53話 受付嬢マオ
53話 受付嬢マオ
今日は朝食後別行動をする事にしたのだ。強化予定にしていたマオの魔道書とリボンは昨夜の内に終わらせており、魔道書には表紙の所に三角形の魔方陣を描き水、風、石の玉を出す時の威力とスピードを強化した。リボンの方は中心の魔石の中に魔方陣を合成した。見た目は石の中に綺麗な模様が入っているようにしかみえなのだ。
「妾は今からギルドに行って良い依頼でも探してくるとするかのぅ」
「お願いするよ。僕も武器の強化が終わればギルドに行くよ」
「分かった。では先に行っているのじゃ」
そうしてマオは冒険者ギルドに向かって行った。
冒険者ギルドに着いたマオが依頼書を見ようとすると、突然受付のおっちゃんが話しかけてきた。
「お嬢ちゃん今日は1人か?……実は頼みたい事があるんだがいいか?」
「?。急にどうしたのじゃ?」
受付のおっちゃんは困ったような顔をしていたのでマオは気になり話を聞く事にしたのだ。
「実は俺の親が怪我をしちまってな、治療所に連れていかなくっちゃならないんだ。それでその間にお嬢ちゃんに受付の仕事をして欲しいんだ。お嬢ちゃんは何度か依頼を受けているから受付の方法を知っているだろう?本当はギルドマスターに変わってもらう予定だったんだが、急な呼び出しを受けて出掛けなくっちゃならなくなったんだ。なーにこのギルドもランクが上がったからと言っての、すぐに上位の依頼が来る訳ではないから大丈夫だろ」
「…なるほどのぅ。分かった妾に任せるがよい。お主は安心して治療所に行ってくるがよいぞ」
腕を組み胸を張って堂々とした姿でマオは言い切った。
「すまない。出来るだけ早く帰ってくるからその間お嬢ちゃんに任せた」
そう言って受付のおっちゃんはギルドを後にした。
マオは受付の席に着き何時依頼人や冒険者が来ても良いように準備した。
暫くしたらジェームズ達が顔を出した。
「あれ!?なんで受付の席に師匠が座っているんですか?」
ナビコスが入って来るなりマオの存在に気が付き首を傾けながら聞いてきた。
「いつもの者が急用で席を外さねばならぬと言う事で妾が代わりに受付の仕事をしている訳じゃ。それよりジェームズよ、大輝が用があるから宿の方へ1人で顔を出してくれと言っておったぞ」
「1人で?いったい何の用事があると言うんだ?」
突然1人で来てくれと言われても、心当たりがまったくないジェームズは不思議に思うだけだった。
「理由は大輝にでも聞けばよい。今日は依頼の選別と受領じゃろ?それはナビコス達に任せてさっさと行くのじゃ」
「良く分からないが行ってみるとするか……お前達は依頼を見て良さそうなのを選別しておいてくれ」
「分かりました」
そうしてジェームズがギルドを出ていったのを確認してからナビコスが口を開いた。
「それで大輝さんはジェームズさんに何の用があるんですか?」
「それは帰ってきてからのお楽しみと言うやつじゃ」
「む~、そう言われると余計に気になってしまいますよ~」
ナビコスは頬を膨らませて受付の机に顔を置きマオの方を見ている。
「ほれ、さっさと依頼を見てこんか。…そうじゃ、ついでに妾達にちょうど良さそうな依頼も探しておいてくれんかのぅ。強化した魔道具を試してみたいから人目に付きにくい討伐系の依頼が理想じゃ」
「……今度は魔道具を強化したんですか?今までのでも十分凄かったと思いますけど…」
「今回は威力も上がってはいるが使いやすさを向上させるのが目的じゃったからのぅ。まあそう言う事じゃから依頼の方を頼むぞ」
「分かりました。とりあえず見てきますね」
ナビコスとドライブは依頼書の前に立ち内容を確認し始めた。
「しかし誰も来ないのう」
マオが受付をやり始めて1時間ほどたったがナビコス達以外の冒険者も依頼人も誰1人来ていないのだ。
「あー多分それはあの噂が原因かも…」
ナビコスには何か心当たりがあるようで依頼書から目を離しマオの方に顔を向けた。
「師匠は占い師のシロップって人を知っていますか?」
「うむ、昨日会ったばっかりじゃ」
「……もしかして師匠達、占い師に何か作ってあげませんでしたか?」
「どうしたのじゃ突然に?じゃが確かに昨日新しい水晶を大輝が作って渡したぞ」
ナビコスが何を懸念しているかが分からなかったが、正直に昨日の出来事を話した。
「やっぱり…、実は今朝から占いをしてもらった人が一週間以内にこの国を出ないと死ぬと言われたらしいんですよ。今までは遠くて3日以内の占いしか出来ない話だったのが急に一週間後の未来が見えるようになって、その死因がワイバーンが国に現れて大惨事になるという内容だったんです。そんな話を有名な占い師に言われたから凄い勢いで話が広がってしまって、皆何処に逃げるかそれとも隠れるかなどと騒ぎになっているんですよ」
「なんと!?そんな先の事が見えるとは凄いのぅ」
シロップの占い能力に素直に感心しているマオにナビコスは「驚く所はそこではないですよ」と小さく呟いていた。
「じゃがそれならギルドに討伐の依頼なり来てもおかしくなさそうなもんじゃがな?」
「いくら対抗戦で優勝したからっていきなりそんな上位の依頼はここには来ませんよ。でもクラフトさんのギルドには国から防衛依頼は来ているはずですよ。ここにもその内、隣のセイバまでの護衛依頼くらいなら来ると思いますよ」
「別に逃げんでも来るのが分かっているなら先に攻めれば良いのではないか?」
「!?、相手は空を自由に飛んでいるんですよ。確かに師匠達なら空中戦が出来るかもしれませんが、普通の冒険者は戦わずに逃げる1択ですよ」
「確かに妾も空ではその場で留まる事ぐらいしか出来ないからのぅ。…もし戦うなら多少は動けるように大輝に翼を強化してもらわねばならんのぅ」
すでにワイバーンとの戦いを想定し始めているマオにナビコスは呆れている。
「…師匠、空を飛ぶ大型のモンスターは天災扱いで逃げる事を考えるのが常識ですよ」
「?、そ奴が地上に近づいた時に翼を斬り落とせば後は大きなトカゲではないか?何をそんなに恐れておるのじゃ?」
「…確かに、今までの常識で考えてたから逃げる事しか思いつかなかったけど、大輝さんの攻撃範囲に入った瞬間に片翼を撃ち抜いてもらえばそれで終わりですよね。…私ったら何をそんなに恐れていたんだろう」
ナビコスも大輝達と何度か戦っている為に今までの常識が大分壊れてきているようだった。
「なら後は依頼が来た時に早めに受けてしまうとしようかのぅ」
「はは、その手の依頼は複数のチームで共同して行うだろうから慌てなくても大丈夫ですよ」
そうナビコスと話していると1人の男がギルドの扉を開けて中に入って来た。
「お!依頼人か?ついに妾の仕事ぶりを見せる時が来たのじゃな」
「なんだ?このギルドの受付はこんな子供がやっているのか?。これではやはり対抗戦で優勝したのはまぐれだったようだな」
入って来たと思ったらいきなり馬鹿にしたような態度でマオを見てきた。
「……いらっしゃいませ。当ギルドに依頼ですか?」
マオは内心は不機嫌になってはいたが初仕事の為、顔には出さずに対応をこなそうとした。
「ふん!お前のような子供に話しても時間の無駄だ!ギルドマスターを呼んで来い。話はそれからだ!」
「すまんが、……すみませんが只今ギルドマスターは席を外しておりますので要件は妾が、…私が受けますので安心してください」
苛立ちから言葉使いにボロが出始めていた。ナビコスも面白くないような顔をして男を後ろから睨んでいる。
「こんな弱小ギルドでは人も碌に雇えんか。まあいい。どうせ大した冒険者もいないだろうからその辺にこれを張っておけ」
そう言って依頼書をマオの前に叩きつけるように置いた。その内容に目を通してみると…先ほど話していたワイバーンから防衛依頼の招集内容だった。
「…この程度のモンスター相手に召集が必要と言う者が偉そうなもんじゃな」
「なに!?」
マオは男の言った言葉に我慢の限界に来ていた。
「なんじゃ?相手を見る目も悪ければ耳も悪いのか?ならもう一度言うぞ。ワイバーンごときに恐れをなしている者などこのギルドの足元にも及ばん。顔を洗ってから出直してくるんじゃな」
「…貴様、何様のつもりだ。私はこの国で2番目に大きい冒険者ギルドの冒険者だぞ。貴様のような受付ごときが偉そうな事を言うな!」
「あの~もしかして対抗戦を見ていなかったんですか?」
場の空気がかなり張りつめて来た事にナビコスが不味いと思い仲介役なろうと話に入って来たのだ。
「俺は依頼で町を離れていたからな」
「…それで私達を見ても何も気が付かなかった訳ですか。…悪い事は言いませんからその依頼書を置いてさっさと出ていった方が良いですよ。私達では師匠が本気で暴れたら止める事が出来ませんから」
「プ、ハハハハハ!こんなガキを師匠と言うとはな。こんな小さいギルドさっさと潰してしまった方がこの国の為になると言うものだ」
「…いいじゃろぅ。お主の目が腐っている事を教えてやろう。…地下の訓練場に来るがよい。ナビコスよ、少し受付を任せるぞ」
「し、師匠、お手柔らかにお願いしますね」
ナビコスはもう止めれないと見て、せめて手加減をする事を願っていた。
「良いだろう。身の程を教えてやる」
そうして2人は階段を下りて行った。




