、探すにせよ、作るにせよ苦労はすると確信しているのだ。
「なに、ここより下に潜って行けば見つかる頻度も上がって来よう。それよりまずは一歩進めた事を喜ぶのが先決じゃ」
後ろ向きに考えるなと、軽く注意された感じに大輝も反省した。
「そうだね、転移の魔石が見つかる最上層と分かっただけでも、大収穫だよね」
その言葉にマオも満足行ったようで「うむ」、と小さく言い先に進んで行った。
この4階層にこれ以外の転移の魔石がなさそうなので、次の階段を目標として暫くして到着した。
途中で浮遊石の2つ目を手に入れる事が出来た。
第5階層。ここにもモンスターが集まる所があるので、オメガに魔石の位置を聞き向かって行った。しかしその途中、ついにフライングキューブ以外のモンスターが顔を出した。
猪のような顔つきで太い体、手には槍を1本持って向かってくるモンスターはまさに<オーク>だった。
「久しぶりに違うモンスターと出会ったのぅ」
マンネリ化していたモンスターとの戦闘に飽きが来ていたのか、マオの顔は少し嬉しそうに見えた。
「でも気を付けてね、周囲に魔石が散らばってるから、踏んだら何が起こるか分からないよ」
大輝達とオークとの直線には何もないが、数メートル離れると点々と魔石トラップがあったのだ。
「分かっておる。横には避けずに向かい撃つぞ」
3体いるオークは既に此方に気が付いているから、槍を構えてまま突進してきた。流石猪とでも言えば良いのか、なかなかの速さだった。
しかし今回は相手が悪かった。大輝の風の魔法を使った事で、オークは突然の突風でその動きを止められてしまい、棒立ち状態になってしまったのだ。
突進がなくなったオークに脅威を感じる所はなくなり、マオの細剣で次々斬り倒されていったのだ。
「呆気ないもんじゃのぅ。第5階層でこれでは、まだ下の階層に行けそうじゃな」
「油断は出来ないけど、まだ下に向かえるのは助かるよ。まだ転移の魔石が採掘出来る所までは行けてないからね」
周囲の魔石を拾いながら大輝はマオと話をした。
このフロアも転移の魔石を1つ手に入れる事が出来、何度かオークとの戦闘もこなした。
そのまま、第6階層、第7階層、第8階層と無事に乗り越える事が出来、転移の魔石4つと浮遊石1つを手に入れた。
第9階層に向かう階段の途中で、仮眠を含む休憩を取る事にした。時間の感覚はまったくなかったが、お腹の減り具合と疲れからそろそろ夜だろうと判断したのだ。
ダンジョンでは不思議な事に、階段にはモンスターが訪れないのだ。とはいえ警戒しないのは危険なので、マオと交互に仮眠を取る事にした。
各2時間ほどの仮眠を済ませた後、第9階層に降りて行った。
第9階層。ここまで潜って来ると流石にモンスターの気配も強くなっている。
「お!このフロアの中心ぐらいに、転移の魔石と思われる反応が複数あるな」
「やっと採掘で手に入れる事が出来るかもしれないね」
オメガが魔石の反応を感知したと聞き、大輝はやっと大量の魔石が手に入るかもと浮かれていた。
「大輝よ、オーク以外の気配も感じる。この階層からはより注意をせぬと危険かもしれぬぞ」
マオに注意されて周囲に耳を傾けると、確かにオークとは思えない重量感ある足音が聞こえてくる。
一先ず周囲を警戒しながら進み、魔石の反応がする所に無事に着いた。
「…これは、トラップ以外の初めての魔石採掘が可能な場所なんじゃ」
大輝は壁の奥から感じる魔石の反応に喜んでいた。この場所は見通しが良く、モンスターの接近が分かりやすいが、発見もされやすく後ろは壁なので逃げる事も出来ない。なのでこの場でモンスターが現れた場合は、戦闘を避けては通れないのだった。
「僕はここら辺で採掘を始めるから、モンスターへの警戒をよろしく」
「任せるのじゃ。お主も魔石を反応させないように注意するのじゃぞ?」
「分かった。気を付けて採掘するよ」
そう言って大輝は採掘を始めた。錬金術の魔力に反応して魔石が発動するといけないので、魔石の反応が強い所の手前までで錬金術はやめて、そこからは手でゆっくり掘っていった。
そして順調に3つ4つと転移の魔石を採掘した時に、マオから声が掛かった。
「大輝よ、見た事もないタイプのモンスターじゃ!」
声を聞き、採掘をやめてマオの下に駆けて行った。そこにはワニの様な形の巨大な口を持ち、体の半分が頭と口という割合で4足歩行の2メートルくらいあるモンスターがいた。
「…あれは<グレートアリゲーター>だ。あの口はワイバーン相手でも丸かじりしてしまうほど強靭で、そのくせあんな体格のくせに動きが早い。奴の表面はかなり硬いから、マオのお嬢ちゃんは援護に回った方がいいな」
相変わらずのオメガの知識に感謝をしていると、早速突っ込んできた。その動きはオークとは比較にならない速さで、しかも手足が短いからか小回りが利くようで、小刻みに左右に動きながら接近してくる事から的を絞らせてくれなかった。
「オメガ、君ならあいつを斬る事が出来るかい?」
「愚問だな。あの程度のモンスターを斬るなんて朝飯前だ」
オメガの頼もしい言葉を聞いて大輝は走りだした。マオは魔導書を取り出し、風弾を放ち当てるがダメージはないようだ。しかし、その動きは微妙に遅くなったので、マオは次々風弾を放っていった。
その隙に大輝が接近しオメガを振る。しかし剣が当たる直前で横に飛んで避けられた。
「……早いな。今のタイミングでかわされるなんて」
大輝がグレートアリゲーターの方を見て悔しがっていた。
「風弾は避けれないのではなく、避ける必要がないと判断しただけのようじゃな」
今の動きを見て、マオも避ける必要もないと判断された事に少し苛立ちを覚えていた。
大輝の剣を警戒したか、標的をマオに絞ったように突っ込んできた。大輝が駆け寄るより早くマオの所に着いたグレートアリゲーターは、地面ごとマオを食べようとしたが、喉を狙ってフレイムアローを放った後無事に避ける事が出来た。
流石に喉の奥は外皮ほどの防御力がないようで、口から煙を出しながら苦しんでいる。
その隙を逃す理由もないので、大輝はオメガで足を斬り裂き、そのまま首と思われる部分を斬り落とした。
「流石9階層だね…1体だから何とかなったけど、複数で来られると不味いかもしれないモンスターだったよ」
大輝は消えていくモンスターを見ながらダンジョンへの警戒を強めていった。
「今の装備でこれ以上下の階層に向かうのは危険じゃな。…次のモンスターが来る前に採掘を終わらせる方が良いのぅ」
マオの言葉に大輝も同意し、急いで採掘の続きを再開した。
途中オークが何度か襲っては来たがグレートアリゲーターは現れず、この採掘場で今取れそうな魔石は回収し終わった。その数はトータル転移の魔石25個、転移の小石38個になった。
「でもこの場所の魔石を全部取った感じだけど、次の人が困るかも知れないね」
取っておいて言うのなんだけど、少しやり過ぎたかなと思っていた。
「別に構わないのではないか。どうせここまで来れる冒険者は限られておるしのぅ」
「安心しろお嬢ちゃん。暫くするとまた魔石は生まれて来るからな。1週間もすると元通りだ」
大輝はオメガの話を聞いてホッと安心した。しかし1週間とは早いな、とも思っていた。
「それじゃあ、帰ろうか?」
「うむ、目的の物も手に入れたし長いは無用じゃ」
そうして大輝達は引き返して行った。採掘に時間を掛けたので5階層への階段で仮眠休憩を取り、とくに危険な事も起こらず地上に帰る事が出来た。途中で浮遊石を4つも手に入れれたのは運が良かった。
外に出てみると夜だった。ダンジョンに潜っている間、時間の感覚がなかったので何日経っているかは分からないが、夜に移動するのは危険なのでここで朝になる待つ事にした。




