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60話 残念メダル

毎日の更新が厳しくなって来たと言っていたが、何とかなっています。話もそろそろマオの世界に戻る予定です。

60話 残念メダル


ワイバーンの討伐終了の報告を済まして、大輝達はリリィの宿で夕食を食べていた。


「ところでオメガは、どうやって魔石を食べるの?」


大輝は食事として要求されていた魔石を取り出し、オメガを見ながら悩んでいた。


「ああ、すまないな。その魔石を俺に近づけてくれ」


そう言われて大輝は魔石をオメガに近づけてみた。魔石がもう少しで剣に触れると思った瞬間、手に持っていた魔石が消え去ってしまったのだ。


「御馳走さん、久々の食事だったから最高だぜ」


どうやら今ので食事は済ませれたようだった。


「なんじゃ、近づけただけで魔石を吸収してしまうのなら、敵が魔道具を持っていたら一瞬で無効化出来てしまうんじゃないか?」


一連の流れを見ていたマオが、感心したような顔で見つめていた。


「ところがそうそう都合良くはいかないんだ。俺が食える魔石は、持ち主があげる意思を持って近づけてくれないと駄目なんだわ」


「そうなのか、ちと残念じゃのぅ」


マオは少しがっかりしていた。


「今の魔石でもオメガの攻撃力は上がったの?」


「確かに上がりはしたが、はっきり言って体感は出来ないぐらいの上昇率だ」


「なら、もっとたくさんの魔石を食べさせればよいのではないか?」


「無理だな。なぜなら俺はもうお腹がいっぱいだ」


「「……………」」


剣がお腹いっぱいって、2人はそんな気持ちになりながら、冷めた目で黙ってオメガを見つめていた。


「しかたがないんだ。俺は数時間に一度しか魔石を食べれないから、早めに攻撃力を上げたいのなら上位の魔石を探してくれ」


詳しい理由を聞いてみたら、魔石を剣に馴染ませるのに数時間必要らしいのだ。ただ、消化に掛かる時間は上位の魔石でも変わらないが、攻撃力の上昇率はいいのでお勧めとの事だった。


「そうだ大輝よ、お主体から溢れ出る瘴気を早めに誤魔化しておかないと、いつ魔族と騒がれるか分からぬぞ」


「そうだった。さっきもヴァイオレットさんにばれたしね。……周りに人はいないし今からやっちゃうよ」


大輝は周囲を見回して他に人がいない事を確認し、ここで服の加工を始める事にした。加工と言っても大した事をする訳ではなく、錬金術で浄化効果があるクリスタルを糸状にして服と合成するだけなのだ。

魔族の瘴気はその核から溢れ出るものなので、服に浄化効果を持たせる事で外からは分かり難くしているのだ。もちろんマオの服も加工済みで、浄化効果だけでなく防御力も上がるのでやらない理由はなかったのだ。


そうして服の加工が終わったタイミングで、宿の入り口からナビコスが入って来た。


「師匠達、ここにいましたか」


入り口を入って来たナビコスは、すぐに大輝達を見つけて駆け寄ってきた。


「どうしたのじゃ、慌てた様子で?」


マオは食後のお茶を飲みながら、駆け寄ってきたナビコスに話しかけた。


「実はワイバーン討伐で大活躍をした師匠達に、国から感謝状が贈られたようで、その使者がギルドの方に来たんで慌てて呼びに来たんですよ」


ナビコスは国から感謝状が贈られる名誉にかなり興奮しているようだった。


「別に感謝状などいらぬぞ?」


それに対してマオはまるっきり興味のない様子だった。


「し、師匠!国に認められたんですよ!とても凄い事なんですよ!」


国に認められる事が如何に凄い事かを力説しているが、マオにはその気持ちは届いていなかった。


「でも、僕達が認められるという事は、リリィのギルドの評判も良くなるだろうから、感謝状はいらないけど貰っておいた方が良いかもしれないよ」


「…大輝さん…」


大輝もマオも2人してハッキリいらないと言われ、ナビコスは肩を落としていた。


「確かにそういう意味なら、貰っておいて損はなさそうじゃな」


マオも大輝の言葉に納得しうなづいている。


「は~、とりあえずギルドの方へ行きますか…」


「「???」」


ナビコスは力なく先導して行ったが、なぜ元気がなくなったのかは2人には分かっていなかった。




「2人を連れて来ました!」


リリィのギルドに着いた3人は、ナビコスの声で気が付いた人々の注目の的になっていた。


「ありがとうございます。大輝さん、マオちゃん、こっちに来てください」


ギルドホールの真ん中には、使者と思われる人が立っており、その先にはリリィやジェームズさん達が手招きをしていた。


「……本当にこの少女達が一番活躍した者達なのですか?」


ナビコスに連れてこられた2人を見た使者の男は、信じられないような物を見るような顔でジェームズに問いかけた。


「間違いありません。2人でワイバーン6体を倒した実力者です」


ジェームズは真剣な顔で使者の方を見て説明した。その様子からどうやら大輝の変化については、ナビコスから説明を受けているようだった。


「この子達が6体も……俄かには信じられませんが、貴方方の目を見た感じから嘘はなさそうですね」


マオは何も持っていない状態だったが、大輝のその背中にはオメガが背負われており、素人が見てもその姿から只者ではない雰囲気を感じたのだ。


「では、始めたいと思います。そちらに並んでください」


そう言われ大輝達はリリィの隣に歩いて行った。


「おほん、それでは読み上げます。この度は我が国の為に、危険な相手にもかかわらず臆せず挑み、その討伐までしてくれて嬉しく思う。そなた達の活躍により犠牲者を出さずに済んだ事を評して心より感謝をする。今後もこの国の為に力を振るってくれる事を願っておる。……との事です。それでは代表者、これを」


そう言われてマオが前に出る。リリィ達の横に並んだ時に小声で、代表者は一番ワイバーンを倒した者、マオと決めていたのだ。


一歩前にマオが出て、使者から感謝状と褒賞品が贈られたのだった。


「今後の活躍も期待します」


「うむ、妾に出来る事なら努力しよう」


そう言葉を交わした後、使者の男は帰っていった。



「師匠、いったい何が送られて来たんですか?」


ナビコスはマオが受け取った物が気になり、目がそちらに釘づけになっていた。


「はて、重さから考えて金属っぽいのぅ」


そう言いながらマオは包んでいた箱を開けた。褒賞品は鉄製のメダルだった。


「……なんじゃこれは?」


マオは中身のメダルを摘み上げ皆に見せた。


「これはこの国で素晴らしい成果を上げた者に贈られるメダルです。…一応、この国では希少な鉄を使った贈り物なんですよ。……正直、大輝さん達から見れば…質の悪いメダルにしか見えないでしょうけどね」


ここにいる者は全員、大輝の作った鉄の武器を見ているので、せっかく名誉あるメダルも感動出来ないと苦い顔をするしかなかった。


「…大輝よ、これで何か武器でも作るか?」


「!?、ちょ、ちょっと待ってください!いくら出来の悪いメダルでも国から贈られた価値ある物なんですから、大事に取っておいてくださいよ!」


マオがサラリと加工しようとしたのに、リリィが驚き慌てて止めに入った。しかしリリィも含めて全員が出来が悪いとは思っているようで、その扱いに困っているようだった。


「ならリリィのギルドにでも飾っておくか?妾はいらぬぞ、こんな物は」


「私もいらないな~、国からって言ってたから、もっと凄いのを期待したんだけど…残念過ぎだよ


「自分も不要です」


「俺もいらないな」


「僕も鉄鉱石がまだあるから、必要ないかな」


満場一致でいらないと言われた哀れなメダル。何気に大輝の中での扱いは鉄鉱石と同じ、とまで言われた事は国に口が裂けても知られてはならない事だった。


「…分かりました。私が責任を持ってギルドで管理させて貰います」


そう言ってため息交じりでマオからメダルを受け取る。


「なんならもう少し見栄えが良くなるように加工しようか?」


「だから、そういう事はやめてください。大輝さんが加工したら、見た目が良くなり過ぎて問題になってしまいます」


リリィはこのままメダルを持っていると、全員のテンションが下がる事はあっても上がる事はないと思い、さっさと奥にしまってしまった。しまいに行く時にリリィがメダルを見てため息をついている表情を見て大輝は「はっきり言って取り扱いが面倒な物を貰った」とリリィも思っているんだなー、と理解したのだった。


「さてと、今日は予定以上の戦闘をしたじゃ。皆、早めに休むとするかのぅ」


「…そうだね、今日はいろいろあり過ぎて僕も疲れたよ」


「確かに、特に大輝は疲れただろうな。よし!今日は解散としよう。しばらくは街中での依頼が多くなって忙しくなるだろうからな」


そうして今日は少し早いが解散となり、各々の宿泊地に帰って行った。


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