58話 魔剣オメガ
58話 魔剣オメガ
マオが大輝の無事に喜び涙していたので落ち着くまで待ち、互いの情報を交換した。
「つまり僕はグラムに心臓を抜かれてしまい、一度死んでしまったのか。でも僕は生きてるし、こうやって心臓だって……あれ?脈が…ない?」
大輝はいくら血管を指で押さえても脈を拾う事が出来ないでいたのだ。
「…大輝よ、冷静にお主を見ていると、…まるで魔族のように体から瘴気が出ておるぞ」
「えーと、それってまさか…」
大輝は今まで看破してきた魔族達のように驚き、現実を見つめる事に臆病になっているのだ。
「つまりじゃ、まだ推測だが、大輝の心臓の代わりにグラムが自分の魔族の核を埋め込んだのではないかと思うのじゃ。奴は最後に今後の大輝と言っておった、つまり心臓は抜き取ったがまだ死なないと確信していたと言うことじゃ」
マオの推測を聞き、大輝は話の辻褄が合う事から納得した。
「つまりこの姿になった理由は分からないけど、僕は魔族に転生したって事でいいのかな?」
「おそらくそうじゃろうな。…どうじゃ、魔族になるのは嫌か?」
マオは恐る恐る大輝に魔族になってしまった事を聞いてみた。
「…この体はどうにかしたいけど、魔族になった事は別に気にしてないよ」
大輝の気持ちを確認してマオはホッとしていた。
「それよりまずは僕の服装を、どうにかしないといけないからちょっと待っててね」
大輝の体は元の体と比べてかなり縮んでしまったのだ。その為今はブカブカの服を強引に着ているだけなので、角度によっては色々見えそうになってしまうのだ。なので大輝は元々着ていた服を錬金術でサイズを合わせて着ようとした。
「大輝さん!女の子がそんな服を着ていたら目立ちますよ。だから服を加工出来るなら師匠と色違いのお揃いにしてください」
服を着ようとしていた大輝に、ナビコスは指をビシッと指し指摘してきたのだ。確かに男物を着ていたら目立つかと納得し、マオの服を見ながら布を加工し色違いの服を完成させ装備した。
「大輝さん、似合ってますよ。それなら不自然さがなくて目立ちませんよ!」
ナビコスが力いっぱい言ってくれたので大輝は安心していた。しかし大輝は自分の姿を水に反射した状態でしか見ていないので分からなかったが、今の姿は間違いなく美少女に入るのだ。美少女が男物の服装をすれば確かに目立つが、綺麗に似合う服を着て、マオとお揃いで歩いている方が注目を浴びてしまう事に、ここにいる3人は気付く事はなかったのだ。
「とりあえず、戦闘は終了したとジェームズさん達に報告しに行こうか。心配していると思うしね」
「そうじゃのぅ、リリィ達も状況を把握出来てはいないじゃろうし」
「それに町の皆を何時までも怖がらせておく必要もないですもんね」
そう言って3人は門の方へ歩こうとしていた。その時大輝の目にグラムの使っていた漆黒の剣が落ちているのに気が付いた。
「ちょっと待ってて、グラムの使っていた剣を拾ってくるよ」
そして大輝は剣を拾った。…その時どこからか声が聞こえた。
「おいおい、今度の持ち主はお嬢ちゃんかよ。これは良くて数十年、悪くて次の持ち主になるまでは会話も出来ないか」
「!?……あの~、もしかしてこの声って剣が話ているのかな?」
大輝は恐る恐る声がする剣に向かって話しかけた。
「!?。まさかお嬢ちゃん、その若さで俺の声が聞こえるって言うのか?…もし聞こえてるなら俺を持ち上げて見てくれ」
一先ずは言われるままに漆黒の剣を高らかに持ち上げた。
「まじかよ!今回も会話は諦めていたがお嬢ちゃん、たいした魔力持ちだな。これは将来が楽しみだ」
話の内容からこの剣と会話をするには結構な魔力を持っていないと出来ないらしい。そして何代かの使い手は皆、会話まで出来るほどの魔力を持つ事なく剣を手放すはめになっていたようだ。
「いやー今回の契約者は優秀だから楽しみが増えるぜ」
大輝は今の話に1つ疑問を持つ事になった。
「ちょっと待って、何、契約者って?」
「何言ってんだよ。元の持ち主を倒して最初に俺を持った者がこの、<魔剣オメガ>の次の使い手、契約者になるってのは常識だろ?」
突然、大輝の知らない常識で魔剣の契約者にされてしまい驚くしか出来なかった。
「ちょ、魔剣って何?もしかして使うと寿命が減っていくとかの呪いを持っているの?」
「おいおい、そんな危ない事をする訳ないだろ。大体魔剣って言うのも周りが勝手に言ってたのを聞いて、かっこいいなと思ったからそう名乗っているだけだ。俺自身は魔石を食って魔力を上乗せ出来て、闇魔法を使えるだけの普通の武器だぞ」
オメガは侮辱され怒ったように自分の能力を話してくれた。だがつっこみは入れたかったから言った。
「剣がしゃべって、魔法を使えるのにどこが普通の武器だよ!」
「俺だって魔法を覚えるのに努力したんぜ。体は黒いし、適正があったのも闇魔法だったから魔剣と呼ばれるようになったんだがな」
そこは聞いてないよと言いたいのを飲み込んだ。
「君と契約して僕に何か影響ってあるの?」
大樹はとりあえずこの奇妙な剣と、ノーリスクで契約出来るとは思っていないので、それで生じるデメリットを聞く事にした。
「なーに、お嬢ちゃんから偶に少量の魔力を貰うだけだから安心してくれ。それに俺は魔力を貯めておけるから、必要な時に返したり、魔法を使って援護してやる事も出来るんだぜ!どうだ、凄いだろ」
「もしかして魔法が斬られたら消滅してたのって、オメガが魔力を吸収してたの?」
大樹は先程の戦いを思い出して質問した。
「まーな!だけど彼奴は俺と会話が出来なかったから、魔法で援護してやる事も出来なかったがな。………ところでお嬢ちゃんの名前は何て言うだ?」
「僕は大樹だよ。そして男だよ」
大樹がオメガに名前を教えた時、なかなか帰って来ない事に不信になり、マオ達が近くに歩いて来た。
「どうしたんじゃ大樹よ?剣を拾って来るだけにしては時間が掛かっておるようじゃが?」
「……実は」
大樹がどうやって事情を説明するか悩んでいると、先にオメガが話し始めた。
「よー!お前達はお嬢ちゃんの仲間か?俺はオメガだ!よろしくな!」
「!?。何処からか知らない声が聞こえます!敵かも知れません、気を付けて下さい!」
ナビコスは不信な声が聞こえた事で、剣を抜き周囲を確認しだした。
「少し落ち着くのじゃ。この声は大樹が持つ剣からじゃ」
「ほう!こっちのお嬢ちゃんも大したものだ。普通、剣が喋るなんて考えもしないものだからな」
オメガは全く動揺しないマオに、素直に感心した。
「別に言葉を発する武具に出会った事があるだけじゃよ。妾はマオじゃ、オメガと申したな、これからよろしくなのじゃ!」
マオは大樹の持つ剣を真っ直ぐ見つめながら話した。
「流石師匠です!全く動揺しないなんて!…あ!私はナビコスです」
マオの言葉でオメガの存在に気付き、マオを賞賛すると同時に自己紹介を済ませた。
「それでどういう状況なのじゃ?」
「僕がグラムを倒したら、オメガの次の契約者に選ばれちゃったみたいなんだよ」
大樹は少し困ったような顔をしながら経緯を話した。
「おいおい、なんでそんなに不服そうな顔をしているんだ?この魔剣オメガに選ばれるのは、とても幸運なんだぜ!もっと嬉しそうにしろよ」
「…確かに少々うるさいが強力な武器には違うまい。とくに害がないなら使うが良いじゃろう」
普段は魔力をあげないといけないが、敵から魔力を吸収出来るのならリスクはないと思う。それどころかMPのチャージ、聞いた事もない闇魔法だって使えると言うんだから、拒む理由はない。
「そうだね。これからよろしく、オメガ」
大樹は両手でオメガを握り締めながら話した。
「こっちこそよろしくな、大樹のお嬢ちゃん!」
「……僕は男です…」
「ハハハ、何を言っているんだ。その顔、その微妙に主張している胸、どれを見ても女じゃないか!」
「…さっきまでは本当に男だっただよ」
今の姿で言っても、全然説得力がないのは大樹本人が一番自覚しているので、強く言えなかったのだった。




