55話 ワイバーン討伐
55話 ワイバーン討伐
シロップの占いは的中率ほぼ100%らしいのだ。しかも今回の占い結果は複数の人に出た事からもはや確実に来るものとして周りも動いていた。
そして襲ってくるとされていた日を迎える事になった。
「ワイバーンは西の方から攻めて来るんだったよね」
朝食を食べながら大輝は普段通りに話していた。
「そうじゃ、昼前に襲って来るから西門にその前までに集合のはずじゃ」
マオもパンをかじりながら返答した。周りから見ていると、とても今から難敵のワイバーンに挑みに行く冒険者には見えないほど普通にしていたのだ。
「相変わらず余裕そうですね。一応ワイバーンは避難対象になるほどのモンスターですよ?」
リリィが食後のデザートを持ってきてそのまま席に着いた。
「別に奴らは火を吐く訳ではないからのぅ。襲ってくる時は地上近くに来るから、そこまでの敵ではないからのぅ」
「でも油断はしないでくださいね。…それと出来ればで良いですから、あまり町に被害が出ないようにしてくれると助かります。西門の近くはヴァイオレットのギルドが近くにありますから…」
リリィはこれから戦いに行く者に、気を使わせる事は言ってはならないと分かってはいた。しかし大輝達の実力を知っているからこそ、何とかして欲しかったのだ。
「そうなのか?なら門の外でケリを付けんといかんのぅ」
「そうだね、協力体勢を結んだギルドだもんね」
大輝達はお互いに頷きあってリリィを安心させた。
「でも無理はしないでくださいね。私もヴァイオレットのギルドで、ポーションを持って怪我人の治療に回るから万が一の時はそっちに来てくださいね」
リリィには戦闘力はない。だけど自分も何か出来ないか考えた結果、戦闘地域の付近で救護班として戦う事にしたのだ。
「ならそろそろ集合場所に向かうとするかのぅ」
そうして大輝達は集合場所の西門に向かって行った。
今回の依頼は国が出しており西門の外には多くの冒険者が集まっていた。その中で一際派手な鎧を着ている者が、あらかじめ用意していた台の上に立ち声を掛け始めた。
「今回は難敵が相手だが国の為に力を貸してくれる事を感謝する。皆も知っているだろうが、相手はワイバーンだ。そこで今回は冒険者のチームを一時解散して前衛組と魔導士組に分かれもらう。作戦はまず魔導士組が翼を狙って撃ち落とし、落ちてきたワイバーンを前衛組が止めをさしてもらう」
突然チームを別れて戦えと言われ混乱していた冒険者達だが、作戦を聞き納得したようで落ち着いて持ち場を別れた。
「前衛は門の前で横一列に並んで、ワイバーンが落ちて来たら取り囲むように止めを差してくれ。そして魔導士組は門の上で待ち構えてもらいたい。おそらく遠くから接近してくるのが分かるはずだが、十分接近してから翼を狙ってほしい。それでは配置に着いてくれ!」
そうして冒険者達は持ち場に着いた。大輝は前衛組に、マオは魔導士組の方で待ち構える事にした。
そうして暫くした時、西の空に影が見え始めたのだが予定と違う事があったのだ。
「…なあ、あの影ってワイバーンだよな。…複数あるように見えるんだが……」
魔導士組についた冒険者の1人が遠くに見える影に違和感を感じ呟いたのだ。
「ああ……、まさか…あの影、全てがワイバーンなのか…」
「ありえない……あの影全てがワイバーンだとすると10体はいるぞ!」
「む、無理だ…敵いっこない……早く逃げないと」
下にいる前衛組にはまだその影が見えていないので、門の上にいる魔導士組が何を動揺しているのかが分からず首を傾げている。
しかし影が見えている魔導士組は恐怖で腰が引け、逃げようとする者も現れ始めたのだった。
「た、大変だ!…ワイバーンは一体だけじゃない!10体は来ている!どうすればいい、すぐにでも逃げるか?」
動揺を隠しきれない状態で魔導士組のまとめ役をしていた者が下にいるリーダーに報告をした。その情報を聞いて前衛組にも動揺が走った。
「10体も…。仕方がない、魔導士組は射程内に入ったら即座に魔道具による攻撃を開始、前衛組は町に戻って避難の手伝いをするぞ」
リーダーの決断を聞き魔導士組は更に動揺が走った。
「そ、それは逃げる時間を稼げって事かよ!…嫌だぜ俺は、死にたくねーよ……悪いが依頼は破棄させてもらう」
そう1人が言ったら俺も俺もと次々と町中に逃げていく。普通の冒険者では1体でさえ勝てるか微妙な相手なのだから、それが10体も現れたら絶望しか感じられないのは仕方がない事なのだ。
そうして集まっていた冒険者は、ほとんどこの場から去ってしまっていた。残っていたのは大輝達とジェームズ達と後はわずか数人だけになっていた。
「ずいぶん数が減ったもんじゃのぅ」
魔導士組はマオの他3人しかいなかったので、大輝達と合流するべく下に降りて来たのだ。
「まー仕方がないですよ。皆が皆、師匠達のように強くはありませんからね」
ナビコスが頭の後ろで手を回しながら気楽に感想を言った。
「だが確かに10体を相手にするのは骨が折れそうだがな。…どうする、俺達も逃げるか?」
「今更逃げるって言っても、空を飛べる相手に逃げきれるものではないですよ。それにこのまま戦った方が楽ですしね」
「はは、違いない。逃げた奴らももう少し冷静になれれば、その事に気づけたものなんだがな」
大輝とジェームズは笑えるほど普通に話をしている。その雰囲気に大輝達とジェームズ達以外に残った者は常識を疑った。確かに自分達も逃げても無駄だと思い戦う事を選んだ。しかしハッキリ言って勝ち目があるとは思っていないのだ。
「さて、残った者達で相手をしないといけないが、どういう作戦で戦っていく?」
ジェームズが気持ちを切り替えて真面目な話をし始めた。
「そじゃな、まずは妾の炎の杖で数匹を焼き払うとするかのぅ。そうすれば奴らの注目を集めるじゃろうから、予定通り降りて来たワイバーンの片翼を斬り落とし各個撃破でどうじゃ?」
「そうだね、人数が減った以上はそれに代わる行動が必要になるからね。なら人員は門の上にマオとドライブ、マオは炎の杖で先制攻撃後は上から翼を狙って攻撃、ドライブはマオの方に複数のワイバーンが襲って来た時に守る役で。そして残ったメンバーは門の前で待ち構える陣形で、翼は僕とジェームズさん、後は魔導士組で担当、止めはナビコス達前衛組のメンバーで各個撃破でいこう!」
大輝が言った作戦は所々出来るか分からない無茶な内容があったが、今のこの状況で冷静に指示が出来てるはこのメンバーだけ、という事は理解しているので指示に従う事にした。
そうして戦いが始まった。
「さてドライブよ、炎の杖を使っている所を見るのは初めてじゃったな?なかなかの威力じゃから気をしっかり持つのじゃぞ」
「!?分かりました。師匠が先に言ってくれるという事はかなりの物なんでしょうね」
マオはいつも前置きもなく魔道具を使用してドライブ達を驚かして来た。そのマオが事前に忠告してくる以上、覚悟が必要と理解したのだ。
「大輝よ、最初の一撃はストーンゴーレムに使った攻撃を放つぞ!」
マオが門の上から大輝に向かって身を乗り出し声を掛けて来た。
「了解。目標はここから20メートルぐらい先の上空で、準備が出来たら声を掛けるから!…それとジェームズさん、最初の一撃はかなり大きな攻撃になりますから全員に動揺しないように言っておいてください」
大輝は隣にいるジェームズに声を掛けて準備を始めた。ジェームズも普通の人が凄いと思う事を当たり前のように言う男が、かなり大きい攻撃と表現したのを聞き、言葉以上の攻撃が来ると理解して全員に急いで忠告して回った。
ジェームズに頼んだ後、距離が遠い事から急いで風を目標の位置に集め始めた。
そうして大輝の準備が終わると同時ぐらいにワイバーンが目標に位置にまで近づいていた。
「マオお待たせ!いつでも良いよ」
その言葉を聞いてマオが「待ってました」と言わんばかりに炎の杖を使用した。
ドォォォオオオオオオオオオン!!!!!
その瞬間、西門の上空に鈍い音と共に巨大な爆炎が広がった。それはまさに爆発で地上にいた大輝達もその爆風で吹き飛ばされそうになっていたのだ。
この一撃でワイバーンは3体がそのまま絶命し、その近くにいた3体も爆風で翼が破れ地上に落下してきた。残りの4体も爆風で後方に吹き飛ばされて体勢を整えるので精一杯のようだった。
「3体落ちてきたよ。止めを差しにいくよ!」
「は、はい!」
しかし大輝の声に反応出来る者はナビコス以外いなかった。落ちて来た3体の内、1体は打ち所が悪かったのかそのまま絶命してしまっていた。そして大輝とナビコスが落下のダメージで動きが悪い2体をそれぞれ首を落とした。
「ジェームズさん、皆!何をボケっとしてるの!?戦いはもう始まっているよ!」
最初の位置から動けていないジェームズ達に気が付いたナビコスが、叱るように声をあげて正気に戻した。事前に声は掛けていたが、予想以上の攻撃に皆呆気にとられていたのだ。
なんだかんだ言ってナビコスは、持ち前の気楽さとマオ達の常識外れの行動を、一番見ていたので他の人のように呆気にとられる事はなかったのだ。
「!?、す、すまない!後何体だ!?」
ジェームズがナビコスの声で我に返り戦場を見回した。
「後、4体です。まだ上空にいますが、おそらく僕達の存在に気が付いたはずですから、こちらに来ると思われます」
その言葉通り体勢を立て直したワイバーンの生き残りは、大輝達の方に向かって怒っているような声を上げながら進んできた。だが向かってきたのは3体だけだった。不可解な事に1体は大輝達を見るように上空で留まっているのだ。
そして戦いの後半戦が始まった。




